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神林君とキャサリンさん(26)

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「じゃあ、次に美優ちゃん」
アーノルドさんがわたしを見て言った。
宇宙連合の人達がみんな親しみやすくて、マスターの話しも快く聞いてくれていたので、わたしも穏やかな気持ちで話しを始めることができた。
「神林君はうちのカフェによく来てくれるんですけれど、神林君の初めてできた恋人が異星人だって聞いたとき、カフェに来るみんなで『宇宙が好きな神林君らしいね』って言っていたんです。そして二人の結婚が決まったとき、わたし達は心から嬉しく思いました。けれど、今、マスターが言ったとおり神林君とキャサリンさんはほかの夫婦と違って毎日、一緒に暮らせていません」
異星人達がわたしにやさしいまなざしを向けて話しを聞いてくれているので、わたしは落ち着いて話しをつづけることができた。
「キャサリンさんが地球に滞在していないとき、たまに神林君、カフェに一人で来てくれるんですけれど、神林君が帰るとき、いつも思うんです。キャサリンさんのいない家にこれから一人で帰るんだって。明るくふるまっているけれど、本当はさみしいんじゃないかって。キャサリンさんもどんな気持ちでオリーブ星にいるのかと思うと、二人がかわいそうに思えるときがあるんです。神林君とキャサリンさんにも地球で暮らすほかの夫婦と同じように、ごく普通の結婚生活をさせてあげたいんです。どうか異星人同士の正式な結婚を認めてあげてください。お願いします」
わたしが言い終わると、彫刻の女神のような姿の異星人が背中にある翼をパタパタ揺らしながら目を細めた笑顔で心地よく響く声で言った。
「そうだわよね、そのとおりだとわたくしも思うわよ。あなたの気持ちもよく伝わってきましたよ」
まわりの異星人達もにっこりと笑ってくれて、神林君とキャサリンさんもわたしに笑顔を向けてくれたので、わたしは芯からほっとして体の力が抜けた。
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