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「他の奴らは?」
「影も形もねえな」
「やられちまったってことか」
「全滅しちゃったの?」
「みてえだな」
「えっ……じゃあ僕たちどうするの?」
「囲まれてんだからどうしようもねえだろ」
「いっそ大将首でも狙うか? 死中に活を求むって感じで」
「まあ確かにシチューだけじゃ肉が足りねえよな」
「カツシチューなんて聞いたことないんだけど」
「うまいのか?」
「ちげえよ。なんで食いもんの話になってんだよ」
「シチューにはカツだとか言うからでしょ?」
「シチューもカツも忘れろ。魔王を殺りに行かないかって話だ」
「元から魔王狙いの作戦だったんだから構わねえよ。予定通りになるだけだろ」
「そんな簡単に言わないでよ。このお城かなり大きいよ? 魔王ってどこにいるのさ」
「知らん」
「適当に歩いてりゃ見つかんじゃねえの?」
「そんな無責任な」
「どうせ玉座でふんぞり返ってんだからすぐ見つかるって」
「あれは威張るための部屋だから普段はいないんじゃないかなぁ」
「いなけりゃ他探しゃいいだけだろが。とりあえず行こうぜ」
「どこに?」
「城の構造なんざどれも似たようなもんだろ? 大通りを歩いてきゃあ終点に玉座があんじゃねえの?」
「そうかなぁ? でもずっとここにいるわけにもいかないよね。行ってみようか」
退けば大群。進めば魔王。どちらを選んでも地獄だが、魔物は魔王が死ねば組織的な行動をとれなくなる。俺たちが生き延びるためには魔王との決戦に賭けるしかなかった。
この城のどこに魔王がいるのかはわからないが、最終的に虱潰しになるのならどこから探しても構わないだろう。権威を見せつける場として使われる性質上、謁見の間へと続く通路は広く造られていることが多い。手始めの目標として、とりあえず玉座がある謁見の間に行ってみようかと考えたのは責められることではないはずだ。
城なんてどれも似たような構造だろう。そう思っていたのだが、どうやら異世界の城は常識が違ったらしい。抜け道でも隠されているのか、魔王城の中には水路が巡り、迂回を余儀なくされる構造になっていた。
通路を歩いていると扉の無い部屋があった。最初から無かったわけではなく、扉が取り付けられていた痕跡が残っている。老朽化か、或いは過去の勇者が破壊したのか。恐らく待合室のような部屋なのだろう。誰がしているのか、部屋自体の手入れはされているようだ。
部屋の奥には絵画が飾られていた。佐藤はその絵が気になったのか、駆け寄って眺め始めた。
「高そうな絵だねぇ。魔王の私物かな?」
「知らねえよ。今の魔王のもんだとは限らねえだろ」
「そっか。何百年も前からあるのかもしれないんだね」
「そもそも絵の善し悪しなんざわかんのかよ」
「画廊の仕事もやったからね。ちょっとは勉強したんだよ」
「見境ねえな」
「やるならちょっとじゃ駄目だろ」
「芸術の評価なんて所詮は主観だからね。好きか嫌いかだけでいいと思うよ?」
そう言いながら伸ばした佐藤の手が額縁に触れると奇妙な音が聞こえた。不審に思いはしたが、疲労と気の弛みが判断力の低下を招き、僅かに対応を遅らせた。警告を発しようとした直後に轟音が響き、視界から佐藤が消えた。
軋んだ音を立てて吊り天井が上がっていく。俺と鈴木は目の前の惨状を受け入れられず、佐藤だったはずの肉塊を呆然と眺めていた。
「影も形もねえな」
「やられちまったってことか」
「全滅しちゃったの?」
「みてえだな」
「えっ……じゃあ僕たちどうするの?」
「囲まれてんだからどうしようもねえだろ」
「いっそ大将首でも狙うか? 死中に活を求むって感じで」
「まあ確かにシチューだけじゃ肉が足りねえよな」
「カツシチューなんて聞いたことないんだけど」
「うまいのか?」
「ちげえよ。なんで食いもんの話になってんだよ」
「シチューにはカツだとか言うからでしょ?」
「シチューもカツも忘れろ。魔王を殺りに行かないかって話だ」
「元から魔王狙いの作戦だったんだから構わねえよ。予定通りになるだけだろ」
「そんな簡単に言わないでよ。このお城かなり大きいよ? 魔王ってどこにいるのさ」
「知らん」
「適当に歩いてりゃ見つかんじゃねえの?」
「そんな無責任な」
「どうせ玉座でふんぞり返ってんだからすぐ見つかるって」
「あれは威張るための部屋だから普段はいないんじゃないかなぁ」
「いなけりゃ他探しゃいいだけだろが。とりあえず行こうぜ」
「どこに?」
「城の構造なんざどれも似たようなもんだろ? 大通りを歩いてきゃあ終点に玉座があんじゃねえの?」
「そうかなぁ? でもずっとここにいるわけにもいかないよね。行ってみようか」
退けば大群。進めば魔王。どちらを選んでも地獄だが、魔物は魔王が死ねば組織的な行動をとれなくなる。俺たちが生き延びるためには魔王との決戦に賭けるしかなかった。
この城のどこに魔王がいるのかはわからないが、最終的に虱潰しになるのならどこから探しても構わないだろう。権威を見せつける場として使われる性質上、謁見の間へと続く通路は広く造られていることが多い。手始めの目標として、とりあえず玉座がある謁見の間に行ってみようかと考えたのは責められることではないはずだ。
城なんてどれも似たような構造だろう。そう思っていたのだが、どうやら異世界の城は常識が違ったらしい。抜け道でも隠されているのか、魔王城の中には水路が巡り、迂回を余儀なくされる構造になっていた。
通路を歩いていると扉の無い部屋があった。最初から無かったわけではなく、扉が取り付けられていた痕跡が残っている。老朽化か、或いは過去の勇者が破壊したのか。恐らく待合室のような部屋なのだろう。誰がしているのか、部屋自体の手入れはされているようだ。
部屋の奥には絵画が飾られていた。佐藤はその絵が気になったのか、駆け寄って眺め始めた。
「高そうな絵だねぇ。魔王の私物かな?」
「知らねえよ。今の魔王のもんだとは限らねえだろ」
「そっか。何百年も前からあるのかもしれないんだね」
「そもそも絵の善し悪しなんざわかんのかよ」
「画廊の仕事もやったからね。ちょっとは勉強したんだよ」
「見境ねえな」
「やるならちょっとじゃ駄目だろ」
「芸術の評価なんて所詮は主観だからね。好きか嫌いかだけでいいと思うよ?」
そう言いながら伸ばした佐藤の手が額縁に触れると奇妙な音が聞こえた。不審に思いはしたが、疲労と気の弛みが判断力の低下を招き、僅かに対応を遅らせた。警告を発しようとした直後に轟音が響き、視界から佐藤が消えた。
軋んだ音を立てて吊り天井が上がっていく。俺と鈴木は目の前の惨状を受け入れられず、佐藤だったはずの肉塊を呆然と眺めていた。
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