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第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い
33 女子高生の部屋で2
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ヘヘヘと冗談だよと言っても誤解が解けず一瞬にして険悪なオーラを出される。丁度紅茶を飲み終えたからなのか空気が悪くなったからなのかは聞けないが曜子は静かに自分の部屋へ上がっていった。女子高生の心境の変化と言えば語弊があるかもしれないが浮き沈みが激しいのは個人差があって特に曜子は激しいのだろうか?女性は例えば楽しみにしていたプリンを他の家族の者に食べられたらこの世の終わりのように怒り狂うとか。同じプリンを慌てて買ってきてもご機嫌斜めは治らないがケーキを買い足せば先程の怒りは見間違いだったかのように平然とプリンを食べる。これは極端か。しかし曜子のテンションには時々ついていけない時があるのは事実である。女性の扱いというのは本当に難しいものだ。
少しだけ時間を空けて俺も部屋に入る。この空気で勉強を始めても案外集中出来ず時間の無駄になると思った俺は曜子の宝物と言ってた鏡の前に立った。
「おばあちゃんもおばあちゃんから頂いたって言う割には綺麗だな。いつの時代に作られたんだろうな」
「さあね」
まだご機嫌斜めの様子だ。
「俺は髭剃りの時位しか鏡見ないけど曜子は毎日この鏡見てテクマク言ってんのか?」
「なに言ってんの?バカじゃないの?」
呆れた様子だがサイテーな空気よりかは少しマシになった感じだ。鏡に写る自分を見ながら少し伸びた髭を確認する。鏡の前でする動作は習慣付けされているようなものだ。
「私ね……」
続きを言うのを待ってたが、言葉を発しない。
「私がどうかしたのか?」ここで『抱かれたいのか?』なんて冗談を言ったら部屋を追い出されるどころか家庭教師を首だろうな。だから言わなかったのではなく少し真剣な話のような気がしたので冗談も言わず、次の言葉を待ちながら俺は顎に当てた手を左右に動かすしかできなかった。
「私、毎朝目が覚めると泣いてるの」
「……」次の言葉が出るまで俺は無言でその時を待った。
「怖い夢を見たんじゃないのに、泣きながら目を覚ますの。あぁ今朝も泣いてるんだって。自分でもなんで泣いてるのかわからないの。ある日泣きながら目を覚ます自分が悔しくて鏡に写る自分に話しかけたの。変でしょ?笑うでしょ?」
「笑わないよ」
「最初は自分の泣き顔を鏡で見てただけなのよ。毎日泣き顔見てたらさ、なに泣いてんのよ、バカじゃないの?って。鏡に写るのは自分なのに白い顔でさ、『助けて』って言ってるように思うようになったの。最初は気のせいって思ってたんだけどね。なんにも聞こえないし思わない時もあるし」
ロマンチストな男ならこんな時、なんて台詞《セリフ》が思い浮かぶのだろうか。女性がどんな言葉を求めているかを瞬時に判断して言える。イケてる男とそうでない男の差はこんな時にも出るのだろうか。ならばと俺もロマンチストな言葉で曜子の求める返事に挑戦することにした。
「先祖代々受け継いできた鏡だから、先祖の日照り不足なんかの時の『助けてー』って祈りが写って聞こえた気がしたんじゃねーのか?」
俺は自分の限界を感じた。これはニート期間があった言い訳は通用しなさそうだ。元々の俺のセンスがこの程度なのだろう。
「嘘だと思ってるんでしょ?」
「思ってないよ」
「嘘だと思って、バカなこと言ってるって思ってるからそんなバカみたいなこと言うんでしょ?」
「いや今のは俺の脳みその中にあるセンスをフルに使ってでた言葉なんだが」
「……センスないわぁ」
ハハハ……。俺は引きつった笑いしか出来なかった。自分の非を認め、今度所長と梓さんにセンスの良い言葉選びのできる男になる講座を開いてもらおうと心に決めた。
少しだけ時間を空けて俺も部屋に入る。この空気で勉強を始めても案外集中出来ず時間の無駄になると思った俺は曜子の宝物と言ってた鏡の前に立った。
「おばあちゃんもおばあちゃんから頂いたって言う割には綺麗だな。いつの時代に作られたんだろうな」
「さあね」
まだご機嫌斜めの様子だ。
「俺は髭剃りの時位しか鏡見ないけど曜子は毎日この鏡見てテクマク言ってんのか?」
「なに言ってんの?バカじゃないの?」
呆れた様子だがサイテーな空気よりかは少しマシになった感じだ。鏡に写る自分を見ながら少し伸びた髭を確認する。鏡の前でする動作は習慣付けされているようなものだ。
「私ね……」
続きを言うのを待ってたが、言葉を発しない。
「私がどうかしたのか?」ここで『抱かれたいのか?』なんて冗談を言ったら部屋を追い出されるどころか家庭教師を首だろうな。だから言わなかったのではなく少し真剣な話のような気がしたので冗談も言わず、次の言葉を待ちながら俺は顎に当てた手を左右に動かすしかできなかった。
「私、毎朝目が覚めると泣いてるの」
「……」次の言葉が出るまで俺は無言でその時を待った。
「怖い夢を見たんじゃないのに、泣きながら目を覚ますの。あぁ今朝も泣いてるんだって。自分でもなんで泣いてるのかわからないの。ある日泣きながら目を覚ます自分が悔しくて鏡に写る自分に話しかけたの。変でしょ?笑うでしょ?」
「笑わないよ」
「最初は自分の泣き顔を鏡で見てただけなのよ。毎日泣き顔見てたらさ、なに泣いてんのよ、バカじゃないの?って。鏡に写るのは自分なのに白い顔でさ、『助けて』って言ってるように思うようになったの。最初は気のせいって思ってたんだけどね。なんにも聞こえないし思わない時もあるし」
ロマンチストな男ならこんな時、なんて台詞《セリフ》が思い浮かぶのだろうか。女性がどんな言葉を求めているかを瞬時に判断して言える。イケてる男とそうでない男の差はこんな時にも出るのだろうか。ならばと俺もロマンチストな言葉で曜子の求める返事に挑戦することにした。
「先祖代々受け継いできた鏡だから、先祖の日照り不足なんかの時の『助けてー』って祈りが写って聞こえた気がしたんじゃねーのか?」
俺は自分の限界を感じた。これはニート期間があった言い訳は通用しなさそうだ。元々の俺のセンスがこの程度なのだろう。
「嘘だと思ってるんでしょ?」
「思ってないよ」
「嘘だと思って、バカなこと言ってるって思ってるからそんなバカみたいなこと言うんでしょ?」
「いや今のは俺の脳みその中にあるセンスをフルに使ってでた言葉なんだが」
「……センスないわぁ」
ハハハ……。俺は引きつった笑いしか出来なかった。自分の非を認め、今度所長と梓さんにセンスの良い言葉選びのできる男になる講座を開いてもらおうと心に決めた。
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