カテキミ ~if 家庭教師は正義と君の味方~

つきの麻友

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第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

35 女子高生の部屋で4

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「行きたい場所は瀬戸内海に浮かぶ直島ってところなの!」

「直島?瀬戸内海にあるのか?」

「知らないのー?私のねおばあちゃんの生れ故郷なの。おじいちゃんと結婚して転勤するまで住んでたんだって」

「おばあちゃんて、その鏡とペンダントくれた?」

「そう。私も小さい時に一度だけおばあちゃん達と行ったみたいだけど小さすぎて覚えてないんだ」

「直島ねー。その島になにかあるのか?」

「なにかあるってもんじゃないの!毎年アートを観に世界中から人が集まるのよ。特に今年は三年に一度開催される『瀬戸内国際芸術祭』の年なの。絶対行きたい!前回は受験勉強があったし今年は絶対行きたいの!」

 今年も受験生じゃないか?しかし瀬戸内海って聞いても俺はピンとこなかった。小豆島《あずきじま》なら聞いたことあるような。小豆島《あずきじま》と書いて小豆島《しょうどしま》って読むんだよな。直島ねぇ。

「直島以外の島はなにもないのか?」

「いーっぱいあるわよ。瀬戸内海に島が沢山あって、その島の中に現代アートが点在してるのだけど瀬戸内国際芸術祭《せとげー》の時は特に観光客が多いの。中でも直島は別格なのよ!」

「なにが別格なんだよ?」

「世界で死ぬまでに行きたい場所で選ばれるくらい海外でも注目されてるのよ。だから私も死ぬまでに直島に行きたいの!」

「三年に一度開催されてるのだったら三年後に行けばいいじゃねーか。その頃は大学生で休みも長いだろ?」

「三年後までに私が死んでたらどうするのよ!」

「そんなこと言ってたら皆やりたいことを今すぐするようになっちゃうじゃねーか。たらればは無しだよ。人間は簡単には死なないの」

「……バカ」

 また拗《す》ねたか?しかし高校生のしかも受験生が旅行するのは賛成できないな。瀬戸内海まで日帰りじゃ厳しい距離だろうし。

「私ね、地中美術館にも絶対行きたいの。もちろん直島の中にある現代アートも全部見て周りたいの。私、現代アートに明確な答えはないと思ってるの。作ったアーティストも観覧者にどう思われるかなんて未知数だし、こう思ってほしいとかいうのもないのかもしれない。───嬉しい悲しいとか壮大であるとか。見る季節によっても変わるし一番は観覧者のその時の内面によるのかもしれない。ひょっとしたら何も感じないかもしれない。それが良い悪いとかじゃなく。───そんな現代アートが点在する瀬戸内海でも直島は特に遠い外国から訪れる人が後をたたない。『死ぬまでに一度は行きたい島』に選ばれるほどの場所、直島。───訪れる外国人は何を思ってどう感じて帰るのか。中には何度も訪れる人もいるという。それほどまでに魅了する島。───だけど、訪れる世界中の人々の中には辛い過去があった人もいるだろうし、現代アートに感化されてその後の人生観に変化があった人もいるでしょうし。生きているからこそ辿りつける。それは直島に限ったことではないけど、私は労力惜しまず外国人が辿り着いた直島で世界を感じて自分自身を見つめ直したいの」

 拗《す》ねたと思ったが窓の外を数秒見て沈黙を破るかのように熱く語った。俺は珍しく真面目に熱く語る曜子の期待をわざと裏切るように茶化した。
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