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第三章 嘘の幸せと真実の絶望と
44 胸躍らせ足軽やかに03
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家に着き、玄関を開けると曜子の靴が並べられているのを確認することで帰宅していることが認識できる。
俺が訪ねるのを分かっている日はインターホンを押してわざわざ玄関まで降りてくるのが億劫《おっくう》という理由で「お邪魔します」の声かけだけで部屋に上がらせてもらう。
曜子の部屋に入る時にノックをして了承を経て入るので、まさかの着替え中に入るという所長が喜びそうなハプニングに遭遇することはなかった。
今日は仮に機嫌を損なう出来事があったとしても一発で解消できる甘い食べ物があるので心強い。
いつも淹れてくれる紅茶が今日は特に待ち遠しく感じながら階段を上がったのだが、残念ながら紅茶どころか持参した甘い食べ物達でさえも出番はなかった。
曜子は左腕で顔を覆ったままベッドに横たわっていた。
いくら気心知れた中でも誰もいない家で二人っきりになる時にベッドに上がることは今までなかったのは意識してのことだろう。
気分でも悪いのかと思ったが、どうやら違う理由で横たわっているのが分かったのはテーブルの上に置かれてた順位表が教えてくれた。
「最悪だよぉ」
やっと開いた小さな口から出たか細い声は順位表の内容に納得せざるを得ない。
「あんなに頑張って勉強したのに……」
必死に泣くことを堪えているようだった。
やはり一教科が八十点代以外は全て九十点代だった。
素晴らしい点数なのは間違いないのだがクラスでの順位は最下位だった。
進学クラスでレベルが高いとは聞いていたがここまでとは想像していなかった。
普通科クラスなら間違いなくトップの点数だろう。
しかし同率順位でも一位は一位だが同率順位で複数居たとしても最下位は最下位なのが悲しいかな現実なのだ。
約束の一桁が無理だったとしても十番代なら後は家庭教師である俺の教え方の問題と理由を付けてでも旅行に踏み切る程の点数を取っている。
本人も点数に伴った順位に自信あったはずで約束の旅行も確信を経ていたのではないか。
その確信が足元から崩れていったのだから相当なショックだと言うのはわかる。
現に順位を家庭教師である俺の責任だと一言も言わないのが物語っている。
「やっぱり私はお兄ちゃんみたいに出来ないし、お父さんに見切られても仕方ないんだよ」
目標が高く少しでも近づいたと思っていたのが蓋を開ければ距離が更に広がっていたといことか。
「ごめん、今日は勉強無理だわ」
帰ってとストレートに言わないのが悲しさを押し殺した曜子の優しさだろうか。
俺に八つ当たりもできない程参っているのだろう。
こんな時に勉強しても頭には入らないなら切り替えが出来るまで待つのが正解だろう。
受験生にとって一日一日が大切なのではあるので早めに立ち直るのを期待するが。
俺は意気揚々に連れてこられた甘い食べ物達を不憫に思った。
どんな状況であっても特に女性には登場すれば歓喜を浴びるはずが袋から出されることもなかったからだ。
置いて帰ることも考えたが、折角のお菓子に八つ当たりされてもいけないので今日の所は持ち帰って明日所長達と三人で美味しく頂くことにした。
俺が訪ねるのを分かっている日はインターホンを押してわざわざ玄関まで降りてくるのが億劫《おっくう》という理由で「お邪魔します」の声かけだけで部屋に上がらせてもらう。
曜子の部屋に入る時にノックをして了承を経て入るので、まさかの着替え中に入るという所長が喜びそうなハプニングに遭遇することはなかった。
今日は仮に機嫌を損なう出来事があったとしても一発で解消できる甘い食べ物があるので心強い。
いつも淹れてくれる紅茶が今日は特に待ち遠しく感じながら階段を上がったのだが、残念ながら紅茶どころか持参した甘い食べ物達でさえも出番はなかった。
曜子は左腕で顔を覆ったままベッドに横たわっていた。
いくら気心知れた中でも誰もいない家で二人っきりになる時にベッドに上がることは今までなかったのは意識してのことだろう。
気分でも悪いのかと思ったが、どうやら違う理由で横たわっているのが分かったのはテーブルの上に置かれてた順位表が教えてくれた。
「最悪だよぉ」
やっと開いた小さな口から出たか細い声は順位表の内容に納得せざるを得ない。
「あんなに頑張って勉強したのに……」
必死に泣くことを堪えているようだった。
やはり一教科が八十点代以外は全て九十点代だった。
素晴らしい点数なのは間違いないのだがクラスでの順位は最下位だった。
進学クラスでレベルが高いとは聞いていたがここまでとは想像していなかった。
普通科クラスなら間違いなくトップの点数だろう。
しかし同率順位でも一位は一位だが同率順位で複数居たとしても最下位は最下位なのが悲しいかな現実なのだ。
約束の一桁が無理だったとしても十番代なら後は家庭教師である俺の教え方の問題と理由を付けてでも旅行に踏み切る程の点数を取っている。
本人も点数に伴った順位に自信あったはずで約束の旅行も確信を経ていたのではないか。
その確信が足元から崩れていったのだから相当なショックだと言うのはわかる。
現に順位を家庭教師である俺の責任だと一言も言わないのが物語っている。
「やっぱり私はお兄ちゃんみたいに出来ないし、お父さんに見切られても仕方ないんだよ」
目標が高く少しでも近づいたと思っていたのが蓋を開ければ距離が更に広がっていたといことか。
「ごめん、今日は勉強無理だわ」
帰ってとストレートに言わないのが悲しさを押し殺した曜子の優しさだろうか。
俺に八つ当たりもできない程参っているのだろう。
こんな時に勉強しても頭には入らないなら切り替えが出来るまで待つのが正解だろう。
受験生にとって一日一日が大切なのではあるので早めに立ち直るのを期待するが。
俺は意気揚々に連れてこられた甘い食べ物達を不憫に思った。
どんな状況であっても特に女性には登場すれば歓喜を浴びるはずが袋から出されることもなかったからだ。
置いて帰ることも考えたが、折角のお菓子に八つ当たりされてもいけないので今日の所は持ち帰って明日所長達と三人で美味しく頂くことにした。
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