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第三章 密かに想いを寄せた彼女の前で良い所と妄想を

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 少し人混みにの中に入ってしまったが特徴のあった縮れパーマのあやかしを探す。

「いない、ってかこの人混みじゃ見つけようがない」

「早く見つけないと、あのあやかしに彼女、めちゃくちゃにされちゃうかも!」

「めちゃくちゃ……」

「お兄ちゃん、今イヤラシイこと考えてたでしょ?」

「バ、バカなこと言ってんじゃないよ。けど急がないとイヤラシイことされてしまう」

 俺は頭の中を見透かされたのかと焦って自分が言い間違えたことにハッとした。

「違う! 違うんだー!」

 言い逃れしようとすればするほどドツボにハマって行く。

 雪実はそんな俺の慌てっぷりを見て口に手を当てて笑っていた。

「アハハ。お金取られちゃってイヤラシイこともされちゃうかもね。どうするの?」

「どうするって、探すしかないけどなにか良い案ないのか?」

 どんな状況でも他人頼み。

「わらわが空から探せば簡単に見つけれるよ。しかもあやかしなんて目を瞑っててでもわかるよ」

「本当か? じゃあ早速探してくれないか」

「早く見つけないとめちゃくちゃにされちゃうからねぇ」

「おぉ、だから早く頼むよ」

「今日見つけないと、月曜日には出社してこれなくなってるかもねぇ」

「だから早く見つけてくれよって」

 慌てている俺を見て楽しんでいるかのように見えるには気のせいか?

 宙に浮くのはあやかしの状態であれば周りの人には見えないはずだ。だったら早く浮いて探してくれよ。

 雪実の目がなにやら企んでいるような目に見えるのだが。

「な、なんだよ」

「ありゃ? そんな態度で頼み事をしちゃうんだ?」

「はぁ? なに言ってんだよ。急がないと……」

「わらわはいつでも探せる準備できてるんだけどねぇ。お兄ちゃんからのアレがまだだから」

「アレって、なんだよ」

 少しどもってしまう。アレとかめちゃくちゃにされちゃうとか、俺はどうも意味深な言葉に弱いというか変な方ばかりに想像してしまう。

「アレって言えば、アレでしょ?」

 わからん、全くわからんのだが、セオリーで行くか、ここは。

「せせせせせっせっせせせ……っぷんかかかか?」

「ちょっとお兄ちゃん何言ってんのよ? あは。わらわは接吻でも構わないんだけどなぁ」

「ち、違うのか?」

 俺は後先考えずにお決まりのパターンで言ったが、違ってたりしたら最悪の恥ずかしさである。

「こんな大勢のところでするなんて、恥ずかしいよ」

「お前は消えれるけど、俺の方が死ぬほど恥ずかしいわ! ってか消えられたら俺、周りから見たらエアーキスしてる危ないヲタクじゃんか!」

「あはは! それウケる」

 ウケている場合じゃないんだが。なんなんだこの余裕は。雪実からしたら天野さんがあやかしにどうされようが関係ないからか。
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