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第八章 天使のアルコール、悪魔の囁き

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 目が千葉真一、いや血走ったのはアルコールのせいだろうか瞼が重くのしかかるも目力を入れ見開く。目を離せなかったのは理由があった。

 ハッキリ言おう、俺は黒系のストッキングに弱い。どれ位弱いかと言うと、もし俺が銀行の支店長で強盗に入られた時に犯人が黒のストッキングを被っていたら無抵抗で要求された現金を差し出すであろう。

 フッ、かなり酔っているなこれは。我ながら愚かなことを思いつくものだ。しかし黒系のストッキングが好きなのは間違いない。フェチと言うのなら否定はしない。

 特に女性の肌で引き伸ばされたグラデーション部分のコントラストというのか絶妙なのが良い。濃すぎても薄すぎても茶系でもダメなのだ。

 愛しの天野さんも俺が見る限りは黒系のストッキングを履いている。頻繁には見かけないのに履いているということは確率的に高い。好みが合うということと決めつけてよいかしら。

 しかし今日に限って雪実が黒のストッキングを履いているとは、いや履いているのは大賛成なのだがまさかスカートがめくり上がってストッキング越しにパンツが見えるなんて。

 念願のこの眼で見れる時が来るとは思わなかったがまさかそれが雪実とは。できればあやかしより人間のストッキング越しのパンツが見たかった……って普段なら思う筈なのに……。

 なんなんだこの気持ちは。雪実だぞ、あやかしだぞ。そりゃ見た目は区別付かないが今までこんな衝動無かったのに。

 ドキドキしている? まさか? 酔っているからか、そうか適切な判断ができていないのか。恐るべしアルコール。

 だけど相手が天野さんだったら俺はこの衝動を抑えられるのだろうか。俺の部屋で二人で飲んでたら許されるのだろうか? そんな筈はない、酔った勢いに任せるなどと下衆の極み。これだから童貞は情けない。長い目で見れば卒業できるチャンスを目の前の欲望を抑えれずに手放してしまうなんて、危ない危ない。

 今日の衝動をクリスマスイブの時に過ちを犯さない様に教訓にしよう。

 雪実にしては眺めが良かったのだが、いい加減罪の意識に押しつぶされそうなので一言注意を促す。

「雪実、パンツ丸見えだぞぉぉ」

 自分では意識がハッキリしているつもりでも、声を発すると酔っているのがわかる。いや自分ではわからないんだが。

「あったよ、お兄ちゃぁぁん」

 自分以外の喋り方を聞くと酔っているのが良くわかる。

 雪実はスカートを擦るようにして下した。どこがめくれているのかわからないのだろう何回も擦って直していた。

「ニヒヒ、そういやあそこに置いたようなの、思い出したぁ」

 リモコンが見つかったと聞いてから俺はその場で横になり肘を立てて雪実を見ながら少しだけ違和感を持っていた。

 四つん這いのままこちらに向きを変え向ってくる。ニヒヒと笑いながら向ってくるが酔いのせいか左右にフラフラしている。

 黒く長い髪が下に下りて一緒に左右に揺れる。髪を意識してい筈が、ふと大きく開いた胸元が目に入った。

 色白で柔らかそうな胸元も左右に揺れる。丸見えでヘソまで見えそうだ。

 見ようとして見たのではないと言い訳をするもその後、今も目を反らしてないのは俺の罪である。

 今日はなんてサービスデーなんだと思ってしまいそうだが、雪実相手ではそんな気にならないのが残念……の筈だった……今までは……。けど今日の俺はなんだかわからないが雪実に対して何か違う感情を持っている気がしてならない。
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