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ゆづのすけ

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前編

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「あぁ……怖かった。助かったわ、本当にありがとう。」
 落ち着きを取り戻した女性に礼をしてその場を立ち去ろうとすると、背を向けた先程の女性の方から奇妙な音が聞こえた。
「ごぼッ……おご、がッ……」
 振り返ると、女性は己の喉を押さえて蹲った。明らかに様子がおかしい。喉からは、溺れるような水音が漏れる。
「っ……!?あ、あの……!!」
「……ごぷ、がぼッ……」
 天を仰いだ女性の腹が、水風船でも割れるかのように破裂した。血と、大量の透明な液体が赤城に振りかかる。
「うわ……!!」
 裂けた腹からは胎児のような小さな頭が覗く。
(発症した……!?)
 周囲からも悲鳴の声が聞こえる。見渡せば、そこかしこの傷病人が同じように腹を破裂させていた。何かあればすぐに知らせてくれ。時雨がそう言っていたことを思い出し、無線で連絡を取ろうとするが、発信ができない。受信はできているのだが、赤城の端末からの発信ができないようだ。
「壊れてる……!?」
 周囲は大混乱に陥っている。赤城は傍らに準備していたクロスボウの矢を胎児の頭に放った。頭部がコアだったようで、女性だった発症者はすぐに沈黙する。
 クロスボウをそのまま携えて、隔離区域のゲートへと向かった。


 響く銃声の方へと走ると、そこには大型の発症者の上に乗る長門の姿があった。
「瀬……」
 彼を呼ぼうとした声は突如、回路でも切られたかのように途切れる。声が出せない。喉を空気だけが抜けていく感覚を感じた。
(何……これ!?)
 焦る赤城の心を差し置いて、赤城の手は、小慣れた様子でクロスボウに矢をセットする。金縛りのように、自分の意思と動く身体がちぐはぐだ。
 援護射撃にしては、狙いがおかしい。高すぎる。赤城の勘が警鐘を鳴らすと同時に、彼女の指はトリガーを引いていた。
「……!!」
 叫ぶこともできないまま、矢の行方を眺めることしかできない。
 矢が標的に着弾するよりも、発射の微かな物音に反応した長門の方が僅かに速かった。
 逸れた矢は長門の脇腹を切り裂く。矢を叩き落とした彼の反射神経は流石というべきか。中空に血飛沫が舞う。
ターコイズブルーの瞳が赤城を捉えた。
 馬乗りになっていたコアに弾丸を二発撃ち込んでから、機能停止するアンセラを蹴り飛ばして着地する。
 赤城の手はなおも第二射を構えようとする。その懐に金色の狼は滑り込んできて、彼女の手から矢を叩き落とし、クロスボウを取り上げた。
「どうしたよ、もう終わり?」
 降ってくる冷えきった声に、何も言葉を返せない。
 長門の表情が笑ったような形相に歪む。
「……誤射しましたって様子じゃねえよなァ……!?」
 赤城の胸倉を長門の手が掴み上げようとした瞬間。
「瀬良!」
 赤城と長門の間に時雨が割って入った。
「無線を聞いてないのか?キャンプで一斉発症が出た。仲間割れしてる場合じゃない」
「は?無線……?」
 長門はきょとんとしていた。無線の不調は、赤城だけではないらしい。
「……仲間割れじゃねえよ。赤城はこんな重心のブレた歩き方しない」
 赤城の襟を掴んだまま、時雨に示してみせる。
「操られてるって言うのか?東雲も……?」
「わかんねえ。でもこうしとけば、何かあっても俺なら捩じ伏せられるだろ」
 実力行使宣言をする長門に、時雨は「言いたいことは解るが、女子だぞ……」と苦い顔をした。
「で、無線が何だって?」
「……五月雨が居なくなったらしい。俺は五月雨を探す。瀬良は区域外の対処に当たってくれるか」
「ふうん、そりゃやべえや……って何当たり前のように仕切ってんの?隊長俺なんだけど?」
「お前の無線が役立たずだからだろ」
「ッんだとテメ!!面貸せこの野郎!!」



 彼女は、周りよりもほんの少し身長の伸びが早く、ほんの少し聡明だった。

「明日から五月雨ちゃんとしゃべった子、絶交ね」
 小学校の三年二組。クラスのリーダー格の女子が発したひとことから、萩原五月雨の学校生活は一変した。
 はじめは、単なる無視だった。数度呼び掛けると「あぁ、ごめん。何?」と会話が可能だったのは、数日間のみだった。
 体育の授業から戻ってきたら、机の中に入れてあった教科書が無くなっていた。教員に朗読を当てられても、読むための教科書が無い。
「隣に見せて貰え」
「……はぁ」
 隣の席の少女は、わざとしく溜め息をついて、自分の教科書を投げて寄越した。下校前になると、何事もなかったかのように教科書は机のなかに戻っていた。
「ないないって言ってたのに。うそつき」
 五月雨の背中には、そんな言葉が投げられた。
 小学校高学年になると、教科書はゴミ箱に入っていた。弁当にはチョークの粉が掛けられていた。
 家族には言えなかった。心配は掛けられなかった。『しっかりした子』を演じてきたのに、いじめられているなんて言い出せるわけがなかった。第一、証拠もないしそんなに大袈裟なことをされているわけでもない。あと少し、卒業まであと少しだけ耐えたら、こんな日々も終わる。
 ある日、下駄箱から靴が消えた。仕方がないので上履きで帰ろう。ぼーっとしていて気付かなかった、そう言えばいい。情けなさに喉が詰まるのを堪えながら、静まり返った校門を抜けた。
「五月雨」
 聞き慣れた、静かな声に呼び止められる。顔を上げると、門柱に萩原時雨が立っていた。市内の高校に進学したばかりで、綺麗な制服に身を包んでいる。
「……お兄、ちゃん」
 彼は黙って、五月雨が提げていた鞄を持ち上げる。上履きのままであることにも気付いている筈だ。なのに、何も言わない。その無言が、ひどくおそろしかった。
「……私ね。く、靴、」
「構わない。誰にも言わない」
「……」
 その場から動かない五月雨の手を取って、兄は帰路を歩き始めた。その手と背中が随分と大きくて、まるで盾のように思われた。
「……ぅ」
 喉の詰まりがおさまらない。肩の震えは涙になって、ぽろぽろと頬を撫でては落ちる。
 五月雨にとってのたったひとりの味方の背は、何も言わずに彼女をいつもの帰り道とは別方向へと導いた。
「……?おうち、あっちじゃ……」
「そうだな。家にまっすぐ帰らないのは悪い子だ」
 近所の公園のブランコで、日が暮れるまで話した。兄の読んだ本のこと。本を書く人のこと。世界には色んな神話があること。学校の話は、ひとつもしなかった。
 お兄ちゃんは悪い子になってしまったから、きっと怒られる。私もきっと怒られるだろう。それでも、お兄ちゃんと一緒に怒られるのなら、平気だと思えた。
 日が暮れて、街灯が町を照らす。
 近道しようか、と、神社の境内を抜けて、普段は通らない道で家へと帰る。神社には遅れ咲きなのか、桜の花が数輪顔を見せていたのを覚えている。上履きはとうに泥だらけだ。

 帰宅後、両親には随分と叱られた。
「五月雨は帰ろうって言ったけど、俺が無理に引き留めた」
 それが五月雨が覚えているなかで、兄がついた最初の嘘だった。
 自室で兄は片方の頬を赤く腫らして、何でもなさそうな顔で分厚い本を読んでいた。痛くないのかと問うた五月雨に、兄は「痛くない。本を読んでいれば、全部忘れられる」と微笑んだ。
 不器用に笑う人だ。痛くないわけ、ないくせに。

 *

「ねぇねぇ。萩原さんって、あんたよね?」
 中学校一年の頃、五月雨に突然声を掛けてきた先輩がいた。スカート丈を膝上まで上げた彼女は、取り巻きを従えて現れた。
「萩原さん、お兄さん紹介してよ」
 その時にも感じたのは、やはり明らかな憎悪と嫌悪だった。
 いつもそうだ。時雨には多くの人が言い寄る。彼は優しすぎるから、それらすべてに律儀に応えようとしてしまう。
 ──私が、彼を守らなければ。

 *

□三年前 十月二十四日 高原町

 避難場所として落ち合おうと決めていた神社にやっとの思いでたどり着いた五月雨を、長い黒髪の女性がすぐに迎え入れてくれた。巫女だろうか。
「よく頑張ったね……もう大丈夫。村雨さん、お願いします!」
 女性に誘導される先に、眼鏡をかけた細身の男性が応えた。
「はいはい、こっちよ」
 お社に集まった人達はごく数人だ。皆怪我をしたり、静かに泣いていたり、そこに五月雨の家族の姿は無かった。
「時雨くん……」
 いつもの仲間と、時雨は追っ手を迎え撃つと言い街に残った。
 五月雨にはただ、季節外れな桜の舞う神域の中で、無事を祈ることしかできなかった。

 *

□同日 杉戸市

 アスファルトを血が叩く。もう誰の、あるいは誰だったものから溢れたそれなのかすらわからない。
 あれほど居た自警団も、今や皆沈黙し、動いているのは時雨と最上、鬼怒だけだった。彼らも満身創痍で、救助の見込みが無いことも察し、撤退戦へと切り替えようとしている矢先のことだ。
 振り抜かれた脚を受けた鬼怒の手斧が、柄からばっきりと折れた。
「嘘だろ……?」
 先端の刃を失って立ち尽くす鬼怒と、迫る次段の拳との間に、最上がその身を滑り込ませた。拳は最上を打ち抜き、さらに無防備に飛ばされる彼の右足首を掴んで、その中空の膝を踏みつけた。
 激痛に叫んだ最上の右足は膝から下が奇妙な方向に折れ曲がっていた。動けない最上に、異形の爪が迫る。
「啓!」
 時雨は刀を振り抜いて、その腕ごと斬り飛ばした。最上の肩を担いで、異形から少しでも遠ざけようとするが、成人男性を担いで走ることは不可能だった。
「時雨、何やってる……!俺はこの脚じゃ無理だ、逃げろ!」
 最上は手を離せと時雨を何度も怒った。しかし時雨は、彼を掴んだ手を離すことなどできなかった。がむしゃらに担いで、一歩一歩を踏み締める。背後に、そんな二人の姿を面白がるようにゆっくりと追い掛けてくる気配があることはわかっていた。それでも、……それでも。
「どこ見てやがる、化け物!そんな乳臭ぇガキ食ったって旨くねえぞ!」
 折れた斧の刃を投げ付けて、鬼怒が吠える。
 異形は鬼怒の方へ向き直り、ゆっくりと大口を裂く。鬼怒は柄の折れて尖った側を先端にして、己に食らい付こうとする異形の首へと深く深く突き刺した。異形の首はそこから裂け、その筋ばった身体は力無くゆらりと倒れ込む。
「 [[rb:章 > あきら]]……!」
 時雨の肩でそのさまを見ていた最上の声は、思わず上気する。その声に決着がついたことを察した時雨が振り返ったとき、裂けた首はそのまま巨大な口へと変化し、鬼怒の上半身をばくりと呑み込んだ。
「…………え?」
 そのまま首の中でもごもごと蠢いていたが、やがて、ごり、ぐちゅり、べきり、という音とともに下半身が噛み千切られ、アスファルトへと崩れ落ちる。彼が着ていたスポーツウェアは赤黒く染まり、そして異形の首──もとい、新たな口からも鮮血が噴き出す。
「……ぁ、あ……き、ら……?」

 目の前で何が起きているのか、理解ができなかった。麻痺したように、脳が処理を拒むように。
「……時雨、逃げろ」
 最上の乾いた声が聞こえる。だが、時雨の脳はもはやその言葉の意味すら把握できない。さっきまで鬼怒だった、弱々しく痙攣していた下半身が、やがて痙攣を終える。異形の口はその、まだ桃色の腸をこぼした腹に食らい付く。時雨の瞳は、ただ、自分達のリーダーが咀嚼されるさまを見つめて離れない。
「時雨、聞いてるのか?」
 ──終わりだ。
 ──皆死んだ。章も、喰われた。
「……時雨、おい!」
 ──俺も、啓も、ここで死ぬ。
「時雨ッ!!」
 最上に肩を掴まれる。
「しっかりしろよ!もう歩けるのはお前だけなんだ!」
 分かってる。分かってるんだ、そんなことは。希望を失った時雨の双貌を真正面から捉えながら、最上は叫んだ。
「お前が折れたら──誰が五月雨ちゃんを守るんだ!?」
「……!!」
 最上の声に応えられない。啓はどうして、こんなに力強い声が出せるのだろう。その声はまるで、まるで──
「……分かった。俺を斬れ、時雨」
 最上は腰の鞘から、彼の武器である短刀を取り出した。刀身は厚く、斬るよりも突き殺すことを重視した携行武器だ。
「…………は、……なに、言って……」
「いいか、チャンスは一回だけだ。俺があいつの動きを止める。俺達しかもう居ないんだ。ここで逃げたら、……章の死が無駄になる」
「啓……?」
「お前に辛い思いをさせるのは分かってる。俺はもう……助からない」
「啓!何を……」

「……我が儘を、言ってもいいか?」
 最上は笑う。いつもそうだ、こいつはよく笑った。お調子者で、チームのムードメーカーの笑顔だ。
「折られた足の感覚がもう無いんだ。寒くて……避難所までもたない。でもせめて、……化け物にはなりたくないんだ」
 ムードメーカーのその声が、悲痛な涙に濡れるのを頬で感じた。怖い。辛い。痛い。そして何よりも、悔しくてたまらない。それは時雨も同じだった。
 異形を逃がしてしまえば、また同じことだ。人を食い、逃げた先でまた人を異形にして操る。それを断ち切れる刃を持つ者が、今ここに、二人だけ生きている。
「時雨。俺はお前のこと、好きだったよ」
 悪戯がばれた子供のようにそう言って、時雨の肩を突き飛ばした。支えを失った最上の身体が、地面へと墜ちる。鬼怒を食い終え、音に反応した異形が、最上を捉えた。その腕が最上の左脚を掴み上げるのと同時に、最上の短刀が、異形の右肩を深く切り裂いた。そこから筋肉の走行に沿って右胸へと走る。切り裂かれた皮膚がそのまま最上を包み込むように癒着する。

  ──俺ごと斬れ、時雨。今しかない。

 最上の叫びが、刀を構えた時雨を爆ぜさせた。
 ありったけの力を込めて、痛みも忘れて、その場から矢のように飛び出す。
 肉の下で最上の短刀が急所へと届いたのだろう、異形が叫び声をあげる。
 目印なんてなかった。それでも、最上が狙った箇所が時雨には視えていた。……その線は真っ直ぐに、最上ごと異形の一点を貫いていた。
 ふたつの鼓動が、刀を通して時雨の手に伝わる。
 時の止まったような世界の中で、掠れた最上の声が、もはや音にならない声だけが響く。

  ──楽しかった、ありがとう。だから──

 最上の鼓動は、時雨の手の中で、やがて止まった。

 *

「萩原くん!」
 案内と世話を焼いていた巫女が、鳥居の下に現れた影を見るなり駆け出した。時雨の姿を見て、社に避難していた住民が詰め寄ったが、時雨は何も伝える言葉をもたなかったし、住民もまた、血濡れの彼に掛ける言葉をもたなかった。

 数十人居た自警団のうち生還したのは、萩原時雨ただ一人だった。


 その日の晩、杉戸市に軍が到着した。
 市が封鎖され残存する異形の処理が行われたのは、翌日のことであった。



 *

「時雨くん。やっと安全な場所に居られるんだよ?もう戦わなくていいじゃない。どうして?あの金髪の人は強いんでしょう?強い人にやらせればいいよ。時雨くんが傷付く必要なんかもう、ないよ」
「背丈こそ大きいが、あいつは中学生だ。どれだけあいつが強くても、一人じゃ無理だ。僅かでも俺が力になれるのなら、それがきっと……贖罪になる」
 どんなに説得しても、彼は聞き入れなかった。悲しみの連鎖に再び自ら身を投じて、傷付いて帰ってくるさまは、五月雨には見るに堪えなかった。


 *

□現在 名坂市

 廃墟ビルの一画。何らかの事務所跡らしき空間に、五月雨の座る椅子はあった。彼女は窓際に立つ影に視線を向ける。
「……鬼怒さん」
 男は答えない。
「時雨くんから、聞きました。鬼怒さんも、最上さんも、あの日死んでしまったと」
「……」
「貴方は、鬼怒さんの名前と顔で、何をしようとしているんですか?」
「……正確には、させられようとしている、だな」
「え……?」
「本当はこんな真似して、情けないって分かってんだ。ただ……向こうはじきに戦場になる」
 わずかに埃った窓から一点を眺めていた鬼怒は、俯いて己の爪先を見やる。
「そんな危ない所に……その、好きな人を、置いておきたくない」
 鬼怒は呟くようにそう言ってから、「何でもない。忘れてくれ」と付け足した。五月雨の手は椅子の背凭れで留められている。結ぶ紐の弛さは、彼の迷いの表れだろうか。何にせよ、五月雨は興味がなかった。
「私は、他に好きな人がいます。振り向かれないことなんて私が一番分かってます。世間が許さないのも、分かってる」
 彼は振り返る。その次の言葉が予想できたからだろうか、あるいは。
 五月雨は構わずに続けた。
「それでも私は、実の兄が、好きです。愛している。誰よりも」
「……馬鹿じゃないのか。肉親だろ」
「ふふ。『貴方も』そう思いますか?がっかり。せっかく恋のお悩み相談に乗って欲しかったのに。私には血なんてどうでもいいの」
 五月雨は寂しそうな笑顔を浮かべて、拗ねた子供のように脚をぶらつかせた。
「やっぱり私を解ってくれるのは時雨くんだけね」
「……」
 鬼怒は五月雨に詰め寄った。失恋の傷に穏やかに塩を塗り込む五月雨の言葉は彼を苛立たせるのに十分だ。
「私を食べますか?でも残念、時雨くんはもう、貴方の正体を知っています。すぐにここに来ます。戦場になるのはここも同じ」
「……何?」
「無線機が遠隔操作可能なのは、そうさせた貴方もご存じの通り。でも、TEARSの怖い人は、戦闘員だけじゃないんですよ」

 五月雨がそう言うと同時に、部屋のドアが音を立てて吹き飛んだ。
「……悪いな。ノックが強すぎた」
 現れた人影に、鬼怒はいよいよ怒りをその顔に張り付ける。
「時雨……!!」

 *

□二十分前

 隔離区域外待機キャンプにて発症者の処理中、その通信は唐突に入った。
『もしもーし。S部隊と赤城さん。聞こえますか~?』
「うおっ」
(ルイスさん……!?)
『こちら萩原。問題ない』
 別行動中の時雨も返答する。管制からの通信は復旧したようだ。
『ごめんなさ~い。僕がちょっと別のお仕事してる間に、何だか悪い虫がついていたみたいで。彼女には後でたっぷりと質問しておきますので☆』
「……はは」
 ルイスの拷問趣味が光るだろう。謝りながらも、その声は随分と愉しそうに弾んでいる。
『長門さんと時雨さんは問題なしと。赤城さんは聞こえてます?通信レスポンスは反応グリーンですけど』
「赤城なら聞こえてるよ。何か今、声が出せないみたい。さっきもよくわかんないけど変な行動してたし、何なんだろ?」
『変な行動?赤城さんが?長門さんじゃなくて?』
「うるせえよ」
 からかうようなルイスの声に、長門はしかめっ面をした。
『冗談はさておき。お仕事っていうのはですね、杉戸封鎖とその際の指揮官戦……時雨さんたちが戦った相手ですね。その件について調べてたんですけど。……赤城さん、変なお水とか、飲みました?』
「水ぅ?」
 なんだそれ、と長門が首を傾げる隣で、赤城は自分の携行品の中にペーパータグがあったことを思い出し、タグにペンを走らせた。
≪さっきの怪我人が、発症する前に、水を飲んだ≫
≪ネクスト……なんとか、みたいな名前がラベルに書いてあった≫
≪その人が目の前で破裂して、私はその水みたいな液体を被ってしまった≫
≪瀬良くんを見たとき、身体が勝手に動いて、その時から声が出せない≫
 メモを長門が読み上げる。
『……アンセラの、液体?』
 インカムから、強張った時雨の声が聞こえた。
『おそらくそれです~。杉戸でパンデミックが起きた際も、病院で使われる水に、統制因子……敵さんが発症をコントロールするあれです。その因子を含むコードファクターが混入されていました。その水を使用し、因子が経口なりで体内に侵入しバイオハザード、そしてパンデミックに繋がったと。医療従事者は滅菌水なりRO水なりを使うんですけど、患者さんはその辺の蛇口を使いますし、手洗いなんて適当ですからねぇ。ましてや患者です。免疫力なんてたかが知れているでしょう?』
「はぁ。なるほどそーゆーことね、完全に理解した」
 腕を組んでうんうんと頷く長門は、完全に理解を放棄している顔だ。わかってない、と傍らにキャプションがつきそうである。
『この間、雨が降ったでしょう?あの雨に乗じて、早朝の現場の水溜まりにも統制因子が見られました。あれを吸い込んだ人が、支部の処置棟で発症したんです』
「……あぁ。あれね」
 大和らを襲った発症者を思い出す。支部内で一斉発症が発生したことの隠蔽に、武蔵も奔走しているはずだ。……武蔵が走り回るさまは想像がつかないが。
『東雲は大丈夫なのか?その……発症は』
『赤城さんのコードファクター抗体機能はずば抜けています。統制因子の混入には身体が驚いてしまったかもですが、発症はしないでしょう。大和さんが言ってたので、彼が僕でなければおそらくは』
「どーゆー意味だよ」
『大和さんが嘘つき趣味じゃなければ、赤城さんは大丈夫ですよってことですよぉ』
「おめーは嘘つきだってのか」
『みゃは☆ ま、声もすぐに出るようになると思いますよ。心配ご無用です』
 赤城らが安堵していると、インカムの向こうでルイスが『はい、見っけ☆』と呟いた。
『五月雨さんの無線機の遠隔ロック解除に成功して、現在地取得させてたんですけど、読み込みできました。確度八三パーセント、静止状態。時雨さん、そこから西南方向に、建物はありますか?』
『……。数えるのが嫌になるぐらいにはある』
『ふふ。ではその物陰を使いますね。恐らくは敵から時雨さんの姿は見えています。それを念頭に置いて、逆手に取りましょう。目標は直線距離で七〇〇メートル、旧雑居ビルです』
『ビル……あれか。視認した』
『ではその建物を見ないでくださいね。背を向けて、北に走る姿を見せましょう。現場までは僕がオペレートします』
『了解した。頼む』



□同時刻・TEARS名坂支部 作戦管制室

 並んだモニターを前に、ルイスは椅子の背凭れに身体を預けた。傍らのティーカップを手に取り、中身を少量口に流し込む。
「訊きたいことは山ほどあるので、せいぜい黙秘か僕を騙す練習を今のうちにシミュレーションしておいてくださいね。せっかくですから」
 組んだ脚が、足元に転がされた女性を踏む。──ルイスの前にオペレートをしていた女性だ。
「遠隔ロック、パスコード?馬鹿馬鹿しい。貴女に命令した鬼怒って男はそんなに無能なんですか。つまらない」
女性は震えながら、その脇腹に彼のハイヒールを食い込ませる。

「僕、ちょっと怒ってるんですよ」



 *

「時雨……!!何故此処が?いやどうでもいい、お前……」
 怒りで言葉のまとまらない鬼怒に、五月雨はもはや視線も向けない。
「腹が立っているのは俺も同じだ。あるいはそれ以上に」
 太刀を構えた萩原時雨は、鬼怒を正面から睨み付けた。
「家族を返してもらう」

 鬼怒が飛び掛かるよりも、時雨が地を蹴る方が速かった。
その刃の切っ先が鬼怒の右腕を切り裂いた瞬間、そこから露出した筋肉がするりと伸びる。変形した腕に、時雨は確かに見覚えがあった。
 ──あの時の異形!
 忘れたことはなかった。
 あの日隣人を絞め、友人を引き裂き、仲間を喰らい、仲間を──
「死に損ないが……!」
「その台詞、そのまま返す!!」
 打ち込まれた大振りの左腕が、時雨を吹き飛ばす。もともと大柄が売りだった鬼怒だ。腕力勝負では時雨に利は無い。ましてや敵の本性は異形だ。アンセラは己が食べたものの身体的特徴を反映するものも少なくない。時に、食べた者の脳を使用することで、生前のその人物の意識や記憶を持つものもいる。
「相変わらず細っこいな、時雨。……不思議だよ、何でお前『だけ』生き残った?お前に何の価値があるんだ?分からねぇな」
 鬼怒は一歩ずつ時雨に歩みを進める。
「……今のお前には、解らないだろう」
「…………黙れ」
 時雨の言葉を受けて、鬼怒の苛立ちはいっそう沸く。みし、みしと体組織が蠢く音が響く。
「醜いな。惚れた女にそんな姿を晒す気か?」
 時雨の頭を狙って振り抜かれた長腕を潜り抜け、鬼怒の懐へと飛び込む。下段から斬り上げた刀筋が、異形と化したその胸を袈裟に彩る。
(ちッ、浅い!)
「黙れ、偉そうに!」
「偉そうな隊長の態度が移ったみたいだ」
 掴み掛かった左腕を、刀が斬り落とす。
 が、鬼怒は怯まずにそのまま時雨に重心を乗せた。
(な……!?)
 断面から溢れ落ちる血はそのまま腕を形成し、瞬く間に左腕は再生した。時雨の首を押さえつけようとするその掌に、咄嗟に太刀を突き立てる。
(再生が早すぎる……刃のコーティングが、効いてない!?)
 馬乗りになった鬼怒は、突き立つ刃を気にもかけない様子で、左半分が異形のそれと化した顔をにんまりと歪ませる。
「五月雨にもちゃんと見えるようにゆっくり潰してやる。いけ好かねえ男前の顔ともお別れだ」
「ッ、」
 時雨が太刀の柄を握り直すと同時に、がん、と目の前の異形の頭が大きく振れた。
「触るな!触るな触るな触るな化け物!!」
 五月雨が椅子を鬼怒の頭に叩き付けたのだ。縛る紐が弛く、手首しか椅子に結びつけられていなかった。
「時雨くんから離れろ、死ね、死ね死ね死ね死ね死んでしまえぇ!!」
「さ、五月雨?」
 激昂した五月雨に、誰よりも時雨が動揺した。長らく家族として共に過ごしてきたが、こんなに怒る妹を見たことがない。
「お前なんか嫌いだ、死ね!邪魔だ気持ち悪い!死ねッ!!」
 何度も振り下ろされるパイプ椅子は歪み、悲鳴のような金属の音がする。
「……あァ、……そうか……もういい」
 黙って殴られていた鬼怒は、唸るような低い声を発し、ゆらりと起き上がる。響いた声はもはや時雨がかつて知るそれではなく、変形する喉から発される掠れた声だった。細腕で必死に椅子を振り回した五月雨は、肩で息をしてへたり込んだ。
「五月雨。お前のせいだ、全部」
 鬼怒の視線の先にいた五月雨ははっと顔を上げる。
「……!!」
 押し付けた太刀により縦に避けた腕は、そのまま太刀ごと時雨を縛り付けた。抗いがたい怪力で、コンクリートの床へと彼を叩きつける。右腕が下敷きになり、痛みは先の交戦で蹴られたことをまざまざと思い出させた。
「ぁぐッ……!」
「時雨くん!!」
 思わず右腕を庇い起き上がると、やけに身体が軽く感じる。鬼怒の拘束はあっさりと斬れた。剥き出しの筋組織のような肉が、ばらばらとその場に落ちる。
 今ならやれる、そう感じながら太刀を構え、床を蹴り飛び出す。

 時雨の刃の切っ先は、
「……時雨くん?」
「──!??」
 萩原五月雨を捉えていた。

 ──何が起きている?
 ──身体が、勝手に──

 ──俺は、五月雨も、斬るのか?

「お前が折れたら、誰が家族守るんだよ」
 瞬間、時雨の右肩に衝撃が走る。突然のことに太刀が手から離れ、宙を舞う。それを掴もうとした鬼怒の手を、銃弾が撃ち抜いた。
「わり。手加減ミスった」
 突如何者かが横から時雨の腕を蹴り飛ばし、鬼怒を撃ったのだ。
「何だお前……!?」
「何って。偉そうな隊長さんだけど」
 ジャージ姿のS部隊隊長は、鬼怒に銃口を向けたまま不敵に嗤った。
「よう、やけっぱちクソ兄貴。元気か?」
「……誰かさんのお陰でな」
「そりゃ良かった」
 先の交戦、アンセラの巨大な眼球を斬ったときに溢れた液体を、時雨も被っていた。──統制因子を身体に吸い込んでしまっていたのだ。
「馬鹿な……入り口は守らせていたはず。下の連中はどうした!?」
「あんなん話にもなんねえよ。人望ねえんだな、あんた」
 長門は二丁目の拳銃を取り出し、その両腕にそれぞれ黒と銀のガバメントを構える。
 ふらふらと刀を拾い上げた時雨は再び長門に斬りかかる。大振りなその横凪ぎを長門は悠々と避け、時雨の眼前に銀の銃口が突きつけられた。
「お寝ぼけ時雨くんさあ。今度俺に刀振りかぶったら撃つぞ、死ねない程度に」
「……そうしてくれ。目が覚める……」
 長門は銃口を鬼怒へと向け直すと、その銀の銃を握り締め、セーフティを解除する。
 乱入者に鬼怒は──鬼怒だったものは唸り、その身体は数年前、時雨の脳裏にこびりついて離れないその姿と完全に一致した。
「──!!」
「ビビんな。俺がいる」
 思わず息を呑む時雨に、長門は喝を入れる。
「おっさん。悪いけど俺、お前の仲間よりも強いよ。ちょっと本気出すからさあ」
 振り回される幾重もの腕を、銀色の弾丸は精確に射抜く。統制因子に触れていないコーティング弾により千切られた腕は、肉の焼けるような音と臭いを発しながら吹き飛んでいった。
「瀬良、こいつを吼えさせるな。あの時と同じなら……広範囲の人間を、一斉に発症させる!」
「OK、黙らせりゃいいんだな?」
 長門に食って掛かろうと開かれた裂けた口をジャージの長い足が下から蹴り上げる。下顎が上顎に打ち付けられるバガン、という音と共に、アンセラの喉が銃口の正面に顔を出す。二発の銃弾が、その喉に風穴を開けた。
 その下顎から縫い付けるように、長い矢が貫く。矢には紐のようなものが結ばれており、その一方は赤城の持つクロスボウに繋がっていた。弾丸は吸い込まれるようにアンセラの関節を破壊し、行動能力を奪う。
「くたばれ!」
 ばつん、とアンセラの身体が激しく痙攣し、上体が大きく逸れた。
(身体が動く……!)
 時雨の右腕に激痛が戻る。アンセラによる統制が解けたらしい。
 長門は銃をホルスターに片付けてしまった。握った指を鳴らして、その場で軽く跳ねてみせる。
「他人の顔だの体だの使って、俺は弱ぇですって自己紹介か?そりゃどうも。やりあうからにはお前が掛かってこいよ。俺はあんたに喧嘩売りに来てんだ」
 長門がアンセラの分厚い筋肉の表皮を引きちぎっていく。
「あんたらの過去には興味なんかないけどさあ」
 時雨が刀を構え、一箇所を見据えた。
「少なくとも、俺の知ってる時雨ってのは、こんなに弱くねえんだよ!」
 長門の渾身の拳が、鬼怒の頭部にめり込む。
 大きくバランスを崩した半身が壁に叩き付けられ、剥がれた胸部の肉壁にひびが走った。その割れ目の中央に靴底を蹴りつける。ひびの向こうに──コアが露出した。
「時雨ェ!今度こそぶった斬れ!」
 長門の吼える声が、刀を構えた時雨を爆ぜさせた。
 ありったけの力を込めて、痛みも忘れて、その場から矢のように飛び出す。

「お前が、章を騙るな!!」

 目印なんてなかった。それでも、ひとつの線が時雨には視えていた。……その線は真っ直ぐに、アンセラの一点を貫いていた。
 ひとつの鼓動が、刀を通して時雨の手に伝わる。
 時の止まった記憶の中で、掠れた最上の声が、もはや音にならない声だけが響く。

  ──楽しかった、ありがとう。だから──
  ──俺の分まで、生きてくれ。

 その鼓動が、時雨の手の中で、やがて止まった。




 アンセラが瓦解していく。時雨はその場に膝をついた。
「俺はずっと二人に憧れていた、追い付きたかった」
 傍らに長門が立つ。焼けるように崩れる目の前のそれを、無言で眺めている。
「章はな、俺と啓を生かすために犠牲になったんだ」
 俯いた時雨の声が震える。
「莫迦だろう?……馬鹿だ」
「安心しな、お前も同じ馬鹿だよ。バーカ」
 長門は時雨の髪をわしわしと乱暴に撫でて、扉へと歩き出す。
 赤城に救助されていた五月雨が、壊れた扉の向こうから長門と入れ違いに駆けてきて、時雨の背を全力で抱き締めた。ぽろぽろと涙を溢れさせながら、その背に顔を埋める。

「ごめんね、ごめんなさい。ありがとう、お兄ちゃん」


 杉戸封鎖戦は、遠く離れた名坂の地で幕を閉じた。
 静けさを取り戻した名坂の街は、静かに黎明を迎える。








 *

「鬼怒?ああ……存外持たなかったな」
 キリシマへ報告された、鬼怒の敗北は彼の想定よりも早かった。
 手元のタブレットを眺めて、退屈そうに呟く。
「……杉戸の生き残りか」
 キリシマはじきに興味も失い、タブレットの画面を閉じる。
「時間稼ぎもままならんとは。旧型はやはり無能揃いだな」
 傍らに立つ黒スーツの男にタブレットを預け、椅子から立ち上がる。
「調整を急げ。じきに働いてもらう」

 *

 名坂支部、医務棟の地下。
 銀色の大型扉が、何度も何度も叩かれる。
 扉の向こうで何が起きているのか、知らされた者は居ない。

 ただただ無人のリノリウムの廊下に、その音だけが響いていた。


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