CODE;FACTOR -コードファクター-

ゆづのすけ

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前編

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□????? 実験施設 研究棟 特殊解析室

 幾つもの機器が整然と並べられた室内に、小型の搬送コンテナを抱えた男が入ってくる。その足取りは真っ直ぐに、部屋の最奥にある大型の中央コンピュータへと向かっていく。デバイスを操作し、認証パネルに手を置くと、パネルに『UNLOCK』の文字が浮かんだ。
 中央コンピュータの傍らにある端子にタブレットを接続し、タブレットの画面にスキャン用のカバーを掛け、起動スイッチを押すと画面表面のスキャンが開始される。
 男はコンテナの中から三本の血液が規定量満たされた採血管を取り出して、中央コンピュータの向かいにある解析装置のラックに一本ずつ立ててる。強化ガラス扉が開かれ、その中のレールに検体ラックが乗せられた。駆動音と共にラックは機械内部へと動いていく。動作を示すランプが緑色に点灯したことを確認したその人影は、中央コンピュータへと戻っていった。

「順調かな?」
 中央コンピュータ前のチェアには、いつの間に入ってきたのか、白衣を纏う別の人物が座っていた。
「……! 小鳥遊専務……!?」
 専務と呼ばれた黒髪の青年は、露骨に不快感をその表情に張り付ける。
「その呼び方は好きではないと言ったろう」
「も、申し訳……ありません、かッ……かすみ様……」
 霞は機嫌をじきに直したのか、畏まる男にひらひらと手を振って微笑む。
「……はい。サンプル採取も、恙無く」
 返答を促された男は、中央コンピュータのディスプレイを指し示した。
「声紋登録もしておこう。やりすぎに越したことはないからな」
「はい」


□名坂市

「美味しいぃ~!」
 連休初日。赤城は市内の人気喫茶店で新作パフェに舌鼓を打っていた。
「これさあ、クリーム落ちちゃうよ。やべー」
 赤城の隣では、長門が大きなパンケーキをナイフで器用に切っている。そのさまを、向かいに座る五月雨が小さな抹茶パフェを食べながら眺めていた。
「長門先輩、ナイフとフォークを上手に使われますよね。動作が綺麗です」
「ん?そう?ガキん頃めっちゃ叩き込まれたからかなあ……」
 一枚を四分割に切り分けた長門は、そこからさらに二分割してクリームを乗せる。分厚いパンケーキはそれでも大きいが、一口の大きい長門はぺろりと食べてしまう。頬にクリームがついているが、彼は嬉しそうに頬張っていた。
「……イギリスはテーブルマナーを幼少より教え込まれることの多い国だと読んだことがある。あながち間違いでもないらしいな」
 五月雨の隣に座る時雨は、和風パフェの白玉をデザートスプーンに乗せようと試行錯誤している。
 赤城は、以前から話題のこの店に来たかったのだという。今日は五月雨を誘ってみたところ、暇をしていた長門が首を突っ込み、どうせならと時雨も呼んで、引っ越しの慰安と洒落込んだ。
「瀬良くんは、このお店来たことあるの?」
「うん? 無いよ。俺がどんだけ忙しいと思ってんの?」
「まあ……そうだよね……」
 ここ数日出撃が落ち着いているのは、異例なことだ。これから先がどうなるか分からないからこそ、休めるうちに休んでおけと武蔵が便宜を図ってくれている。
「や、えと、ごめんごめん。別に責めたいわけじゃないんだよ。俺も遊びに出たかったし、これ美味しいし、いい日だよ」
そう言う長門が笑顔を見せる隙に、時雨のスプーンが長門のパンケーキに乗ったクリームと蜂蜜をかっさらっていった。
「確かに美味しいな」
「……ちょ待て、おい。今すげえびっくりしたぞ」
「何の話だ?」
「欲しいなら欲しいって言えよな、あげないけど」
「くれないのか」
 それぞれのメニューを一口ずつ交換する。五月雨が「時雨くん、はい、あーん」とスプーンを差し出す攻防がしばらく続いていた。
「わあ、兄妹ラブラブだなあ」
「そうだね」
「うふふ、ありがとうございます。ほら時雨くん、恥ずかしがらなくていいのに。先輩方も公認よ」
「そ、そういう問題じゃない……!!」
 ふとなにやら思い付いた様子で、赤城の視線は萩原兄妹から長門に移る。
「そういえば、瀬良くんはきょうだいとか居るの?」
「俺? いるよ。妹が」
「妹!?」
「長門先輩、弟のイメージがあったんですけど」
「俺も初耳だ。瀬良も兄だったのか」
「え、言ってなかったっけ。お兄ちゃんなんだよ俺」
 長門はえっへんと胸を張るが、あまり兄らしさは感じられない。
「瀬良くんの妹さんってことは……その子もハーフなんだよね?」
「んー、学校でも訊かれたけど、その half って何なの?」
「……混血児を意味する和製英語だ」
 時雨が口にした混血児、という単語に一瞬長門の表情が曇った。
「混血、って、そんなに悪いことかな?俺、向こうでも随分馬鹿にされて掴み合いの喧嘩したことあるけど」
「むしろ逆だよ。瀬良くんみたいに背が高かったり体つきがしっかりしてたり、目鼻立ちがくっきりしてたり……いい意味で目を引くからさ」
「ふうん?」
「一般には、ご両親のうち片方が日本人でもう片方が外国人であることを指しますね」
「ああ、父さんが日本人。母さんが英国人だよ。半分って、そういうことか」
 やっと納得したようすで、ゆっくりと瞬きするその金色の睫毛と澄んだターコイズブルーの瞳は、確かに見る者に異国の風を感じさせる。どこかたどたどしく感じていた彼の日本語も、今となれば愛嬌がある。
「とかいう赤城はさ、きょうだいは居んの?」
「私? 私は確かお兄ちゃんが……」
 唐突に話を振られた赤城は、微かに動揺しながら答えを探す。
「確か……?」
「…………あれ?」
 口をついて出た返答に、赤城も三人と同時に困惑した。
 『確か』? 自分の家族のことなのに?
 その記憶は極めてあやふやで、まるで他人の情報のようにさえ感じる。いや、まさしくその記憶は、記憶というよりは知識として与えられた情報に過ぎない。明らかに不自然なその感覚に、驚きと戸惑いを隠せない。
「……ごめん。変なこと訊いたね」
 長門が詫びたが、きょうだいの有無など別に変な質問でもなんでもないというのは赤城にも分かっていた。そんなことないよ、と返しながら、パフェのシリアルを口に運ぶ。甘酸っぱいベリーソースの後味が、やけに残っていた。

 喫茶店のメニューは想像していたよりもボリュームがあり、赤城にはちょうど良い量だった。少食の五月雨はお腹いっぱいになったようだ。成人男性の食べる量は赤城にはよく分からないが、普段から大量に食べる長門にはおやつ感覚で「まだまだいけるよ」とのことらしい。
(時雨さんは全然顔に出ないな……)
 自己主張の激しい長門と並ぶと、時雨のそれはほとんど感じ取れない。感情を表現するのが苦手だとは言っていたが、五月雨には「時雨くん、ご機嫌ね」と言われていた。半ば無理矢理呼んだ形にはなってしまったが、楽しんでくれているのなら何よりだ。



 喫茶店のある商店街を歩いていると、川辺のほとりに設けられた憩いの広場がある。公園として噴水や可愛らしい水路が整備されており、夏場には小さな子供が水遊びに集まっている。日頃から、歌手志望の若者がそれぞれ楽器を片手に思い思いに自己表現をしたりフリーマーケットが開催されているような場所で、今日は特設ステージの前に人だかりができていた。
「何でしょうか、あれ」
「ヒーローショーだってさ。連休初日だからかな」
 背の高い長門からは、ステージに掲げられた看板が読めるらしい。日頃から銃を使い戦う身でもあり、視力は良いのだろう。
「あ、見て!風船配ってる!」
 赤城が指さす先では、ピンク色のデフォルメされた着ぐるみが、周囲に群がる子供達に色とりどりの風船を配っていた。
「良かったな、瀬良。貰ってきたらどうだ?」
「マジじゃん。貰おっかな」
 スキップで向かっていく長門を見た着ぐるみは、驚いたように一瞬静止しているのが見えた。
「ビビられてんじゃん瀬良くん」
「子供達の倍近く身長のある人に突っ込んでこられたら、それは怖いでしょう」
「図体と態度のでかさは無自覚だろう」
 散々な言われようである。
「にしても、コードファクターの噂ぐらい知ってるでしょうに、皆呑気ですよね」
「悪い意味で、慣れたんだろう。八年も前のことだ。八年間も自粛なんてしていられない」
「せっかく時雨くんとお出かけだもの。何もなければ良いんだけれど……」

 やがて長門は風船を片手に上機嫌で戻ってきた。
「あいつ風船渡してくれなかったんだよ。ちょうだい!って言ったらくれたけど」
「お前は一度自分を客観視すべきだ」
「客観視? 俺がイケメンすぎて直視できなかったとかかな?」
「……」
「えっ何で全員無言!?」

 ステージの両脇に設置された大型スピーカーから派手なファンファーレが鳴り響き、ヒーローショーの始まりまで間もないことを告げた。
「さっき友達になった少年に聞いたんだけど、あれっていま日曜の朝にやってるやつなんだって」
「友達ができたのか……」
「うん。キヨっていう八歳の子。話してたらキヨの父ちゃんが血相変えて走ってきた」
「そりゃそうだよね、我が子が金髪のやばい兄ちゃんに絡まれてると思うもんね……」
 ステージの最前列に並ぶ子供達の数人が、周囲を振り返っている。長門が手を振ると、ひとりの子供が笑顔で手を振り返した。あの子がキヨというのだろう。
「俺、キヨの横で見てきていい?」
「どうぞ。風船飛ばさないでね」
「ん……あ、そうか。預かっててくれる?」
「いいよ」
 風船が背後から視界の妨げになることを憂慮したのか、厚紙の取っ手を赤城に預ける。大きな背中は、手招きするキヨの元へと駆けていった。

 そうこうしているうちに、人気のロック歌手とタイアップした派手なテーマソングが流れ始めた。現在放映中のこの作品のオープニングテーマだろう。
「男の子ですね、長門先輩」
「時雨さんも、こういうヒーローものとか好きだったんですか?」
「俺は……全然詳しくないな……。昔から、あまりテレビを観なかった。……啓は詳しかったが……」
「戦隊ものより女子ヒーローもの派、とか?」
「……ますます分からない。何にせよ、勧善懲悪は王道のテーマとして解りやすいからな」
「時雨くんは視聴者よりも作家の方が向いてるんじゃないかと思うんだけどな。アンセラと戦う話のノンフィクションとか」
「ただ斬るだけだろう。何が面白いんだ?」
「やめましょうよこの話をメタく全否定するの」

 ステージ上では、変身前と思われるヒーローの男性俳優が雑魚敵を倒していく。日々似たような活動をしている男が二人、今まさにこの場でそのショーを眺めているのだが、こうした平穏も彼らの活躍あってのことだ。
長門はキヨの横でしゃがんで、共にステージに声援を送っていた。

 やがてアラートの効果音が鳴り響き、オペレーターが強力な敵の出現を告げる。
「うちのオペレーターもああいうまともな人だといいんだがな」
「な、名坂のオペレーターだって優秀な方じゃないですか! ちょっと悪戯癖とサド趣味が隠せてないだけで……」
「仕事が抜かり無いのは認めるが、戦場では悠長に奴の冗談に付き合っている余裕はない。それこそS部隊でもなければな」
 敵で遊びたがる悪癖を持つ長門とルイスに囲まれた時雨の気苦労は、少なくもないのだろう。
やがてステージの下、観客の目の前にその強敵が現れる。

 その瞬間、
「ッ!?」
 時雨が身構えた。
「えっ?」
 困惑する赤城と五月雨を背後に庇いながら、周囲に聞こえないよう二人に低く告げる。
「……二人とも下がってくれ。……あれは……本物のアンセラだ」
「!?」
「瀬良を最前列に行かせたのは……正解だったな」
 ステージを注視する。長門も間違いなく、敵役が本物のアンセラであることに気付いているだろう。が、ショーは滞りなく進んでいる。大迫力の敵に怯えて泣き出す子も居るが、然り気無く長門が背を擦って支えていた。もう片手はボディバッグに差し込まれており、恐らくその中では愛銃のグリップを握り締めていることだろう。
「……東雲は左手、五月雨は右手に回ってくれるか。有事に備えて、周りの大人の避難誘導を。人混みで銃は使えないから、子供の誘導は瀬良がやる。俺はアンセラを足止めする」
「了解……!」
「頼んだ。……散開!」

 目の前に現れた『強敵』は、まさしく長門たちが日々相手にしている、よく見知った敵であった。脈動する血管を体表に這わせたグロテスクなその姿に、周囲の子供たちは泣き出す子さえ居る。長門が手を差し出すと必死にその腕に縋り、彼の袖を湿らせた。
 周囲の保護者たちは、驚きの声をあげたが、特殊メイクだと思っているのか別段パニックになった様子はない。
『敵が暴れている、まずい!皆でアークレッドを呼ぼう!』
 アナウンスは、台本通りヒーローを呼ぶよう告げる。
「……おいおいマジか。ガチなヒーローショーになるぜ……」
 長門の隣で、キヨは気丈にアークレッドの名を呼ぶ。三分の一ほど泣いている子が居たが、キヨに呼応してともにヒーローを呼び始めた。
「アークレッドだとォ? 無駄無駄! オレ様は止められんよ!」
 アンセラが嗤う。
「えっあいつあの状態で喋れんの!? マジ!?」
「あいつら、キラーズは喋れるんだよ。ああやって仲間のことも呼ぶんだ」
「ま、マジかよ!」
 現役で日々アンセラと戦う名坂支部の精鋭・S部隊隊長も知らなかった新事実を小学二年生に教えられた。敵はキラーズというらしい。
(俺らはティアズTEARSだけどな……)
 やがて専用BGMと共に、赤いスーツに身を包んだヒーローが現れた。
「アークレッドだ! 来てくれたんだ!」
 少年たちのボルテージが跳ね上がる。お前らさっきまで泣いてただろうが。
「済まない、待たせたな皆! 正義を求める声ある限り、オレは戦う!」
 アークレッドは、子供たちを背に庇っていた長門に手を差し出した。
「ありがとう、お兄さん。キミが皆を守ってくれたんだな!」
「えっ」
「すげえッナガト! アークレッドと共闘するんだ!」
 長門の隣で、キヨはテンション高く目を煌めかせている。
「共に戦ってくれないか!キミとなら、こいつに勝てる!」
「ま、マジで?」
 アドリブに巻き込まれてしまったらしい。アークレッドの手をとって立ち上がると、周囲の子供たちもキャーキャーと甲高い声で喜んでいる。
「すげぇ! オレ、パパと何回かショー見たけどこんなの初めてだ!」
「こんなでっかい金髪のヒーローいないよ! 新ヒーローかな!?」
 長門の隣で、アークレッドはポーズを決めながら名乗り口上をあげる。
「紅き焔は闘志の証! 繋げ希望、明日の向こうへ! 方舟戦隊アークレンジャー! アークレッド、参上ッ!」
 こうなったら自棄だ。
「焼き付けな、一回きりのShow time! 俺こそ名坂きってのFlagship! Ark bullet, 推して参るぜ!」
 適当に言ったが、様にはなっているらしい。
「うぉぉぉ!! 英語しゃべったよ新ヒーロー!」
「ったりめえだ! 英国生まれの帰国子女なめんなよ少年!」
 めちゃくちゃ楽しい。そして目の前のアンセラ……もとい《キラーズ》とやらは、暴れるようなモーションをしながら律儀に待っている。アンセラのくせにお利口さんだ。
「何ィ……第二のヒーローだと……?」
「フッ、貴様の悪行もここまでだキラーズ! オレとこのアークバ……バレッツで成敗してくれる!」
 長門の発音は流暢すぎて、アークレッドにもよくわからなかったらしい。
ともかく、殴らないように戦うというのは、遠慮なくアンセラを蹴り飛ばしている長門には逆に難易度が高かった。キラーズの攻撃を掻い潜り、わざと空けられている箇所に拳や爪先を掠めて振り抜く。
 同じように、敵の攻撃を食らってあげる。ヒーローショーも意外と優しさに溢れていた。
「アークバレッツ、これを!」
「!? あ、ありがとうRed!」
 剣で戦っているアークレッドから、銃型の武器を受け取った。使えとのことらしい。
 どうやっているのか、長門やアークレッドの動作に合わせて効果音が鳴る。
「新ヒーローやべぇ! 変身してないのにあの強さだ!」
「タケちゃんに自慢しよ!」
 名坂を守っている新……もとい真ヒーローが強いのは当然だ。日頃から別に変身などしていない。
「これでトドメだ!」
 アークレッドが剣を掲げ、とりあえず長門も倣って武器を構える。
「アーク、ブラストッッ!!」
「ぐぁぁぁあ……!! ……おのれ、おのれェッ……!!」
 キラーズは大人しく倒されてくれた。いい奴だなお前。

「ありがとう、皆! そして、アークバレッツ! 本当のヒーローはキミ達だ! オレ達方舟戦隊と共に、平和を守ろう!」
 アークレッドと握手を交わし、アークレッドは退場していった。
 ついていけばいいのか分からず、タイミングを逃して残った長門に、子供たちが群がってくる。
「アークバレッツ! かっけぇ!」
「銃で戦うの? 絶対強いじゃん!」
「ふふん。実はずっと名坂の街で敵と戦ってたんだぜ、俺」
「隠れたヒーローだ!」
 嘘は言ってない、嘘は。

 と、人だかりの中の、幼児の一人がその場に蹲った。
「ん? なあ少年、どうした? お腹でも痛……」
 長門が声を掛けると同時に、その幼児の背中がぶちりと裂け、眼球の無い頭部のようなものが飛び出して牙を剥いた。
「クソッ!! こっちか……!!」
 ステージ前に悲鳴が響く。スタンバイしていた赤城と五月雨が即座に周囲の人々を誘導し、長門達の周辺はじきに開けた。
「お前ら! 大人達の方へ走って父さん母さんを守ってくれ! 頼んだぞ!」
「了解ッ!」
「OK, いい返事だ!」
 ショーの興奮が冷めやらぬ子供達は、ショーの延長と思っているのか力強く返事をして、すぐに赤城たちが誘導する方へ駆けていった。
 勢いよく成長するアンセラを蹴り飛ばして頭部を破壊するも、コアの手応えはない。飛び散った肉片はそのまま手のような形に再生し、のたうち回る。
(コアが深えのか……)
 長門の銃は大口径で威力も銃声も大きく、周りが開けたとはいえパニック状態のこの状況ではなるべく使用は避けたいところだ。周囲の市民に当てない自信はあるが、跳弾やパニックの市民が予想外の動きをする可能性もゼロではない。
(……なら、くたばるまで丸ごと潰しゃいい話だ!)
 動きは素早いが、発症したばかりであり組織はまだ脆い。
「瀬良! 俺は西の奴を相手する!」
 交戦する長門に、時雨が呼び掛けた。
「おう任せた、アークレイン!」
「あ……アークレインって俺のことか……? ……名前が雨だから……?」
 時雨は困惑しながら、公園の西へと向かっていった。


「あ、ああ……何、何よこれェッ!!」
仮説出店ブースの人混みを掻き分けて時雨が辿り着いた先では、四十代ほどの小肥りの女性が、発症した右下半身を見て泣き叫んでいた。寄生が限局的であり、脳まで達していない場合、本人の人格や意識をそのままに寄生箇所のみが発症を起こす例も少数だが存在する。女性の肥えた右脚は黄色いセルライトを垂れ流しながら、ブクブクと肥大化していく。脛だった毛穴からは髪のように毛が溢れ始める。
「斬れば助かるかもしれない。斬るぞ!!」
女性は泣きながら何度も頷く。ショルダーバッグに隠していた厚身の短刀を抜き放ち、鼠径部に突き立てて全力で振り抜く。発症部分から生えた腕が時雨の髪を乱暴に掴んだが、掴まれた箇所の髪を乱暴に切るとあえなく地面へと落ちた。
脚を斬られ失神している女性のもとに、出店からスーツの女性が飛び出して、肩に担ごうとする。
べきべきと骨の折れる音を響かせながら増殖するボンレスハムのようなその脚に刃を突き立て斬り裂くが、こちらもやはりコアらしき手応えは無かった。
「ッ……離れろ!!」
担ぐ女性を振り向いて叫ぶと同時に、担がれた女は喉から嘔吐するような音を発して口からごぼりごぼりと臓器のようなピンクの物体を吐き出す。口はがぱりと裂け、スーツの女性の半身を血でべっとりと濡らした。
時雨は発症した女とスーツの女性の間に身を捩じ込み、女性を庇いながらその脂肪で柔らかい身体を蹴り飛ばす。普段の太刀と違って短い刀身では、斬り裂いてもそこから溢れる脂肪が刃を滑らせた。
「チッ、肥り過ぎだ白豚……!」
暴れる腕が、何度も馬乗りになる時雨の腹や肩や腿を叩くが、脂肪を纏うそれはそれなりに重い一撃になる。未だ先日の、杉戸のアンセラとの傷が癒えきらぬ時雨にはさらに効いた。
(はじめは局所発症だった。ひとつずつ可能性を潰せ。血行性転移したなら……コアは……!)
厚い脂肪に覆われた胸部は、やはりぶよぶよと黄色い塊を垂れ流して刃を阻む。切っ先を下に持ち替えて勢いよく突き立てると、ごぱっと血が噴出する。脈動の手応えを確実に感じた。激痛にアンセラは断末魔をあげながら時雨を勢いよく突き飛ばし、そうして息絶えた。
吹っ飛ばされた先に、何者かが居たためにともに巻き込んで倒れてしまう。
「! 済まない、怪我は……!?」
「いえ、平気です。貴方こそ、」
下敷きにしてしまった時雨が慌てて起き上がると、それは先ほど庇った女性であり、そして。
「……、お前は……!」
先日名坂支部を訪れた千代田瑞季、その人であった。
「……? すみません、どこかで?」
千代田は少し戸惑った顔をしたため、しまった、と背筋が冷えた。あの時は小鳥遊大和として接していたため、今の姿を千代田に知られても構わないとは限らない。
「い……や、人違いだ……」
「っ、いえ、その声は……」
やらかした。眼鏡やら髪型やら服装やら小細工はしても、声色を変えられるほど時雨は器用ではない。顔が強張って冷や汗が流れる。……急患はまだか!
「時雨くん」
と、背後から極めて冷えきった声が降ってきた。
「駄目よ時雨くん。迂闊に他の女に触ったら。感染するでしょう?」
「さ、五月雨……」
時雨の手をとって立ち上がらせながら、五月雨は千代田を見下ろしながら敵意……否、殺意の籠った視線を向ける。
「誰ですか? 気持ち悪い。処理の邪魔です目障りです。さっさと退いてください」
「は、はい……すみません」
千代田も気圧されて、よろよろと立ち上がり、人混みへと戻っていった。

「千代田。あの男は知り合いかな?」
千代田が戻ったイベントテントでは、パイプ椅子に脚を組んで霞が座っていた。
「……いいえ。知人に似ていて驚きましたが、名前も違う別人でした」
「そうか。……早く車で着替えてきたまえよ、血でべっとりだ」
「はい、直ちに」
傍らに控える、霞の秘書から車の鍵を受け取り、千代田は人混みに紛れてテントを辞した。
「……冬月。今の男。見たか?」
「は。眼鏡こそ無いものの、黒髪に青藍色の瞳……。声紋は機械にかけねば断定はできませんが、声の特徴もほぼ一致かと」
冬月と呼ばれた秘書は、少女に手を引かれて人混みに消えていく男の背を真っ直ぐに見つめたまま答える。
「ははッ……」
霞が手にするタブレットの画面には、先程目の前でアンセラを倒した男と同じ人物の白衣姿の静止画像が表示されていた。

 *

「時雨くん。時雨くんは女の人に近付いたら駄目だって、いつも言ってるでしょう?」
「……済まない。気を付ける……」
非常時であれど、五月雨は他人に容赦がない。
時雨が周囲を見渡していると、テント群の向こうから長門が現れた。
「うぃー、お疲れお疲れ」
「状況終了か。……高脂肪食も困ったものだな」
「? 何の話?」
「いや……」
「時雨くんたら、肥ったおばさんにもひょろ長いキャリアウーマンにも迫られるんですよ。どう思います?長門先輩」
「そりゃお前、あれだよ。時雨が弱そうだからだよ」
「……何?」
時雨の顔に露骨に不快の色が浮かぶ。隠れた負けず嫌いは健在だ。

ぷかぷかと浮かんだ風船を携えたままの赤城はすぐに見つかった。子供を、はぐれた親のもとに連れていっていたようだ。スマートフォンを鞄にしまいながら、長門たちと合流した。
「ルイスさんと連絡を取りました。既に処理班がここに向かっているそうです」
「そうか。処理班に引き継ぎをしてから、俺達も支部に帰るとしよう」
「帰りにコーラ買ってっていい?」
「いいけど瀬良くん、血みどろでお店に入るのはやばいと思うよ。私が買ってくるね」
五月雨は時雨の腕に組み付いたまま、不機嫌そうに唇を尖らせている。
「……五月雨。休日を台無しにしてしまったのは謝るから、機嫌を直してくれ」
「いや。時雨くんのばか」
「なんでその馬鹿の腕から離れないんだ……」
「…………ばか」

慌ただしい人の群れを抜けていると、突然長門に横から組み付く影があった。
「うおっ」
「!?」
敵襲か、と一同は身構えたが、その影は思い切り長門の胴に抱き着いたままだ。
「瀬良ちゃぁぁん!!捜したよぉぉ!!」
高校生になるかならないかくらいの、男性にしてはやや小柄な少年は、大きな瞳からぽろぽろと涙を溢している。瀬良という名を呼ぶあたり、長門と初対面ではなさそうだ。
「せ……瀬良くん、この子知り合い?」
「全ッ然知らねー」
「酷いよぉ瀬良ちゃん!!恋人をほったらかした挙げ句知らないなんて!!照れ隠しだね!?」
「こっ、こここここ恋人ぉ!?」
「妄言だ。ほっとけ。こんな奴知らねー」
「でも瀬良ちゃんって呼んでますよね……?」
長門の顔からはいつもの朗らかな笑顔は消え去り、諦めきった真顔で無視を決め込もうとしている。
「もうっ、瀬良ちゃん!無視しないで!」
「うるせえなあ……」
痺れを切らした長門は少年を無理矢理剥がして、「さっさと帰ろ」と先頭を切って歩いていく。少年はなおも追い縋ってきた。
「待って!待ってよぉ瀬良ちゃん!」
「……さっきから何なんだ、お前は? 俺達は軍だ。部外者の同行は容認できない」
長門と少年の間に時雨が割って入る。
「……ボク?ボクは朝比奈あさひな初瀬はつせ。名坂高校一年。瀬良ちゃんの恋人で、」
「嘘つけ黙れ。撃つぞクソビッチ」
「……。……朝比奈、正直に言ってくれ。場合によっては手荒な真似をしなければならなくなる。それは互いに、得策ではないだろう」
「うぅ……。……瀬良ちゃん……、瀬良長門の幼馴染みだよ。瀬良ちゃんが六歳の頃からの……」
「瀬良。事実か?」
「……まあね。今更何だよ」
「何って、瀬良ちゃんが名坂にいるって聞いたから、ボクも名高に来たんだよ!」
長門は呆れたように深く長い溜め息をついた。
「嫌われたくなきゃついてくんな。帰れ」
そう言い放たれた初瀬は、動揺したように立ち止まり、それからついてこなくなった。
初瀬を見ようともしないその姿に、いつもとは全く違う冷たさを感じながら、赤城たちも長門に続く。

「せ……瀬良くん。あんな言い方しなくても……」
「何?」
「何でもない……」
結局一同は寄り道せずに、真っ直ぐと支部へと帰った。

一同の背を呆然と見送った初瀬は、思い出したようにポケットからスマートフォンを取り出す。
「……朝比奈です。……はい、ごめんなさい。すぐに帰ります」
コールした先に震える声で手短にそう告げると、踵を返して来た道を戻って行った。

「……、……兄さん」




□名坂支部 医務棟 地下

 リノリウムの廊下をブーツのハイヒールが叩く。
 その足音は非常に軽やかで、楽しげなリズムを刻んでいる。
 ハーフアップのプラチナブロンドを靡かせて、白い軍服に身を包んだ一人の青年が今にも歌い出しそうな、心待ちにする人を迎えに行くかのようだ。
 その手には、カバーの掛けられたトレイが乗っている。

 ルイスの歩いていく廊下の突き当たりには、銀色の大きな隔離扉が鎮座している。
 巨大なそれの前に立ち、隔離扉の脇に設けられた五十センチ四方ほどの小さな扉を開く。
 中は二重構造になっており、扉を開けた先にも同じサイズの扉が設置されている。感染防止のため、片方の扉を閉めなければもう一方の扉はロックがかかり、開けない仕組みになっていた。
 その小さな扉を、部屋の内側から激しく叩く音と、扉越しにくぐもった声がした。
「出して……ここから出してください! お願いですから!」
 扉を叩く手は、ロックを無理矢理開けようと何度も乱暴に取っ手を引く。
「ふふっ、それはできませんねぇ。ご飯はちゃんと食べてくださいよぉ?」
「どうして、どうしてこんな真似……!」
 受け渡しスペースに置かれた食事に反応するでもなく扉の向こうで半狂乱状態にある部屋の主を扉の小窓からうっとりと眺めながら、ルイスはその顔に嗜虐的な笑みを張り付けた。
「僕の舞台、これからイイトコロなんですよぉ。貴方にはまだまだそこで大人しく騒いでいてもらわないといけません。ふふっ、邪魔しないでくださいね……?」


□名坂支部 正門

 正門前に差し掛かった時、長門たちの姿を見た守衛が走り出てきて、敬礼した。
「お疲れ様です。渋谷司令官より、この後展開する作戦のブリーフィングを実施するため、会議室に集合せよとのことです」
「ブリーフィング?」
「大まかな説明のことだ。いつもなら大和さん達や諜報部隊の得た情報が幹部らに共有される場合が主で、俺達実戦部隊も呼ばれるのは珍しい」
 守衛の口調からただならぬことが始まろうとしている気配を感じた赤城の隣で、時雨が答える。
「基本的に、ブリーフィングで情報を共有し、それからその情報を整理して作戦を立案する。その後に行われる作戦概要説明を俺達は受けている。過程をすっ飛ばすということは……早期に作戦展開をするつもりだろう」
「大和も居ないし、ルイスが立案まで一気に相談したんじゃないかな。何か、大仕事の予感がする」
 遊園地に行く計画を告げられた子供のような無邪気さで、長門は先頭を切ってさっさと歩いていった。


□名坂支部 本館 会議室

「皆さんお揃いですか~?」
 のんびりと大型モニターを準備していたルイスは、長門たちが入ってきたことを確認するとにっこりと微笑んで、座るよう促した。
 中央に腰掛ける武蔵は相変わらず幾分か疲れた様子で、ペットボトルの水を飲んでいる。今日はいつもの外套を羽織らずに軍服姿だ。
「ブリーフィングって長さじゃ無さそうだけどな」
 椅子に気だるげに腰かける日向は、目の前の長机に置かれたタブレットの画面を指先でつつくように弄んでいる。なにやら操作すると、モニターに画像が映った。
「そうですねぇ、せっかくですし一気に畳み掛けてしまおうかなと。あ、日向さん~、フライングですよぉ」
「ああ、悪ィ。焦らされんのは得意じゃねェんだ」

 一同が着席したのを確認すると、ルイスはモニターの前で恭しく礼をした。
「さて。本題に入る前に、まずはこちらを観ていただきましょうか」
 モニターの動画が再生される。

『誰も悲しまない、苦しまない世界のために』
 そんな女性ナレーションに合わせて、さまざまな人種、年齢、背格好の人物の写真が映し出された。
『疾病の無い世界は、すぐそこです』
 病院の診察室のような場所で、レントゲンを指す医師と喜ぶ患者の姿。
『がんが消えたの。あの痛みが嘘のよう』
『余命宣告が撤回されました。もう一度海に行きたいです』
『肌のくすみとも無縁。肌が勝手につやつやになるんだよ』
 初老の女性や幼児、人気若手俳優が次々と感想を口にする。
『細胞の作用をコントロール。病巣を貪食し、いつまでも生き生きした身体へ』
 何かをその細胞内に取り込んでいく顕微鏡像に切り替わる。
『人類の新たなる進化段階を創る』
『 EA production 』

「……はい。こんな感じですねぇ」
「EA production……。EAエア機関か」
「何コレ?」
 頬杖をついて眺めていた長門は、やはり動画の面白味のなさに退屈そうにしていたる。
「コマーシャルしてるやつですよね?」
 赤城にルイスは笑顔で頷いた。
「ええ、その通り。実はこれ、小鳥遊製薬の公式動画チャンネルでも広告配信されてるものなんですよぉ」
「広告配信?」
 EA機関が広告料に該当しているものを小鳥遊製薬に支払って、これを広告として意図的に表示させているのではないか。それがルイスらの抱いた疑惑のようだ。
「今日、赤城さんたちは緑地公園にも行かれてたんですっけ。楽しめましたか?」
「えっ……ああ、はい。ヒーローショーを観てきました」
 自分たちが遊んでいる間も、ルイス達は仕事をしていたのだと思うと赤城には少し気が引けたが、ルイスは望み通りの答えが得られたのが嬉しいのか小さく手を叩いた。
「えぇ、それです。EA機関は子供をターゲットにする訴求を始めたんです」
「んぁ。アークレンジャーのこと? 俺今日やってきたよ」
「アンセラ……いえ、『キラーズ』という悪を倒すヒーロー。実際に変身できる、というコンセプトで、子供たちから絶大な人気を得ています」
 モニターに、アークレンジャーのコンセプトアートが表示される。
「機関の連中は、感染に打ち勝つ『ワクチン』を打つっつって昔から言ってるからな。騙された親も、子供にもコードファクターの耐性がつくんならって喜んで参加させちまうんだよ」
 日向はうんざりした様子で背凭れに背を預けた。
「変身って……まさか」
「はい。時雨さんたちも目の前で見ましたよね? 子供が『変身』する瞬間」
「……!」
 思わず息を呑む赤城たちの反応に満足しているらしいルイスに、武蔵がようやく口を開く。
「御託が長い。さっさと本題を話してやれ」
「わ。ごめんなさい☆」
 悪戯っぽく小さく舌を見せたルイスは、肩を竦めてからモニターに表のデータを映した。
「子供っていうのはですね、体重あたりのエネルギー消費量が大きいんです。成長しないといけませんからね。個人差こそありますが、成人の倍以上のエネルギーを消費しています。つまり、」
 発症時の急激なエネルギー消費に身体が耐えられる。
「……車に例えるなら、アクセル踏み込んだ時に加速できる馬力が違ェんだ。成人だとコードファクターが消費するエネルギー量に身体が耐えきれず、想定外の発症あるいは母体が崩壊し発症不成立になる場合がある。だがガキの体なら、ようは倍以上の加速ができるようなもんだ。踏み込んでもまだ余裕があるから、一気にエネルギー消費する発症時にも母体が耐えられる」
 日向の補足に、理解したのかしていないのか長門はふーんと頷いて、伸びをした。
「今回のS部隊への任務は、その実験施設へ乗り込んで子供らを解放すること」
「機関に直接喧嘩を売るとは……随分と大掛かりだな。中央からの支援は?」
「中央が当てになる連中なら俺はこんな仕事してねェ。ありゃ利権の塊だ。看板こそTEARSだが、実態は機関の息がどこまでかかってるのか未知数だ。S部隊に並べるような期待はできん」
 武蔵は厳めしい顔に苦さを滲ませながら吐き捨て、席を立つ。
「……こいつは先制攻撃だ。連中に目にもの見せるつもりで派手にやってやれ」
 背凭れにだらんと背を預けて反り返る長門の頭をわしわしと撫でた。武蔵に撫でられた長門は、笑顔でその手を掴もうとしたがするりと抜けられた。
「機関に施設や資金の提供をしている一派が小鳥遊にある。後処理は大和にさせる。……あの野郎、泣くまでこき使ってやる」
 不吉な言葉を残しながら会議室を後にする武蔵。その背を見送ってから、ルイスは画面を見取り図に切り替えた。
「じゃ、始めましょうか。ブリーフィング☆」
「まだ本題じゃなかったのかよ!?」


□高速道路上 キャンプ車内

 名坂を出立して、どれほど走っただろうか。深夜二時過ぎを示している車内の時計を眺める時雨がふと呟いた。
「丑三つ時だな」
「牛?」
 弾丸をマガジンに弾を籠め終えた長門は、今日は時雨と同じ支給戦闘服に身を包んでいる。各部のホルスターに対応するマガジンを収めていた。
 作戦説明を終え、翌日深夜の突入に向けて準備をしていた際、名坂市の児童養護施設に不審なトラックが到着したとの報を受け、予定を前倒しにして緊急出撃した。案の定トラックは子供を載せて走り始め、現在はその車両を密かに追尾中だ。
「……瀬良がその服を着るの、久し振りに見たな。普段はジャージばかりだろう」
「そりゃもう、ジャージとこの服とじゃ持てる弾の量が違うからさ。たけぞうも暴れていいっつってたし、気合い入るっしょ?」
 陽気に胸を張る長門に、時雨は静かに問いかけた。
「……それだけじゃないだろう」
「……」
「……」
 車内に、暫し沈黙が流れる。やがて、長門が静かに口を開いた。
「……親が発症しただの喰われただので孤児になった子も少なくない。寂しさにつけこんで、利用するだけ利用して、……用済みになったら捨てるのが、腹立つだけ」
「……」
 時雨は目の前の少年がどのような過去を辿ってきたのかを知らない。自分の過去に決着をつけることで精一杯だったが、長門もまた痛むまま消せない傷を抱えている。そう思い至ると、それ以上掛ける言葉を持たなかった。
 次の瞬間、パンという乾いた破裂音が小さく響いた。
「!?」
「伏せろ!」
 二人は咄嗟に身構える。長門はそれが銃声であることを直感したのか、時雨の後頭部を無理矢理掴んで床に這う姿勢を取らせた。
『追尾がばれました、応戦をお願いします!』
 車両の前方から、ガラス越しに運転手の声が聞こえる。フロントガラスは防弾仕様のため、車両への被害は大きくなさそうだ。
「OK, 瀬良、応戦する!」
『管制、了解しました~☆』
 運転手にも届くよう大きな声でにインカムに告げながら、長門はスライドの窓を開いて前方を直接視認する。
 窓から敢えて長門が身を乗り出し銃を構えると、トラックの後ろを走っていた黒い乗用車の後部座席にも銃を持った男が銃口を見せた。
 長門が車内に長身を戻すと同時に、銃声が3回響く。
「当たるかよ、ヘタクソ!」
 銃声が途切れると同時に長門は再び車窓から銃口を突き出し、ドンと重い音がひとつ響いた。
「やーりぃ、ヘッドショット! 今日も隊長絶好調!」
 護衛の車は1台では無いようで、暫くするとまた銃口が覗く。それらひとつひとつに返される弾丸は、吸い込まれるように射撃主を沈めた。
「ちッ……」
 車のタイヤや開いた窓から運転手を撃てば相手の動きは止められるが、高速道路上であり他の一般車両に被害が及ぶ。敵に銃がどれほどあるのか読めない今、不用意に弾丸を消費することも避けたい。
「……時雨、出れるか?」
「勿論」
 長門の懸念は、時雨にとっても尤もだと思われた。
『前方、車両上に人影あり。……来ます!』
 運転手に言われて前を見ると、トラックの荷台上に人影がある。大振りの刃物のようなものを持っており、あれでキャンプ車を襲われると不利だ。
「……萩原時雨、出るぞ!」
『管制、了解です☆』

 トラックにキャンプ車が横付けし、その壁に黒い影が飛び移る。黒い影はじきにトラックの屋根へと上がってきた。
「……ん」
 時雨を一瞥するも、狙いはキャンプ車らしく飛び乗ろうとする。踏み切ろうとするその足を一閃すると、それはひらりと跳んでかわした。
「ジャマしないで貰える? 忙しいんだけど」
「……悪いな。忙しいのはお互い様だ」
 刀を構える時雨に、厚手の白いフード姿の人影はその袖から伸びる大型のナイフを突きつけた。
「危ないよ。こんなとこで暴れたら、さッ!」
 斬りかかってくる横凪ぎを屈んでかわし、無防備な横腹に切っ先を突くがふわりとバク転で避けられる。避けた先へ追い詰めるも、振る刀と剣がぶつかり合う。
 数度剣戟を交わし、刃と刃が打ち合う音が夜闇に溶ける。
(刃は重い。バランスさえ崩せば、あるいは……!)
「バランスを崩せば、とか思った?」
 真っ白な顔はニィ、と笑って、鍔競り合う刃を押して時雨を突き飛ばした。
「ッ!」
 咄嗟に屋根に太刀を突き立て、体勢を立て直す。
 白い男の灰色の瞳が驚愕に見開かれた瞬間、その腹を下段から斬り上げる。
「ヒヒッ……やるねぇ……!!」
 鮮血を噴く白い懐に入り込んだ時雨の脇腹に、斜め下から真っ直ぐに鈍い衝撃が貫いた。
(こいつ……アンセラ!)
 殴られた衝撃に膝をつくも、揺らぐ視界の向こうに再び近付く足が見える。
「……っの野郎……!」
 その膝に、最上の短刀を突き立てる。いくら相手がアンセラでも、人間の形態をとる関節を破壊されては再生せねば無防備だ。
「!?」
 もう片足を蹴ろうと振り上げていたため、軸足を刺されてバランスを崩した白い男はがくんとその場に崩れ落ちた。その後頭部を掴み、喉を太刀で刺し貫く。
「がはッ」
 男は血を吐きながら、それぞれ頭と太刀で手の塞がった時雨の首を掴む。
「が、ッ……」
「はは……道連れだよォ、おにいさァん……」
 コーティングされた刃により焼けた喉から、掻き消えそうな声が響く。弱々しいのは声だけで、首を掴む両手はギチギチと力を増していく。
「……!」
 気道が潰され、目の奥が痺れる。
 互いに声を発せないまま、その双眸を睨み合い続ける。白い喉に突き立てた太刀を、四半回転させる。動脈を斬り裂いたそれは血をいっそう噴出し、荷台の屋根を濡らす。
 まだだ。まだ離すな──
 コーティング刃は確かにアンセラの肉を破壊していく。焼けるような感触が、柄越しに戦果を時雨へと伝えていた。

 次第に指先が痺れる。酸素を求める口から零れる唾液が、顎から首筋へと伝う。爪が食い込み、肉にじわじわと沈んでゆくさまを首に感じながら、それでも今ここでこの手を離すことはできなかった。
 互いに、先に折れた方が死ぬことを直感していた。

──俺がここで折れたら、誰が五月雨を──

 ゴォ、という突風が吹いて視界が真っ暗になった。馬乗りになっていた時雨を、トンネル突入の風圧が襲う。
「!!」
 時雨の半身は荷台へと叩きつけられた。太刀の柄だけは離さまいと掴み続けていたが、男は時雨が剥がれたのを好機にその胴に踵を叩き落とした。
「──ッッ!!」
 風圧の中で無理に酸素を求めた胸を蹴られ、時雨の身体は呼吸のすべを失う。限界状態だったその身体は、過呼吸の様相を呈した。
 滲む視界に上体を起こした白く赤い身体には、まだ太刀が繋がっている。死力を尽くして太刀を握り直し、下から突き上げた。

 *

 目が覚めた時、それはキャンプ車の中だった。
「ん。起きた?」
 時雨の顔を覗きこんだ長門は、缶のようなものを時雨から遠ざけた。ぼんやりとした視界でその缶を追うと、どうやら簡易の酸素吸入器のようだ。
「時雨、無理しすぎだって。俺が居たからいいけど」
「……敵は……」
「ちゃんと頭ブチ抜かれて死んでたよ」
「……そう、か……」
 横たわる背の感触からして、車は走っている様子はない。自分達の追尾は敵にばれている。自分が倒れたせいで、計画が狂ってしまったのだとしたら……。
「……作戦は!?」
「うぉっ、何だよ」
 飛び起きた時雨を、長門の大きな手が押さえた。
「お前さ……。トラックの上でアンセラと交戦して、動かなくなったから見に行ったら真っ青な顔で過呼吸なってたんだよ。作戦やる前にくたばってどうすんの」
「……っ、悪かった……」
「でも根性あんじゃん、俺は良いと思うよ」
「……」
「作戦は時雨次第。どう? やれそう?」
「……やらせてくれ」
 そう答えた時雨に、長門は時雨の太刀を差し出した。
「短い方まで回収する余裕は無かった。ごめん」
「構わない。……ありがとう。恩に報いさせてくれ」
 それにしても、走るトラックから人間ひとりを担いでどうやって飛び移ったのだろう。時雨は長門ほどの体格はないが、それでも六五キロはある。時雨の刀も一キロ弱あるが、長門の銃も一丁あたり同じぐらいの重さだと聞いたことはあった。
「……」
 絞められ続けた喉がまだ焼けるように痛む。絞殺されるのは御免だな、と思っていると、長門は車内のサイドポケットから誰かが溜めているらしいコンビニのおしぼりを一枚抜き取った。
「……あげる」
「!! ……わ、悪い……」
 差し出されたおしぼりを、気恥ずかしさでいっぱいになりながら受け取り、封を切った。

 時刻は午前四時半を示そうとしている。
「……随分と寝ていたらしいな、俺は……」
「そりゃ仕方ないって。誰だってああなるよ。脈が安定したから死なないとは思ったけど、呼吸はずっと苦しそうだったし。今も顔色悪いよ」
「えっ……」
「うそうそ。ちゃーんと男前だよ」
「……からかうな」
 長門によってトラックに設置された発信器で到着地は把握できたため、直接追尾から間接的な追尾に切り換えていた。発信器が示す先には、確かに山奥には不釣り合いの真っ白い大きな建物があった。
『もう一台、そちらに向かったトラックが今山をうんしょうんしょ登っています~。追尾したトラックと同じならおそらくは北西のゲートから入ると思われるので、その隙に侵入してください。対人戦闘が予想されます、お気をつけて』
「やっべ。何か特殊部隊っぽいじゃん?」
「そうだな……」
『ええ、お二方には映画の主演俳優のつもりで派手にやっちゃっていただきたいです☆』
「……何か裏があるのか?」
『うーん……強いて言うなら、そうですねぇ。たった二人にボコボコにされる悪の組織ってめちゃくちゃダサくないですか? 世間に掲げた詐りの看板を、ド派手に剥がしていただきたいんですよぉ』
 やがて、暗闇を切り裂くヘッドライトが木々の間に零れる。
「……来たぞ」
「っしゃ。……コンディション、だいたいオールグリーン。S部隊、突入を開始する」

 *

□名坂支部 管制室

 管制室で、武蔵はルイスの隣でモニターを見詰めていた。
「……始まったか」
「トンネルに入ったときはどうしようかと思いましたけどねぇ。時雨さん、やっぱり杉戸のアンセラの一件から、ちょっと変わりましたよね☆」
「男の顔になったな」
「ふふっ。小鳥遊時雨さんにも、帰ってきたらご褒美あげないと」
「……。……隔離室はどうだ」
「どうもこうも相変わらずで退屈ですよぉ。観ます? 映しましょうか?」
「いや、結構……」

 *

□????? 郊外 実験施設 試験棟

 長門たちの前には、野外と建物を隔てるひとつの扉があった。
「何?このドア。鍵穴も無いけど……人が来そうな気配もないし。壊して開ける?」
「……待ってくれ」
 時雨は、扉の傍ら、顔の高さに設置されているひとつのパネルを凝視している。
「これ……もしかしたら」
「ん。何これ?」
 時雨がその真っ黒なパネルに指を触れると、パネルに『LOOK』の黄色い文字が浮かび上がる。文字の箇所を時雨が覗くと、パネルの文字は『UNLOCK』という緑色に変わり、カチャンと解錠の音が響いた。
「えっ何で!?すげえ!」
 人のない真っ白な廊下を、作戦通りの経路で駆け抜けてゆく。
「……やはりそういうことか……。生体認証だ」
「生体認証?」
「ここでは俺は──“小鳥遊大和”なんだ」
 ぽかんとする長門に、インカムの向こうでルイスが感嘆の声をあげた。
『なるほどぉ。鞄が漁られてない理由、わかりました。向こうが欲しかったのは“小鳥遊大和の所持品”ではなく“小鳥遊大和”なんですね』
「ふーん? ……どゆこと?」
「説明は後だ。……来るぞ!」
「早起きだなぁ。目覚めの一発くれてやんよ!」

 鉢合わせたのはおそらく見廻り部隊だろう。遭遇戦にやや動揺していたが、あっけなく沈黙した。
「この間支部に来た、あの千代田という女……やけに俺の眼を見ていた」
「目?」
「ああ。虹彩認証といって、指紋のように人間の眼を鍵にする方法がある。……あの時、不用意にタブレットにも触れてしまった。恐らくは……指紋も登録されているだろう」
「すげーじゃん。小鳥遊の人間じゃん」
「……」
『そういえば時雨さんの腕、左肘の内側。刺されたような痕があったと五月雨さんに伺いましたけど』
「え?」
 ルイスに指摘され、その場で腕を捲ると、確かに左肘の親指側、浮いた血管に乗るように赤い小さな刺し傷のようなものがあった。
「……気にしていなかった。虫刺されか何かだろう?」
『それ、採血痕の可能性もあります。眠らされた時雨さんから、ホテルで採血し、それを彼女は持ち帰った』
「血なんか持って帰ってどうすんの? 生体認証に血まで使わないっしょ。痛いのに」
『……うーん、どうでしょうね。考えられる可能性としては──』

『──“小鳥遊大和”の、複製品を造ろうとしている』

 それってつまり、と長門が聞き返そうとしたと同時に、脇の大きな扉が開いて武装した部隊が飛び込んできた。
「っ……当然だが、追っ手が集まるのが早いな……!」
「探す手間が省けてちょうどいいよ。やってやろうじゃん」


□????? 管制室

 モニターに、ひとつのログが追加された。
 生体認証により、扉がアンロックされた旨を示すものだ。
「ッはは……早いじゃないか。来たね、大和……!」
 モニターの前で、霞は頬をつり上げた。徐々に解錠されていくセキュリティゲートは、実験棟へと順に道を開いていく。
 彼の指はモニターに繋がるキーボードを手早く操作する。見取り図に表示される護衛部隊が、セキュリティゲートを突破していく侵入者へとなだれ込んでいった。隣のモニターには、認証履歴の詳細が表示されている。
「虹彩認証……声紋、指紋。……間違いない。ああ、会いたかったよ、従兄にいさん……!」
 昂る感情を抑えきれないといった風に、霞はモニターを見詰めながら両腕を高らかに広げた。

「ええ。お招きいただきましたので、参りました」
 その声は不意に、すぐ背後から響いた。
 穏やかで凪いだ、ゆったりとした低い声。
「え……?」
 霞が振り返ると、そこには──
「こんばんは。いい夜ですね、小鳥遊専務」

 小鳥遊財閥、次期社長候補筆頭。

 ──小鳥遊大和が立っていた。
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