そー君観察日記

蘇良地 多美

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そー君観察日記「となりのクラスの」

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 隣のクラスのケイちゃんは
 いつもドアの隙間から
 そー君をそーっと
 覗き見しています

 話しかけたりいたしません
 ただただ
 見ていてニンマリしているだけ

 前のクラスの時もそうしてました
 きっと
 前の前のクラスの時もそうしてて
 それならば
 前の前の前のクラスの時も
 そうしている可能性は無限大


 この観察日記だってケイちゃんが
「そー君っておもちろいわよ」

 おもちろいわよ?
 おもちろいわよ?
 どうしよう
 気になってほかの言葉が入ってこない


 観察日記を書けとは
 ヒトコトも言ってないのよ
 でもね
 ケイちゃんの言葉ひとつひとつが
 脳味噌をぐるんぐるんさせてくる

「つまりね、そー君はね」
「ということはね、そー君がさ」
「っていうことなの!」

 好きなの?
 って聞いてみたら
 ケイちゃん苦虫をすりつぶした顔で
 こっちを見てきた

 あら?
 私、間違えた?

 その後もたくさん説明されたけど
 ケイちゃんの気持ち
 わっかんないわ
 決して気を抜いて聞いたわけじゃないけど
 わっかんないわ
 ケイちゃんの言うことも
 そー君の存在も
 わっかんないわ

 だからなの
 観察日記にしたのは

 わっかんないけど
 ただただ観察してみようって


 ケイちゃんは
 ただただ見てるだけでなく
 そー君を
 ペチリペチリとします
 話しかけず
 ただ、ただ
 ペチリペチリ

 そー君はまんざらでもなさそう
 かまわれてるのでうれしそう


 私はもう一度聞いてみる
 好きなの?
 ケイちゃんはもう一度
 苦虫をすりつぶした


 そしてケイちゃんは
 今日もドアの隙間から
 そー君をそーっと
 覗き見しています
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