天は百万分の二物しか与えなかった

木mori

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第一章

第十七部分

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季節は少し移って桜が満開の頃に変わっていた。家が近い鰯司、湖線、光葉は中学生の時と同じように、並んで登校していた。真ん中が鰯司で、左右は一日交代という暗黙のルールが、昔からあった。
肩に小さな鯱がついた金色のブレザーは、昇り竜を思わせる。制服には縦に、2本の黒いストライプが施されており、竜の髭を連想させる。胸には、竜の校章があつられてある。
男子は黒いズボン、女子は白いタイトなスカート。膝上30センチと短いが湖線、光葉ともに引き締まった血色のいい脚によくマッチしている。
入学式に向かう3人。薔薇色の高校生活に期待を膨らませるのがフツーであるが、3人は一様に眉間にシワを深く寄せていた。
「入学したら、解剖される、解剖令がコワイよ~。」
鰯司は全身を震わせていて、入学式どころではなかった。
ふたりは合格の喜びはすでに終わり、悪魔からの命令を果たすのはこれからという危機感が溢れだしていた。と思ってはいなかった。
そんな苦しい思いが錯綜する入学式。生徒会長の挨拶もまともに聴けない状態であった。
体育館で行われる入学式の最後には、トップ入学の新入生代表挨拶が行われるのが、秀龍高校での通例である。
今年は湖線、光葉が同点1位なので、ふたりで一緒に壇上に上がることが決まっていた。しかし、ふたりが上がらず、体育館がざわつき始めた。
「どうしたのかしら。」「体調が悪くて保健室に行ったのかも。」
騒ぐ生徒たちは新入生なので、湖線と光葉が誰なのかわからず、ひと騒ぎになりつつあった。
その時、ひとりの老人がステージに上がった。古びたグレーの作業服を着ており、校長は入学式の最初に挨拶しているので、校長ではない。
鰯司、湖線、光葉は下を向いており、ジイサンには関心がなかった。
「成績トップ入学のふたりは、この後、生徒会室に出頭するように。」
嗄れた声が湖線、光葉の耳に届いた。ふたりが頭を上げた時、壇上にジイサンの姿はなかった。

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