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第一章

第二十九話

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『私は子供の頃から人見知りが激しかった。


物心ついた幼稚園時代にはすでに自分から誰かに話しかけるということはなかったの。


ひとりっこで、両親は共働き。いつも私は家にひとり。


実は私の両親もそんな性格で、友達が少ないことは何となく気付いていた。


家に誰か来るということがほとんどなかったし、年賀状なんかも少なかった。


年賀状が少ないとわかったのは、たまたま隣の家にはたくさん来ていたから。


私が人見知りするのは遺伝なんだとわかった。遺伝という言葉は知らなかったけど、両親に顔が似ているとかいうことを聞いているうちになんとなく理解していたわ。


そのまま小学校に入学してからも友達がいない状態が続いていた。


昼休み、給食こそ、グループで食べてはいたけれど、同級生がわいわい言いながら食べているのを横目で見ながら黙々ともくもく口を動かしていた。


あっ、いちおうこれギャグね。あははは。


私、そもそもトロいから食べるのは遅くて、喋るとみんなから乗り遅れる可能性があったから、一挙両得ね。


これは言葉の使い方が違うかな。まあいいわ。


そんな私、中学でも同じ生活。部活はいわゆる帰宅部。


他にやることもないから、勉強だけはした。だから成績はずっと良かった。


中学の勉強なんて、真面目に予習復習しておけば、ある程度の結果は残せるわよね。


勉強ができない子はヤル気がないだけね。そうして、無事に春学に合格。


でも何かやりたいことがあるわけでなし、いうまでもなく色恋沙汰とは無縁。青春なんて、私には死語、死後にしか味わえないことだと確信していたわ。
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