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第二章

第七話

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 オレはトリガーカードを使おうとする。無論カードは由梨たちが持っているものであって、懐に入っていたりはしない。


「出でよ。カードの魔人」


 テキトーな呪文を唱えるが、何も起こらない。起こるはずもない。トリガーカードはそんなものじゃない。まさにクライシスが実現しようとしていたその時。


「もう見てられないぞ!」


大きな声が飛んだ。その発信源にはふたつの影。月がその姿を明らかにする。美緒と絵里華だ。


「美緒、こわかったよお。」


半泣きしながら抱きつく由梨。涙が収まるまでしがみついていた。いつの間に美緒と仲良くなったのか。


「助けてくれなんて言ってないわよ。助けに来るなんてビッグヘルプなんだけど。」


由梨は死ぬ間際の蝉のように美緒に張り付いたままの状態で強がりを言っている。


「そうか。ならば」


美緒は鏡を由梨に向ける。


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ~。」


 再び絶叫する由梨。こんなシチュエーションだと、鏡で幽霊である自分にビビりまくってしまう由梨。


「もう意地悪しないでよ、美緒。」


「口のきき方が違わないか。相手は畏れ多くも神であるぞ。」


「そうでした。ごめんなさい。神様、許して、助けて~。」


 ついに自分のポリシーを折り曲げた由梨。依然として美緒にへばりついたまま。
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