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第二章
第二十八話
しおりを挟むそんな中で沈黙していた万?がポツリ。
「こんな私の親は孤児院の院長先生。でも裏切られた・・・。私には家族はまったくいない。天涯孤独とは私のためにある言葉。」
美緒は万?の肩を抱いた。
「どういうことか。この神の前で語ることはできるか。」
万?は急に元気になった。いや元気を作ったように見えた。
「いいよ。まっほは大丈夫だから。美緒たんが聞きたいっていうなら話してあげるよ。減るもんじゃないし。」
万?の過去の記憶。それはこんなものだった。本人に語ってもらおう。
【まっほはアイドル。文字通りの偶像で、実態はそんな華やかなものではないよ。高校へはアイドルのお仕事をしながら通学しているんだ。奨学金をもらいながら頑張っている傍ら、アイドルで稼いだお金は生活費、学費を除いて、孤児院にお金を入れてるんだ。まっほは孤児院出身だから。今は自分でお金を稼いでいるので、独り暮らしをしているんだけどね。自分は貧しくないレベルでの生活。
まっほの親は孤児院の院長先生。眼鏡おばさんだよ。当然本当の親じゃない。親のことは知らない。あっ、これは正確じゃないね。知っていることもある。親がまっほにしてくれた唯一のこと。それは『まっほをコインロッカーに捨ててくれたこと』。『くれた』というのは違和感があるかもしれないね。でもまっほは感謝しているよ。どうしてかって?そのお蔭で今の私、つまり『まっほ』があるからよ。『まっほ』というのは、当然アイドルとしての在り方ね。初めは言いづらかった。私って、そんなキャラじゃないからね。でも仕事として割り切っているうちにこれが自分の一人称になっちゃった。親についてはそれだけしかわからない。それ以上のことを知ろうとも思わない。まっほの親は院長先生だからね。院長先生はまっほを警察から預かった日を誕生日にしてくれた。7月14日。フランス革命のバスティーユ牢獄襲撃の日なんだね。まっほらしいけど。ははは。
今の名前、美村万?なんだけど、苗字は院長先生の苗字をそのままもらったよ。下の名前は、院長先生が、孤児で自分の力でいくらでも人生歩めるようにとの願いを込めて万?と名付けたのね。いい名前ですごく気に入ってるよ。アイドルになってからは、『まっほ』というようになった。これは事務所の指導ね。アイドルらしさって名前から入るものなのね。でも名前の間に『っ』を入れたのは初めてではなかったんだよ。それを次に話するね。
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