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第四章

第十九話

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確かに桃羅は夜中にオレの部屋に来て、朝にはいなくなるから美緒たちは顔をよく見たことがなかった。しかし、夜なのに桃羅には美緒たちの姿が見えている?

「こちらが不審者に対して自己紹介したんだからそちらもちゃんと言ってくれるかな。前からいるのは知ってたけど、特に危害を加える様子がなかったから無視してただけなんだけど。お兄ちゃんがいなくなったら話は別よ。」
 桃羅は突然の出来事に対しても冷静に対応している。女子が四人に、慇懃な執事が相手なので、比較的落ち着いた行動をとったようだ。

「我らは霊界から来た生徒会メンバーだ。そこにいるのは執事・李茶土だ。」

「ちょっと待ってよ。いきなり、霊界って何のことよ。」

「あなた霊界を知らないの?ダメダメガールだわ。都と一緒ね。」
 由梨がいきなり毒づいてきた。いや、いつもの通りか。

「何よ、この女。桃の旦那さんに何てこと言うのよ。」

「旦那って、あんたたち兄妹じゃないの?」

「そうだけど、将来を誓った仲なの。桃の16歳の誕生日が結婚式なのよ。」

「なにをほざいてるのかしら。そのポジションはセレブが・・・」

「何?」

「いや何でもないわ。そんなことより、その都は今ここにいるんだけど。」
 由梨は自慢の?ネコミミを指差した。

「えっ、何それ?仮にお兄ちゃんがだらしなかったとしても、そんな無機物に変身するのかしら?確かに昨日から家に帰ってなくて心配してたんだけど。」

「それはひどいじゃないか。桃羅。」

「桃羅って、初対面でいきなり人の名前を呼び捨てにするんじゃないよ。」
 桃羅は由梨に向かって反駁の声をぶつける。

((それにしてもよく似てはりますなあ。))
「人形が喋ってる!」
 桃羅はぽかーんとしている。両腕をだらりとしている。

「ほ~んと都たんにそっくり。つんつん。」
 万步はノーガードの桃羅の胸をつついた。

「いや~ん。」

「ホンモノだね。なかなかの弾力だよ。」

「いきなり、何するのよ。いくら女子同士とはいえ、許せないわよ。」

((そう怒らんといて。都はんが最初は女装だったので、万步はんが念のために確認したんどす。))
 桃羅は両手で胸を隠した。

「そんなに見ないでよ。いやらしい。」

「うぶだな。かわいいかも。」
 美緒はお面を被ってはいないので、微妙な笑顔を晒した。
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