3秒限界の魔法でホントに大丈夫ですか?

木mori

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第一章

第一部分

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二階建ての中規模の新しい家。半月の光がゆるく差し込む二階の6畳部屋。
机について、17点と赤く書かれたテストをにらめっこしている緑色ショートカットの中学生男子。
やや丸い顔に、純朴そうな大きめの目。男子にしては、細い眉毛が人懐っこい感じを与える一方、気弱な雰囲気を見せている。

「あ~あ。勉強頑張ったつもりなんだけど、小テストはいい点取れなかったなあ。これから中間テストもあるのにどうしよう。こんな時、神様がいるなら、勉強教えくれるのかな?でもどうせ教えてもらうなら、委員長がいいなあ。委員長、キレイで、スタイルよくて、なんでもできて、すごく優しいし。ボクの彼女とかに・・・。いや、そんな不釣り合いなこと、有り得ないよ。逆上がりすらできない運動オンチを兼務しているボクなんかに。」

少年はテストを机に置いてかぶりを振った。

「いやいや、そんなのボクはこれから成長するんだ。中3だけど、身長だって160センチ切ってるけど、きっとまだまだ大きくなるんだ、頑張るぞ!」

ガラガラと窓が開いて、白い羽付きの天使がズカズカと無遠慮に入ってきた。

「アタシは今テスト中なの。あんたの人生をダメにしに来たわ!!」

「えっ?今なんて言ったんですか?それにこんなところから、いったい誰ですか?」

「誰でもいいわ。馬の骨にもならないプチ細胞で構成された中学生、木賀世和人(きがよかずと)なんかに名乗る名前はないわ。」

「ド、ドロボー!しかもボクの名前を知ってるなんて、ストーカー兼任泥棒?」

「ちょっと、あんたねえ。泥棒ってのは、モノを盗む悪い人間のことを指すんでしょ。アタシは何も盗ってないわよ。でも『ボクのハートを盗んだじゃないか?』なんて、テンプレクサいセリフを吐き出す口を持ってるなら、丸めた古紙で塞ぐからね。」

「ボク、何も言ってないし、あなたがオウンゴールしてるだけなんじゃ?」

「う、うるさいわね。14歳のくせに生意気言うんじゃないわよ。アタシはもう15であんたよりずっと年上なんだからねっ。」

「ボク、来月15なんだけど、ひょっとしてタメ?」

「そ、そうとも言うけど、アタシとあんたでは、身分が天と地ほど違うのよ。」

 和人は天使の薄い胸に視線を当ててしまった。フツーと違うものに目が行くのは、自然の摂理である。

「あんた、どこ見てるのよ。」

 慌てて腕で胸を隠す天使。

「い、いや別にどこも見てないよ。それより、さっきから言ってる意味がわからないけど、背中に羽つけてるし、ひょっとして、コスプレですか?」

「これのどこがコスプレよ!ちょっと触ってみなさいよ。」

世和人は恐る恐る羽を触ってみた。

「生暖かい!体温があるみたい。電熱を通してあるの?」

「ンなわけないでしょ。きちんと羽があるんだから、天使よ、天使の咲良=カエルよ。それも将来大天使になることが約束された夢を、見たことがあるんだから、跪いて崇めなさいよ。」

「なんだか、コスプレ可能性大、を有力説に据えたくなるけど。」

「トコトン失礼な中学生だわ。もう今すぐにでも登録抹消したいぐらいだわ。」

「登録抹消って、どういうこと?」

「どうでもいいわ。この世から消え去ってしまうこととか、思ってしまうならそれでもいいわ。」

「それはご遠慮するけど。」

「あんたに遠慮とか、人生選択の余地は不存在の証明よ。とにかく、アタシが天使であるという現実を厳粛に受け止めなさいよ。それはすぐに理解できるはずだから。」

「すぐにわかる?」

「そうよ。それまでは、これからアタシが言うことを、耳をかっぽじいて、なんてレベルじゃなく、ドリルで道路に穴を開けるように聞きなさいよ!あんたはスーパーダメ人間なのよ。これから成長なんてする可能性はナノレベルで無いんだから、覚悟しなさいよ!」

「ボ、ボクだって、ダメ人間だっていう自覚はあるけど、でもまだ中3でこれから頑張れば、多少は明るい未来があるんじゃないかと思ったり?」

 和人は下を向いたまま、弱々しく反論した。

「それがいけないのよ。その石ころの意思が災いをもたらすんだから。」

「今はダメだけど、可能性っゼロじゃないということはないのかなあ?」

「諦めが悪いコメントねえ。あんたは、モブになりなさい。あんたがモブにならない、つまり成長してしまうと、この世界で悪魔のえさになってしまうからよ。」

「可能性はどれだけなの?」

「000000001パーセントよ。」

「そんなの、ならないと一緒じゃん。」

「何をしてもダメ。特にエッチなことは大禁止よ!」

「エ、エッチなことなんてしてないけど。」

「そう。それならいいわ。次は勉強禁止よ!」

「それは困るよ。」

「運動も禁止するわよ!」

「それも困るなあ。」

咲良が部屋を見回すと、長い黒髪の美人な女子生徒の写真タテがあった。

「これからあんたを狙って、魔界から悪魔がやってくるわ。悪魔はあんたを食うのよ、それも成長したあんたをね。悪魔には未来がある人間は最高のエサになるらしいのよ。」

「食べられる?そんなバカな。」

「やっぱりモブ人間は甘々ねえ。そんなこともわからないのね。アタシも見たことないけど、アタマからバリバリとやられるって話なのよ。スゴく痛そうだけど、そんな風にね。」

「うわあああ~!」

中学生はけたたましく悲鳴を上げた。

「ほらねって、で、出たわね!」

ライオンに似た茶色の一角獣が中学生の左腕に噛みついている。

「痛いよ!た、助けて~!」

和人の左腕の肘から先が半透明になっている。

「ほら、喰われたでしょ。」

「ボクの腕が消えかかってるよ!天使ならなんとかしてよ!」

「ホント、失礼なモブだわ。天使に救いを求めるのに、言い方ってものがあるでしょ。」

「わかったよ!お願いです、助けてください、天使様!」

「頼み方としては30点ね。使い捨てのモブだから許してあげるわ。絶対魔法、術式・時、制限・オフ。対象・フリー、範囲・フリー、時間・フリー。発動!」

『ERROR』

 どこからともなく、機械音声のようなものが聞こえてきた。

「やっぱりダメだわ。相対魔法、術式・時、制限・オン。対象・人間1名、範囲・1メートル、時間・3秒、到級1。発動!あんたはアタマの中で3秒数えるのよ!」

咲良の言葉の直後、『ぎゅるるる~!』という感覚とともに一瞬空間が七色に大きく歪んだように見えた。

「1,2,3秒。数えたよ。左腕は確かに復活してる。でも違和感があるような。」

 3秒前とは、一角獣が和人の腕にかみついた瞬間であった。
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