3秒限界の魔法でホントに大丈夫ですか?

木mori

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第一章

第十二部分

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腑抜け状態のままで授業を受けるという、結果的に咲良の指示通りの一日を過ごした和人は帰宅した。
「あれ?リコーダーがない。朝は机の上に置いてたはずなんだけど。」
 和人はベッドの下や本棚の裏まで探したが、黄金リコーダーは見つからなかった。
 ガサガサという家探しの音は結構うるさいものである。
「お兄ちゃん、やかましいよ!何探してるんだよ?とっておきのエロ本でもなくしたの?」
低く太い声が和人の部屋の外から聞こえてきた。
「違うよ。ちょっと見つからないものがあってさ。」
和人はドアのそばに立ち、ドア越に声を出した。
「一緒に探してほしいってこと?あ~っ!それって、みあを部屋に入れて、不純妹交遊しようって魂胆じゃないの?そんな交遊、頼まれたってやんないからね!」
「そんな交遊知るか。それに一緒に探してくれとか、頼んでないし。」
「そうやってツンツンするのが、ツンデレ兄の特徴だね。」
「これのどこがツンデレだ?ゼッタイ、ボクの部屋に入るなよ。いちいちうるさいなあ、実亜里は。」
和人はドアから離れて椅子に座ろうとした。
「この部屋に入るの、久しぶりだねえ。」
和人仕様の椅子がギシギシと悲鳴を上げている。完全に椅子からはみ出している大きなオシリ。体脂肪率200%の太った体。黒髪を力士のようにまとめており、特注品と思われるような大面積の黄色いエプロンを身に付けている女子。大きな顔に、絵に描いたような不思議な瞳、鼻と口もビッグサイズ。美少女と正反対の概念を適用するしかない醜女で、優男の和人とは似ても似つかない。
「実亜里、また太ったな。女の子なんだから、少しは体のことも考えないと。」
「あ~っ。お兄ちゃん、みあのカラダ要求宣言、公布した!みあの貞操、超絶大ピンチ!」
「どこに要求事項が存在するんだ!第一、ボクはすらっとしてるけど、しっかり胸のある女子が好きなんだ!」
「え~っ!この期に及んで女の子指名するとか、どこのキャバクラだよ?」
「そんなところ、中学生が知るか!」
「ははん。お兄ちゃん、好きな女子がいるんだね?ヒヒヒ。」
 大きな頬を緩ませると、ブキミという言葉しか浮かばない。
「もう、ここから出ろ!それから中2という年頃なんだから、ダイエットしろよ。」
「ひどい!もう出て行くよ。お兄ちゃんのことなんか知らないよ!・・とか言わないよ。たくさん知ってるし。特に思春期男子カテゴリーはね。」
「うるさいよ!」
(これはお兄ちゃんのためなんだから。)
実亜里はポツリとこぼして、階段をゆっくりと降りていった。

結局、黄金リコーダーは見つからなかったが、和人は翌日登校した。
座席に着くと、熱い視線を感じた和人。名詩魅のいつものそれであった。
「かずちゃん、今日、黄金リコーダーなし。∴誉めてあげる。」
名詩魅は横長目をやや縦にしており、ご機嫌な様子である。
そのせいか、黄金リコーダーから出てきた咲良のことを聞かれることがなく、ホッとする和人であった。
「まぶしい!」
突然、和人の目を奪う強烈なオーラ。
「みなさん、ごきげんよう。」
委員長が入室してきたのである。
「いつもにも増して、今日は輝いてるなあ。」
和人の視線は委員長に釘付けで、委員長の歩く方向をストーカー目線でフォローしていた。
「ムカムカムカ!」
ついさっきまでご機嫌モードだった名詩魅は、またもメラメラのスーパーサイヤ人へ移行していた。
「あれは!」
和人には、そのメラメラすら打ち破る発見があった。
委員長は、金色に輝くリコーダーを手にしていたのである。
和人は、教室という狭い空間にもかかわらず、委員長の元にダッシュした。さらにこともあろうに、金色リコーダーを奪い取り、いきなり歌口に自分の口をつけて、思いっきり吹いた!
『ぴーひょろろ♪』
 教室中にすっとぼけたサウンドが響き渡った。
始業前でざわついていたクラスの空気が完璧に凝固した。
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