73 / 80
第二章
第三十七話
しおりを挟む
『抜け殻を出した理由はどうあれ、今会話しているアイラはニセモノで、向こうのアミラが本当のアイラじゃん!そ、そんな~、うわ~ん』
「木憂華が気にすることじゃない。それより、そこの彼女は青い歯を探しているんだろう。それはこれだな。」
アイラが手にしているのは青い歯であった。
「そ、それだ!でもこの前は、そこにいるアミラが付けていたんじゃ?」
ハナゴンは両手を胸の前で握りしめている。荒くれたハナゴンには似合わないポーズである。
「さっき一本だけ抜いたんだ。これで勘弁してくれないか。」
「これは偽物だな。」
「どうしてわかった?」
「ヤマンバ族の勘だよ。野生に生きている俺たちは、倒れている動物が死んでるか、生きてるかを即座に判別しないと、命を落とすことにもなりかねない。歯だってそれは同じ。生きている歯と死んでる歯はすぐわかる。ましてや、生物なのか、作り物なのかもすぐにわかる。コイツはただの工作物だ。」
「なるほど、ヤマンバ族か。オペの技術は初心者みたいだが、野生の勘は警戒すべきだな。」
「本物の青い歯をよこせよ。俺にはどうしてもそれが必要なんだ。」
「それは無理な相談だな。歯がなくなることがどういうことか、貴様は知ってるだろう。私は抜け殻を守るために、ここにいる。青い歯を狙う輩は他にもいる。だから、抜け殻だけをこうして森の中で保護している。だが抜け殻には血液という栄養補給が必要だ。血液が欠乏すると制御が効かなくなり、暴れてしまう。」
「抜け殻アミラがこの前俺たちを襲ったのはそのせいか。」
「そういうことだ。だから、適当に魔法歯医者を捕まえて、エサにしている。魔法歯医者の血液はオペで血液を飛ばしているから、常に新鮮だからな。」
「俺には他人の記憶や人生がどうなろうと関係ない。母さんを助けるためであれば、鬼にでもなってやる。」
『もともとヤマンバじゃん。鬼よりコワいじゃん。』
木憂華が会話に横やりを入れてきた。
「うるさい!鬼とヤマンバは住んでる次元が違うだろ!ヤマンバは生(せい)の世界にいる者で、死後の世界に行って初めて鬼になるんだ!」
『ヤマンバが死んだら鬼になるとは初めて知ったじゃん。』
「そんなことはどうでもいい。こうなったら実力行使だ。ガキッ、ガキッ、ガキッ、ガキッ、ガキッ。」
『5ガキッ』をやったハナゴンの大ナタからは、夥しい量の煙が出ている。
「これは思ったよりもやるようだな。その煙、狼女の煤塵よりは強力そうだな。遠隔操作の抜け殻では太刀打ちできなかったかもな。」
「木憂華が気にすることじゃない。それより、そこの彼女は青い歯を探しているんだろう。それはこれだな。」
アイラが手にしているのは青い歯であった。
「そ、それだ!でもこの前は、そこにいるアミラが付けていたんじゃ?」
ハナゴンは両手を胸の前で握りしめている。荒くれたハナゴンには似合わないポーズである。
「さっき一本だけ抜いたんだ。これで勘弁してくれないか。」
「これは偽物だな。」
「どうしてわかった?」
「ヤマンバ族の勘だよ。野生に生きている俺たちは、倒れている動物が死んでるか、生きてるかを即座に判別しないと、命を落とすことにもなりかねない。歯だってそれは同じ。生きている歯と死んでる歯はすぐわかる。ましてや、生物なのか、作り物なのかもすぐにわかる。コイツはただの工作物だ。」
「なるほど、ヤマンバ族か。オペの技術は初心者みたいだが、野生の勘は警戒すべきだな。」
「本物の青い歯をよこせよ。俺にはどうしてもそれが必要なんだ。」
「それは無理な相談だな。歯がなくなることがどういうことか、貴様は知ってるだろう。私は抜け殻を守るために、ここにいる。青い歯を狙う輩は他にもいる。だから、抜け殻だけをこうして森の中で保護している。だが抜け殻には血液という栄養補給が必要だ。血液が欠乏すると制御が効かなくなり、暴れてしまう。」
「抜け殻アミラがこの前俺たちを襲ったのはそのせいか。」
「そういうことだ。だから、適当に魔法歯医者を捕まえて、エサにしている。魔法歯医者の血液はオペで血液を飛ばしているから、常に新鮮だからな。」
「俺には他人の記憶や人生がどうなろうと関係ない。母さんを助けるためであれば、鬼にでもなってやる。」
『もともとヤマンバじゃん。鬼よりコワいじゃん。』
木憂華が会話に横やりを入れてきた。
「うるさい!鬼とヤマンバは住んでる次元が違うだろ!ヤマンバは生(せい)の世界にいる者で、死後の世界に行って初めて鬼になるんだ!」
『ヤマンバが死んだら鬼になるとは初めて知ったじゃん。』
「そんなことはどうでもいい。こうなったら実力行使だ。ガキッ、ガキッ、ガキッ、ガキッ、ガキッ。」
『5ガキッ』をやったハナゴンの大ナタからは、夥しい量の煙が出ている。
「これは思ったよりもやるようだな。その煙、狼女の煤塵よりは強力そうだな。遠隔操作の抜け殻では太刀打ちできなかったかもな。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる