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第一章
第三話
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「治療対象は見かけませんが、いったいどこにいったのでしょう?」
「スゴい!助けてくれてありがとう。あたしは、山場花子。ヤマンバ族だよ。あなたはいったいだれ?」
「ダメダメの田舎娘だと思ったら、ちゃんと自分から名乗ることは、おできになるのね。とりあえずいいでしょう。ワタクシは、牙狼院絵梨奈(がろういんえりな)と申します。見ての通りの狼族出身です。そして、リリーズデンタル学園生徒ですわ。」
「牙狼院さん、ありがとう。実はあたしもその学校に転入するので、ここに来たんだよ。」
「あなたがリリーズデンタル学園に?ちょっと信じがたいですわ。」
「そんな、堅いこと言わないでよ。それより、さっきのクサくて灰色のヤツ、いったいなんなんだよ?」
「山場さん。あなた、そんなことも知らないで転入したんですの?ますます信じられませんわ。対処方法を何も知らないということはわかりましたが。先ほどの化け物は、歯垢獣と言います。この車両に他に乗客が見当たらないところをみると、ひょっとして、山場さん、あなた、虫歯ではありませんか?」
「虫歯?そうだよ。この前歯が痛くって。」
指で唇を広げて、黒ずんだ前歯を見せた花子。出血で歯茎の根元が赤くなっている。
「こ、これはヒドいですわ。」
「でも今なんだか、多少痛みが収まったみたい。」
「それはそうでしょう。その痛みの原因がさっき現れた歯垢獣なのですから。」
「まっさかあ?あたしの口から化け物、いや歯垢獣って言うんだっけ、それが出てきたっていうの?だったら、あたしが歯垢獣の生みの親ってこと?止めてよ。あたしの将来の夢は、キュートなお嫁さんになって、かわいい女の子を育てて、政府の子育て支援を受けることなんだから。」
「夢と俗な現実が混合してますわ。でも真実はひとつ。山場さんは、この学園都市で魔法歯医者になるならば、イバラの道を歩むことになりますわ。」
「えばら焼肉のタレ?あれは邪道よ!タレは自家製でないと。」
「何が言いたいのかわかりかねますが、歯垢獣は悪化した虫歯から発生するのですわ。それを退治するのが、リリーズデンタル学園生徒の仕事ですの。」
「あたしから歯垢獣が出たというのはデマ認定するけど、学校の仕事、面白そう。」
「はあ?なんとまあ、お気楽脳天気低気圧ガールですこと。あら、もう学園都市に着きましたわ。」
初めて電車に乗った幼女のように、窓を見やる絵梨奈。
「あ、ホントだ。これが魔法歯医者学園都市!大きなビルがたくさんあるね。あたしの里の山とは全然違うよ。」
花子と絵梨奈は列車を降りて、駅ビルを出た。
「スゴい!助けてくれてありがとう。あたしは、山場花子。ヤマンバ族だよ。あなたはいったいだれ?」
「ダメダメの田舎娘だと思ったら、ちゃんと自分から名乗ることは、おできになるのね。とりあえずいいでしょう。ワタクシは、牙狼院絵梨奈(がろういんえりな)と申します。見ての通りの狼族出身です。そして、リリーズデンタル学園生徒ですわ。」
「牙狼院さん、ありがとう。実はあたしもその学校に転入するので、ここに来たんだよ。」
「あなたがリリーズデンタル学園に?ちょっと信じがたいですわ。」
「そんな、堅いこと言わないでよ。それより、さっきのクサくて灰色のヤツ、いったいなんなんだよ?」
「山場さん。あなた、そんなことも知らないで転入したんですの?ますます信じられませんわ。対処方法を何も知らないということはわかりましたが。先ほどの化け物は、歯垢獣と言います。この車両に他に乗客が見当たらないところをみると、ひょっとして、山場さん、あなた、虫歯ではありませんか?」
「虫歯?そうだよ。この前歯が痛くって。」
指で唇を広げて、黒ずんだ前歯を見せた花子。出血で歯茎の根元が赤くなっている。
「こ、これはヒドいですわ。」
「でも今なんだか、多少痛みが収まったみたい。」
「それはそうでしょう。その痛みの原因がさっき現れた歯垢獣なのですから。」
「まっさかあ?あたしの口から化け物、いや歯垢獣って言うんだっけ、それが出てきたっていうの?だったら、あたしが歯垢獣の生みの親ってこと?止めてよ。あたしの将来の夢は、キュートなお嫁さんになって、かわいい女の子を育てて、政府の子育て支援を受けることなんだから。」
「夢と俗な現実が混合してますわ。でも真実はひとつ。山場さんは、この学園都市で魔法歯医者になるならば、イバラの道を歩むことになりますわ。」
「えばら焼肉のタレ?あれは邪道よ!タレは自家製でないと。」
「何が言いたいのかわかりかねますが、歯垢獣は悪化した虫歯から発生するのですわ。それを退治するのが、リリーズデンタル学園生徒の仕事ですの。」
「あたしから歯垢獣が出たというのはデマ認定するけど、学校の仕事、面白そう。」
「はあ?なんとまあ、お気楽脳天気低気圧ガールですこと。あら、もう学園都市に着きましたわ。」
初めて電車に乗った幼女のように、窓を見やる絵梨奈。
「あ、ホントだ。これが魔法歯医者学園都市!大きなビルがたくさんあるね。あたしの里の山とは全然違うよ。」
花子と絵梨奈は列車を降りて、駅ビルを出た。
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