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第二章

第三十五部分

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「ほれほれ、アタシがどれだけツラい目に遭ってるか、知りなさいよ。ゴホゴホ。」
「ううう。」
超絶気弱な綱吉は、なすすべなく泣き続けるだけ。
「こんなんじゃ、足りないわ。べろべろバー!」
吉宗は波目で両手を広げて、ピエロ的なドSモードで綱吉を精神的に追い詰める。すでにネコアレルギーの範疇を逸脱していた。
「上様、ちょっとやり過ぎだよ~。」
吉宗の後ろにぴったりとくっついているH前も呆れて、吉宗へのセクハラの手が止まっている。
周りの生徒には綱吉が見えないらしく、吉宗の一人芝居に見える。綱吉の席だけが、黒い雲に包まれているように、暗くなっている。
「徳田さんは、転入後の最初の中間テスト前でパニックになっているんだわ。」と見られていた。
『ツカツカツカ』というややキツい足音を立てて、御台が綱吉の席に近づいた。
「徳田さん、ネコアレルギーが大変なんだな。アレルギーの原因はいったいどこにあるんだろうか。ここは徳本さんの席だけど、アレルギーと何か関係あるのだろうか?」
「み、御台くん!?どうしてこんな暗い場所にいるの?てか、このネコが見えるの?」
「ネコって、徳本さんがネコミミ付けてるだけじゃないか。」
御台は徳本綱世が綱吉であることを知らない。
「そ、そうかあ、ネコミミが原因だったなら、それを取っちゃえばいいのよね。へへへ。」
吉宗は口の端を鋭角に吊り上げて、肘の曲がった腕を綱吉の頭部に伸ばした。
「徳田さん、ちょっと待ってくれ。ボクに考えがある。二人とも、いや、大岡さんを含めて三人か。一緒に来てくれないか。」
「いいけど、いったいどこに行くの?」
「・・・何が起こるにゃ?コワいことだったら、もう死ぬにゃ。」
「心配いらないよ。大岡さんがよく知ってる場所だよ。」
「あたしがよく知ってる場所~?ひひひ、たら~。」
よだれがH前の口内ダムを満たしてきた。
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