特売フイギュアワゴンの中に手を入れたら、人生変わるので注意してください。

木mori

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第一章

第一話

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「こんな学校、つまらないわ。エスケープ祭りしてやるわ!」
 学校らしき建物を出て、とある駅で、とある少女が大きな声を出して、電車に乗った。乗客の迷惑そうな視線をモノともせず、優先席にどっかと腰を下ろしている。


 数分後、賑やかだが、品の悪そうな駅で電車を降りた少女。
「アタシって、どうしてアキバ駅なんかにいるんだろう。ここまでの記憶がはっきりしないのよね。」
金色の艶やかなツインテール、少し吊り気味の大きな鳶色の瞳に小さな鼻は見る者の目を引く美少女。申し訳程度の胸部が目を引かないことを割り引いても高いランクであろう。
 

 ひとりで堂々と歩く金色ツインテ女子は、オタク男子たちから向けられる好奇の卑しい視線をものともせずに、天使中央大通りを折れて、駅の方へ足を向けた。純白で縦に黒いストライプの入ったセーラー服がよく似合っている。
数十秒歩いて、駅前にある4階建てのビルを見上げた。


「さっきから何度かこの前を通ったんだけど、なぜか、このビルが気になるわ。フィギュア専門店とか、全然アタシのシュミじゃないのに、不思議ねえ。」
ビルの外壁に貼ってあるパネルでは、萌え系ミニスカ二次元女子が、作り笑みをうかべつつ、ヒルサイズ超えの絶対領域を誇示していた


「こんな店に入る人間の神経が理解できないわ。あんな絵のどこがいいのか。あれを部屋のポスターにして毎日眺めているとか、感覚が破滅してるわね。きっと、視神経から伝達された三次元情報を受け入れるキャパがなくて、そのまま停滞させて、二次元だけが中枢に送り込まれているんだわ。空間把握力が欠乏した結果ね。」


 金色ツインテ女子はブツブツ言いながらもビルのドアの前に立った。アキバ人類においても高級フィギュアを買おうとする民族はややヘビー級に近い。そのため、フィギュア店は、カードゲーム用のカードや、一般ピーブルでも対応可能な低価格アニメグッズを一階に並べるのが常套手段である。


 仕組まれた入りやすさに背中を押されて、金色ツインテ女子は店内にフェードイン。

一階には小学生男子中心に、フツーのおもちゃ売り場とあまり変わらない雰囲気であったが、階を上がるに連れてひとけが少なくなり、4階の高級フィギュア専門フロアに足を踏み入れた瞬間、金色ツインテ女子は空気が極端に違うのを感じた。実際、フィギュアから発せられる独特な臭いが鼻腔をかきむしった。


「なんなの。この匂い。気持ち悪いわ!フロア全部壊したくなるわ。ガンガン。」
 金色ツインテ女子は、自分の衝動を抑えるためか、床を強く踏んだ。平日の午前中であったため、同じフロアに客がいなくて事なきを得たが、そうでなければ袋叩き必定の暴言であった。


 100平米ほどのフロアに、高野山の修行僧のように、ぎっしりと並べられている高級フィギュア大隊。

「何よこれ。みんな人形?同じものにしかみえないけど。服で区別しているのかしら。」
 エサをねだる亀のように、首を左右に振りながら店内を見回す金色ツインテ女子。


「よく見ると種類が違うのね。プレートに『人間』『魔法使い』『妖精』『ビースト』とか色んな種類があるのね。こんなの、いったいどこがいいのかしら。」


 至極まっとうな意見であるが、アキバという世界では禁則用語を連発する金色ツインテ女子。
 両開きのドアを抜けると、右側が白、左が黒という空間があった。そこには高さが50センチぐらいの比較的大きなサイズのフィギュアが並んでいる。


「白い方は天使、黒には悪魔ってプレートがぶら下がっているわね。どちらの人形にも羽が生えているわ。きっとこれを紙飛行機のように投げて遊ぶんだわ。買う人間って、子供なのね。」
 マーケティング理論がまったくわかっていない金色ツインテ女子。フィギュアに付けれらた値札を手に取った。


「これって、一体3万円?こっちは5万円!こんなのいったい誰が買うのよ!ホント、頭から粉々にぶっ壊したくなるわ。」


 店員の姿が見えないことが不幸中の幸い。
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