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第一章

第四十三部分

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警備隊の運転している白と黒で塗装されたパトカーには、天井に赤い警報器が付いている。ボディーには、警視庁と横に書かれている。これはテロリスト対策で人間界からの払い下げられたものだが、警備隊はヴァーティのように、人間界の自動車教習所に通ったわけではなく、運転は初心者マークで苦手なのである。
「ひどい動きだな。これなら小学生の運動会に、オリンピック代表が出場するようなものだな。」
アーマダラフィアン、通称アーミーは、余裕の表情で、タバコをくゆらせるようにバイクを走らせた。
他のバイクも追随して、パトカーの回りで弧を描きながら、ムチ打っている。魔力で強化されたムチでボディーにはキズをつけているが、大したダメージにはなっていない。
パトカーはひっくり返された亀の子のようにジタバタしていたが、少しずつ慣れてきて、バイクからのムチ攻撃を回避できるようになっていた。
「実戦は始めてだったので、少々手こずったが、逮捕ショーの幕開けはこれからだ。」
警備隊リーダーはパトカーの後方でニヤリとした。
パトカーは窓から腕を伸ばして拳銃を使う余裕が出てきた。
『ズドン、ズドン!』
ただの銃声ではないことは誰の目にもわかる。凶弾という表現は正義の警備隊には似つかわしくないが、撃たれる側にはそのようにしか取れない。
「ぐああ!」
凶弾はテロリストのツナギに穴を開けて噴き出す血液の通り道を作った。ムチを手から放し、バイクから落ちて芋虫のような動きをしているテロリスト。
『ズドン、ズドン!』
「ぐあああ!」
警備隊の攻撃は容赦なくテロリストを弱者認定していく。凶弾は魔力を帯びており、ターゲットへの追尾性能と破壊力はただのピストルとは異次元の存在である。
テロリストのツナギも魔法で防御力が強化されたものであるが、それを打ち破って、テロリストにダメージを与えていた。
ここまで優勢だったテロリストは土俵際に追い込まれていた。
バイクに乗っているのはリーダーのアーミーだけだった。
全パトカーがアーミーの前に並んだ。もちろん全員が拳銃をアーミーに向けてトリガーを引きたくて涎を垂らしている。
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