進芸の巨人は逆境に勝ちます!

木mori

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第一章

第一部分

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黒髪のツインテール女子中学生が、部屋の柱に並んで立っている。特に背伸びをしようとしている風情はないが、からだに力が入っている様子である。
「あと2センチ伸びないかなあ。成長期の神様は背中押さずに、これを引っ張り出して欲しいよね、せめてこの高さまで。ギギギ。」
少女が部屋の柱に付けたキズは、身長ではない。純白で清楚な下着のトップバスト位置でのキズをつける。胸が小さいことを気にしている中学三年生情野美散。
高さ2センチは、体積つまり三次元ボリュームに引き直すと、大変な増量になりツーカップアップとなるという大いなる野望である。しかし、美散に山はなく、円墳のような形状で、お好み焼きには勝つが、もんじゃの盛り上がりには、あえなく敗軍の将になってしまうレベルであった。
しかし、美散の現状認識はややポジティブ。
「2センチ上がれば、レイちゃんに女子として認められて、交際基準値をクリアして、告白できるんだよ。アハハハ~!」
下着姿で腰に手を当てて高笑いする姿は、この空間でしかできない恥ずかしい感情表現である。
「おっと、そろそろかな。あっ、いけない、オトメには時間が速く回るようにできてるんだから、間に合わなくなるよ。急がなくちゃ。」
美散は時計を見るなり、急いで紺色のセーラー服に着替えて、家から飛び出した。胸の赤いリボンが左右に揺れている。
美散の視線の先、5メートルには、紺色学ランの同級生男子、宍戸玲駆が歩いている。口頭によるコミュニケーション不能な距離である。
美散はどんどん先に行く玲駆をフォローすべく、早足にギアチェンジして、等距離をキープしながら、スマホを手にした。
「お、おはよう、レイちゃん。」
玲駆もスマホを取り出した。黒く短い前髪をかきあげて、鋭い目を晒した玲駆。身長177センチで引き締まったボディのイケメンである。
「ああ、おはよう。またスマホ挨拶かよ。いつもながら、どうして一緒に歩かないんだよ。他人との距離は気持ちの距離に比例しているぞ。いつか足跡のない道に迷い、追いかけることができない人間になってもいいのか。」
「だって、だって、恥ずかしいじゃない。男女七歳にして席を同じくせずだよ。あたしたちは今年十五歳だよ。すでに八年もオーバーしてるんだから、一緒に登校なんてムリだよ。も、もうオトナなんだから。」
スマホを持ったまま、玲駆は軽く後ろを振り向いて、モジモジしている美散に目線を移した。
「オトナだと?その胸のどこに成人要素が包含されているんだ?砂漠の油田開発より困難だぞ。」
「キャー!レイちゃんのエッチ!」
セーラー服で隠匿された薄い胸を覆う美散。
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