進芸の巨人は逆境に勝ちます!

木mori

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第一章

第二十六部分

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魔法工房から出ると、球場の反対側に、トンネルがあった。トンネルの上には、『人間界隧道』という表示があった。さらに左に立て札があり、『魔法使いは通行可』と書いてある。
「ま、真っ暗だね。何も見えないよ。でもホントにここから出ていいのかな。もし魔法にかかっていればここを通れるということだよね。もうここまで来たら、チャレンジするしかないよね。レッツラゴーマン!」
傲慢な表情に変わった美散は前に踏み出した。
「暗くて全然見えないよ。ちょっとコワいかも。」
闇の中を、背中を丸めてトボトボと歩く美散。しかし、地面を揺らす重量感は変わらない。
「このトンネルの先が人間界かどうか、わからないよ。もし地獄にでも繋がってたらどうしよう。」
暗闇は人間の心を不安にさせて弱らせる。太古からこの事実は変わりない。
『ザッ。』
「あれ?あたしの後ろで何か音がしたような。」
一度警戒すると、人間の聴覚は鋭くなる。これは身を守るための本能である。
『ザッザッザッ。』
今度は後ろに神経を集中させた美散。
「ま、間違いない。な、何かがあたしの後ろに付いて来てるよ。」
その音はさらに大きくなってきた。
「く、く、来るよ。」
『ザザザ!』
「き、来た~!」
美散の真後ろに黒い影が見えた。
『バシッ。』
「キャー!・・・。こ、これは真後ろじゃない。」
美散の肩に手をかけたのは、背後の黒い影ではなく、正面の白い影だった。
「うわあああ!前から来た!」
予想外の攻撃にビックリした美散は動けなくなった。しかし、さらに後ろからも背中を衝かれて、勢いよく前に走り出した、いや逃げ出した。白、黒の影も美散を追いかけるが、追われる美散のスピードは凄まじく、あっという間に、トンネルの出口に着いた。
「ここが人間界ね。ずいぶんと殺風景な場所だわ。美散はこんな世界に戻りたいと思っているのかしら。」
トンネルを抜けると、美散は智流美に変わっていた。そして、智流美が出た場所は、よく知ってる公園の子供用の小さなトンネルだった。
なぜか制服姿になっていた智流美は、夕暮れの砂場で遊んでいる子供と見比べて、自分が人間サイズであることを確認した。
美散の中学校は公園のすぐ近くにあり、帰宅する玲駆の背中が見えた。
智流美は玲駆に声をかけようとして、こっそりとつけた。智流美は少しずつ玲駆との距離を縮めていった。そして手が届きそうなところに来た時、玲駆がちらりと後ろを振り向く仕草を見せた。すると、智流美はいきなりターンして公園にダッシュで戻ってしまった。

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