進芸の巨人は逆境に勝ちます!

木mori

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第一章

第二十九部分

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仰向けに倒れていた幼女は、ゆっくりと目を開けた。
「大丈夫?ケガはない?」
幼女の上には、四つん這いになった美散がいた。つまり智流美は幼女を助けようとして、巨人軍の美散になっていたのである。
「うん、大丈夫だよ。あ、ありがとう。」
土埃のついたほっぺたを拭おうとした幼女の表情は、急激に黒く曇っていく。
「きゃああ~!タコのお化け~!」
幼女は巨人軍美散の足の間をすり抜けて逃げ去った。
「えっ?なに?あれ、あたし、どうしてここにいるんだろう?・・・。」
美散が頬に指を当てて首を傾げているうちに、周りにいた男子が悲鳴のような叫び声を上げた。
「金剛力士像がいる!」
「金剛力士像だって⁉あたし、上半身ハダカなの?!」
「上半身ハダカじゃないよ。」
「なあんだ、ただの勘違いか。よかった。」
「そうじゃないよ。全身をよく見なよ。」
数秒後。
「からだが大きくなってるよ!それに全身ハダカ!真っ裸だよ!巨人軍で裸族のあたしが人間界にいるよ!戻らなきゃ!」
ものすごいスピードで公園に戻り、人間大の穴の前に来ると、吸い込まれるように中に入っていった美散。そのまま一目散に寮の部屋に飛び込んだ。
ちなみに美散はトンネル内でユニフォームを着せられていた。

部屋では美散は大小に分離して、智流美が姿を見せた。血走った目で、美散は智流美に迫る。
「突然大きくなったのって、魔法の副作用なのかな?」
「最初に聞いたでしょ。強い感情がよくないって。からだの抗体は強い感情で、活性化しなくなるのよ。その結果元に戻ってしまうのよ。一度大きくなると、もうその日は小さくなることはできないわ。」
「う~ん。そうなんだ。困った魔法だね。それと気になったのが、人間の子供があたしを見て、『大タコ』とか、『金剛力士像』とか言ってたのは、幻覚を見せる魔法?」
「科学的根拠のない魔法なんてないのよ。視野は巨人軍と人間では異なるのよ。デカいのは、それだけで人間にとっては怪物的存在。つまり人間は巨人軍を前にすると、心理的に強烈なプレッシャーを受けて、そんな風に見えるのよ。その人間が恐怖心を見出すモノのように見えるはずだわ。」
「はあ、そういうこと。どっちにしろ、大きくなると全身ハダカになることも問題だし、人間界では十分に気を付けないと。」
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