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第二章
第八部分
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すでに寮では夜になっている。
「遠足が決まって良かった。智流美、よくやったね!つるつるぺたぺた。」
同じ攻撃は通用しないのか、ひらりとつるつるぺたぺたを華麗にかわした智流美。
「いや、それほどでもあるわね。」
実際、智流美は何もしていなかったが、結果オーライを喜ぶ美散。箸が転がってもおかしい思春期の特徴である。
「遠足、遠足、楽しいな♪」
美散は喜んでいたが、それ以上に智流美は初めての遠足でハイテンションになっていた。
「何を持っていこうかな。チョコに、クッキーに、きのこの山は欠かせないわね。」
デートを翌日に控えた女の子のような智流美に対して、美散は思った。
「お菓子集めに余念なく、智流美はこういうところは普通の女子なんだなあ。」
智流美の遠足準備はさらに進んだ。
「遠足と言えば、これは欠かせないわね。」
楽しげに呟きながら、智流美がリュックに入れているもの。悪意グッズ、例えばカッター、大小あり、大はギロチンだった。危険なグッズをリュックにいれている。それ以外にもゴソウゴソ蠢いているものを袋詰めしていた。
遠足当日、エロザの登校は予想外にテンションが高かった。
エロザは珍しく鼻歌を歌っている。
「ワタクシノ趣味ハ、テント張リ♪」
テント張りを好むことを明確に宣言し、組立前のテントパーツを持ち歩いている。
「テント、テント、オ天道様ノ下デ、テント♪」
エロザの歌に、みんながビックリ。
「エロザの歌っていったい何?」「変な歌詞だよね。」「てか、なんとなくエロいんじゃない?」「どこがエロいの?」「そんなの説明できないよ。」「言わずもがなでしょ?」
みんな、エロザが何をしようとしてるのか、歌詞内容で理解して警戒モード。しかし、女子生徒たちは、背中に大きな寝袋を2つ担いでいる。どうして2つなのかはよくわからない。
遠足は苛烈なバトルロワイヤルの様相を呈していた。
遠足の目的地の山へ進んでいく生徒たち。玲駆は、列の真ん中あたりを歩いている。
登校時と同じように、5メートルの安全車間距離を取って進む智流美。この点は、美散のからだが、本能的に心の安心安全範囲を自動設定しているのである。
事前の美散と智流美の打ち合わせでは、玲駆とは1メートルという距離設定であったが、ハードルが高過ぎて智流美は守れなかった。
距離置きはいつものことでもあったが、今日は大きな違いがあった。玲駆の横にはエロザの姿があった。エロザは玲駆の腕をしっかり掴んでいた。玲駆は嫌がる様子はなかったが、別に喜んでいる風情もなく、平然としていた。
「エロザのヤツ、車間距離が超絶危険状態だわ。彫り物背中がどうして逃げないのか、不思議だけど。なんとかエロザを出し抜かないと。『魔法って本当に使えないの?』と美散に聞かれたんだけど、使えないこともないから、やってみるわ。エロザに勝つにはそれしかない感じだから。」
智流美は顔を真っ赤にして、全身に力を込めた。
「えいっ!物理攻撃魔法よっ!」
「痛い!」
魔法と物理攻撃という矛盾する概念の組み合わせであることは置いといて、力任せに周囲の女子を次々と投げつける。小柄だが、巨人軍パワーを発揮した智流美。
『痛い!』と言ってるのは、投げつけられた女子たちである。本来なら暴力行為でソッコー逮捕となるハズであるが、可視レベルを超越したスピードであり、一般生徒にはカマイタチにしか見えなかった。タネと仕掛けがあるのが魔法。それはすでに魔法ではないというツッコミは受け付けない。
智流美の物理攻撃魔法は、なぜかエロザには到達せず、投げられた女子たちは明後日の方向に散り散りに飛んでいった。
「遠足が決まって良かった。智流美、よくやったね!つるつるぺたぺた。」
同じ攻撃は通用しないのか、ひらりとつるつるぺたぺたを華麗にかわした智流美。
「いや、それほどでもあるわね。」
実際、智流美は何もしていなかったが、結果オーライを喜ぶ美散。箸が転がってもおかしい思春期の特徴である。
「遠足、遠足、楽しいな♪」
美散は喜んでいたが、それ以上に智流美は初めての遠足でハイテンションになっていた。
「何を持っていこうかな。チョコに、クッキーに、きのこの山は欠かせないわね。」
デートを翌日に控えた女の子のような智流美に対して、美散は思った。
「お菓子集めに余念なく、智流美はこういうところは普通の女子なんだなあ。」
智流美の遠足準備はさらに進んだ。
「遠足と言えば、これは欠かせないわね。」
楽しげに呟きながら、智流美がリュックに入れているもの。悪意グッズ、例えばカッター、大小あり、大はギロチンだった。危険なグッズをリュックにいれている。それ以外にもゴソウゴソ蠢いているものを袋詰めしていた。
遠足当日、エロザの登校は予想外にテンションが高かった。
エロザは珍しく鼻歌を歌っている。
「ワタクシノ趣味ハ、テント張リ♪」
テント張りを好むことを明確に宣言し、組立前のテントパーツを持ち歩いている。
「テント、テント、オ天道様ノ下デ、テント♪」
エロザの歌に、みんながビックリ。
「エロザの歌っていったい何?」「変な歌詞だよね。」「てか、なんとなくエロいんじゃない?」「どこがエロいの?」「そんなの説明できないよ。」「言わずもがなでしょ?」
みんな、エロザが何をしようとしてるのか、歌詞内容で理解して警戒モード。しかし、女子生徒たちは、背中に大きな寝袋を2つ担いでいる。どうして2つなのかはよくわからない。
遠足は苛烈なバトルロワイヤルの様相を呈していた。
遠足の目的地の山へ進んでいく生徒たち。玲駆は、列の真ん中あたりを歩いている。
登校時と同じように、5メートルの安全車間距離を取って進む智流美。この点は、美散のからだが、本能的に心の安心安全範囲を自動設定しているのである。
事前の美散と智流美の打ち合わせでは、玲駆とは1メートルという距離設定であったが、ハードルが高過ぎて智流美は守れなかった。
距離置きはいつものことでもあったが、今日は大きな違いがあった。玲駆の横にはエロザの姿があった。エロザは玲駆の腕をしっかり掴んでいた。玲駆は嫌がる様子はなかったが、別に喜んでいる風情もなく、平然としていた。
「エロザのヤツ、車間距離が超絶危険状態だわ。彫り物背中がどうして逃げないのか、不思議だけど。なんとかエロザを出し抜かないと。『魔法って本当に使えないの?』と美散に聞かれたんだけど、使えないこともないから、やってみるわ。エロザに勝つにはそれしかない感じだから。」
智流美は顔を真っ赤にして、全身に力を込めた。
「えいっ!物理攻撃魔法よっ!」
「痛い!」
魔法と物理攻撃という矛盾する概念の組み合わせであることは置いといて、力任せに周囲の女子を次々と投げつける。小柄だが、巨人軍パワーを発揮した智流美。
『痛い!』と言ってるのは、投げつけられた女子たちである。本来なら暴力行為でソッコー逮捕となるハズであるが、可視レベルを超越したスピードであり、一般生徒にはカマイタチにしか見えなかった。タネと仕掛けがあるのが魔法。それはすでに魔法ではないというツッコミは受け付けない。
智流美の物理攻撃魔法は、なぜかエロザには到達せず、投げられた女子たちは明後日の方向に散り散りに飛んでいった。
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