進芸の巨人は逆境に勝ちます!

木mori

文字の大きさ
66 / 76
第二章

第二十九部分

しおりを挟む
次のバッターはナッキー。
「からくりがわかってるなら、対処のしようがあるですっ。」
やや太めのバットを手にしたナッキーは、バットの先端近くとグリップを握って、構えている。
エロザは先ほどと同様に、ゆったりと投げた。ナッキーはボールを見極めようとしたが、バットを振ることはなかった。
「やっぱりボールが小さ過ぎて見えないですっ。」
次の球もあっさりと見送ったナッキー。
「よし、覚悟を決めたですっ。ピッチャーさんも覚悟するですっ。」
「ワタクシガ、何ノ覚悟ヲスル必要ガ、アルノデスカ。」
「それは負け犬の遠吠えに聞こえるですっ!覚悟という言葉を聞いたら、負け犬ポーズをするというパブロフの犬になるですっ!」
 エロザの三球目が投じられた。
『コチン。』
バットに何かが当たったような音がした。
ボールは二塁側で転々としていた。すでに一塁ベース上にナッキーは立っていた。
バッターボックスには、扇子大きなが転がっていた。
「えっへんですっ。これぞ、扇子バット作戦ですっ。」
美散は目を白黒させていた。
「ナッキーさんのバット、変な形だと思ったら、扇子のように広がるタイプだったんだ。普通のボールだったら、あんな薄いバットじゃ、折れちゃうけど、小さなボールだからできるんだね。」
「ナッキーが泣かずに笑ってる。雪が降らなきゃいいが。」
「ナッキーもたまには成功するですっ。いや、いつも成功したいですっ。それなのに失敗ばかりですっ。ううう。」
やっぱり泣きナッキーに戻っていた。パブロフの犬はナッキーだった。

次のバッタートモヨンも同じバットを持った。
「こんなやり方があるなら、私もヒット確実ですわ。何も考えなくていいので、代わりに反則モドキピッチャーさんのツルを折って、エロザさんのクビを折る妄想でもしておきますわ♥」
トモヨンはすでにバットを扇形にしている。こちらの方が反則っぽい。
しかし、ボールは強振したバットにかすりもせずに、そのままキャッチャーミットに三球すべて収まった。
「どうしてバットに当たらないんですの?」
「やられてたな、トモヨン。クビを折られたのはお前だ。」
「ランボウちゃん、いったい何を言ってるんですの?返答次第では、ランボウちゃんを折り畳みますわよ?」
「エロザは球が小さいことを悪用したんだよ。皮カムリさ。」
「か、か、皮カムリですって?そんな非健全な青少年が、この世に存在するのですか、絶望しますわ!」
「言ってる意味がわからねえ。皮カムリとは、ボールの周りに薄い被膜を付けているってことさ。ボールがトモヨンのバットに当たった瞬間に、被膜が剥がれて、本体がキャッチャーミットに吸い込まれたのさ。扇子バットは強い風圧を浴びてるから、まともなスイングはできない。威力の弱いバットはボールを擦り、被膜を剥いだってこと。つまり、ボールを二個持っていたというワケさ。」
「なんて卑劣な作戦ですの⁉次の打席でお返ししてあげますわ。クビを洗って、いつ折られてもいいようにしておきなさいですわッ!」
ベンチで美散は緊張感が背中を走っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

処理中です...