真・枕営業の魔法少女

木mori

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第一章

第八部分

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栄知は、仕方なく、いかがわしい地区を歩いていく。
「こんな場所は高校生には目に毒だよな。いつか久里朱と一緒に来る日が来たりして。いやいや、そんな不健全思考はダメだ。健全な肉体に、健全な精神は宿るんだから。健全な肉体が必要条件ならば、あっちの方向に疾走するのは当然の帰結なんじゃ?『お兄ちゃんズ』は運動したいのか?ムムム。」
『お兄ちゃんズ』という渋沢家専属的なキーワードを自分も使用する栄知の脳内では、健全と不健全がカオスになっている。
栄知はその状態で、とあるホテルの近くにまでやってきた。そこで異変が起こった。
頭を抱えていた栄知の瞳に、赤いものが投影されて、栄知の思考は反射的にそこに集中されて、その顔・体型認証システムは一個の個体との照合に成功した。
悪いことに、赤い個体は、不健全男子を大いなる過去に経験して、現在はセクハラオヤジに進化した後期中年フルセット円形ハゲ頭と同伴している。
「ま、まさか、あれは久里朱!?それにあんなオッサンとホテルに入っていっただと?信じられない!いや、きっと、何かの見間違いだ。そうだ、久里朱は、今日はバイトだって、言ってたし。で、でもバイトって、何のバイトか知らないし。」
『プルル。』 
再び、スマホが鳴って、早く買い物を済ませるように催促された栄知。今見た光景を忘れるために、猛ダッシュでスーパーに行って、逃げるように帰宅した。

2時間後、ホテルから出てきた久里朱は、チンピラが暴れている現場に行って、そこを鎮圧してから、霞が関にある魔法少女省を訪れた。事件処理の報告と納税のためである。
50階建ての御影石で覆われたビルディングが黒光りして威容を誇っている。
体育館ぐらいあろうかというだだっ広いエントランスには、人があまりいない。魔法少女になれる者が少ないという事情はあるものの、枕営業やってる以上、人目に触れるのは極力避けるためである。
久里朱はエレベーターホールの前に立った。左右にエレベーターがあり、乗降フロアが異なっている。久里朱は右側に進んだ。こちらは、11階から50階に行けるものであり、左側は10階までになっている。エレベーターの数も右側は10基と多く、かつドアもシルバーで輝いているが、左側は薄汚れたドアの人荷用が一基あるのみである。
久里朱の背中合わせに、小さな体躯の女子ふたりがやって来た。恨めしげな目付きを背中に感じた久里朱はすぐにエレベーターに乗り込んで最寄りの11階のボタンを押した。
このエレベーターは11階以上にしか止まらないのである。筐体に入ると、久里朱は狂ったように手を動かして、12階から50階までのすべてのボタンを点灯させた。このエレベーターは各階停車の鈍行運転となった。久里朱はゴミを見るようなすがめた視線をエレベーターの隅に向けて開口した。
「今日もちゃんとエレベーターガールの務めを果たしてるわね。今日の納税額とか、報告したいんだけど。ねえ、沽森byオバチャマ、聞いてる?ねえ、魔法少女省魔法少女管理局第一管轄区総務課長の沽森byオバチャマ!」
「女子だ~!ハグするもん!」
 いきなり、黒い物体が久里朱に飛びついてきて、久里朱はあっさりと薙ぎ払った。
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