真・枕営業の魔法少女

木mori

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第一章

第十六部分

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場面はホテルのエレベーター前に戻るが、想定外の事案が発生した。
エレベーターに従業員の若い女子が入ってきたのである。
「これは、ピチピチな女子、しかも久里朱よりも胸がリッチだもん!」
沽森byオバチャマは女子従業員に子泣きジジイのように抱きついてしまう。
女子は悲鳴をあげながら沽森byオバチャマを凪ぎ払って、エレベーターのドアを開いて、ふたりは飛び出した。
『ゴロゴロ』と転がったのは久里朱ではなかった。エレベーターの外に出てしまったので、変身魔法が解けてしまったのである。
「しまった、つい抱きついたもんね。明るい、まぶしい、うわあ、ヤバイもんね~!」
沽森byオバチャマは床でのたうちまわった直後、『シューシュー』という音と共に消滅した。長いこと引きこもりしている理由は、まともな光に弱いからであった。
沽森byオバチャマに襲撃された女子従業員は、落ち着きを取り戻して、スカートの裾をパンパンとはたいていた。
「なんだ、さっきの化け物は~?いきなり消えちゃったし~。・・・。あれ?いい匂いがする。もしかしたら、お兄ちゃんズが近くにいるかも?」
女子従業員はエレベーターの外に出た。
「ウリウリがお兄ちゃんズを見つけたよ~!」
女子従業員に化けていた瓜莉は、黄色の魔法少女に変身した。背中にはやはり黄色の枕を背負っている。
「黄色のクマミミコスプレイヤーがいるぞ?」
 黄泉瓜莉に見つかってしまった栄知は、急激かつ異常な展開に当惑している。
「ウリウリのことをコスプレイヤーとか言うな~。れっきとした魔法少女だよ~。反社会的だけど~。」
「反社会的?この魔法少女コスプレイヤーはいったい何を言ってるんだ?」
「連続してコスプレイヤー言うな~。でもコイツから、強烈な匂いがする。きっとお兄ちゃんズだね。ねえ、君、ウリウリと枕しない?」
「栄知、危ないわ。ソイツから離れて!」
一連の様子を柱の陰から見ていた久里朱が飛び込んできた。
「反社会的魔法少女ね。まさか、三つ葉葵のヤツ?」
久里朱はすでに魔法少女に変身していた。
「ま、まさか、久里朱なのか?」
栄知には変身しても魔法少女が久里朱であることはすぐにわかった。久里朱の動きから感じる音が久里朱のものであったからであった。
「ちっ。魔法少女省の魔法少女だね~。いきなりのご登場で、こちらは準備不足だから、戦闘は預けておくよ~。」
そう言い残して、瓜莉はホテルから姿を消した。
「思わず栄知の前に出て、あまっさえ変身してしまったわ。もうこうなったら仕方ないわ。」
あっけに取られてる栄知から離れたところで、変身を解いた久里朱は中年と部屋に入っていった。その姿は栄知の視野の隅をかすった。
「久里朱!」
思わず大声を出した栄知。
「オバチャマは失敗したんだわ。でももう止められないのよ。」
背中に枕を抱えた久里朱は超然として枕営業を遂行した。久里朱はしっかり前を見ていたものの、目から小さな涙の一粒が流れて落ちていった。
「パンドラの箱が開いてしまったわ。もう栄知の顔を見られない。」
「久里朱が枕営業やってた、久里朱が枕営業やってた、久里朱が枕営業やってた。」
栄知は自己暗示ではなく、真実を繰り返していた。
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