18 / 276
第2話『アース班への配慮とポールの不始末』
しおりを挟む
ポールが思わず電卓で験算すると、オリーブが否と答える。
「違う。私が4平方キロメートルで、ナタルが2平方キロメートル」
「4平方キロメートル?!」
事情を知らない全員が驚愕する。
「すっげぇー! 鳥俯瞰者で4平方キロメートルもカバーできるなんて、聞いたことないよ」
キーツが素っ頓狂な声を上げる。
「あれって心を拡大しないと大地とつながらない修法でしょうが。炎樹の森の特殊な状況でも変わんないの、そのデータ」
ポールが思いっきり疑ってかかると、オリーブはあっけらかんと言った。
「平気、平気。レンナちゃんの修法陣があれば100%大丈夫。それに、タイラーが担当なら多少は援護を期待していいんでしょ?」
「——そのつもりだが」
「ほらね、絶対大丈夫」
「……オリーブをアース班に配置したのは大正解だな、マルク」
「いや、そんなつもりじゃなかったんだが」
アロンに言われて、マルクが頬をポリポリ掻いた。
「ナタルさんの2平方キロメートルが平均でしょう。4平方キロメートルは私もチャレンジしたことがない」
ランスもしみじみ言った。
「あ、それでアース班には売るほど時間があることがわかったから、私たち以外のメンバーに大半をやってもらおうってことになったの。何ならツリー班を手伝いましょうか?」
「いや――待機してもらって、こっちに残るメンバーの監督をしてもらっていいか? 実は彼らに中継点になってもらって、細々としたやり取りを一括しようと思ってる。ツリー班のリーダーは定例の会合をテレパスで開いて進捗を管理する。同時に緊急事態にも備えようと思ってるんだ」
マルクの意見に、オリーブが拳で手をポンと打った。
「了解、それはナタルがやるわ」
「えっ」
「頼むぞ、ナタル。現場にもきちんと顔を出せよ」
「文字通り白紙の仕事だからな、ちゃんと起ち上げろよ」
マルクとタイラーに言われて、ナタルは目頭を熱くした。
「ああ、任せておいてくれ!」
「まぁ、なんでしょ。2人してかっこつけてからに」
ポールがやっかむと、タイラーが一言。
「俺がナタルの次に危ぶんでるのはおまえだからな」
「おや、どういたしまして」
「自分の不始末をど忘れするんじゃ、先が思いやられる」
「フン、自分を笑うユーモアのセンスがないやつに言われたくないね」
「なんだと、コラ」
タイラーは拳骨を落とそうと思ったが、舌を出すポールの後頭部を離れたところから空気圧で殴った。
「おごっ」
ポールの首が前に勢いよく曲がる。
「おのれ、卑怯なり……」
言って円卓にくずおれる。もちろん演技である。
「……どうしたの、あの人たち?」
オリーブが隣のルイスに問う。
「それがポールさん、5班の男性メンバーが不参加の理由がわからないんですって」
「あらら、絵にかいたような5班あるあるね」
「自分でもそう言ってましたよ」
「コラそこ! 人の不幸を笑うんじゃない」
すかさずポールが聞き咎めると、オリーブがあっさり返した。
「わかってんじゃん」
「何をーっ⁈」
そこでスッと視線を上げて、トゥーラがポールを見た。
「静かにしなさい」
「はい」
ポールが背筋を伸ばした。
「……絶対、トゥーラに怒られるまで待ってたんだぜ、あいつ」
「こすいわぁ」
アロンとキーツがひそひそ言い合ったが、ポールは聞いちゃいなかった。目が生き生きしている。
トゥーラは何事もなかったように会議を進行した。
「次にメンバーの割り振りについて話し合いたいと思います。今のところ、それについて言及したのは北東側に女性を配置しない、ということで。班ごとでも話し合ってもらいますが、都合面で自薦他薦があれば、この場でお願いします」
何とまぁ、冷静でいらっしゃる、と全員が思った。
この辺りがNWSの女性メンバーが強い理由なのかもしれなかった。
トゥーラはこの騒ぎの間に、班名簿もオービット・アクシスで用意していた。
(いつも思うけど、リーダー間で仕事らしい仕事してるのって、トゥーラとマルクだけなんじゃないの?)
そう考えた自分がちょっと嫌になったオリーブだった。
会議は次の段階に入ろうとしていた。
「違う。私が4平方キロメートルで、ナタルが2平方キロメートル」
「4平方キロメートル?!」
事情を知らない全員が驚愕する。
「すっげぇー! 鳥俯瞰者で4平方キロメートルもカバーできるなんて、聞いたことないよ」
キーツが素っ頓狂な声を上げる。
「あれって心を拡大しないと大地とつながらない修法でしょうが。炎樹の森の特殊な状況でも変わんないの、そのデータ」
ポールが思いっきり疑ってかかると、オリーブはあっけらかんと言った。
「平気、平気。レンナちゃんの修法陣があれば100%大丈夫。それに、タイラーが担当なら多少は援護を期待していいんでしょ?」
「——そのつもりだが」
「ほらね、絶対大丈夫」
「……オリーブをアース班に配置したのは大正解だな、マルク」
「いや、そんなつもりじゃなかったんだが」
アロンに言われて、マルクが頬をポリポリ掻いた。
「ナタルさんの2平方キロメートルが平均でしょう。4平方キロメートルは私もチャレンジしたことがない」
ランスもしみじみ言った。
「あ、それでアース班には売るほど時間があることがわかったから、私たち以外のメンバーに大半をやってもらおうってことになったの。何ならツリー班を手伝いましょうか?」
「いや――待機してもらって、こっちに残るメンバーの監督をしてもらっていいか? 実は彼らに中継点になってもらって、細々としたやり取りを一括しようと思ってる。ツリー班のリーダーは定例の会合をテレパスで開いて進捗を管理する。同時に緊急事態にも備えようと思ってるんだ」
マルクの意見に、オリーブが拳で手をポンと打った。
「了解、それはナタルがやるわ」
「えっ」
「頼むぞ、ナタル。現場にもきちんと顔を出せよ」
「文字通り白紙の仕事だからな、ちゃんと起ち上げろよ」
マルクとタイラーに言われて、ナタルは目頭を熱くした。
「ああ、任せておいてくれ!」
「まぁ、なんでしょ。2人してかっこつけてからに」
ポールがやっかむと、タイラーが一言。
「俺がナタルの次に危ぶんでるのはおまえだからな」
「おや、どういたしまして」
「自分の不始末をど忘れするんじゃ、先が思いやられる」
「フン、自分を笑うユーモアのセンスがないやつに言われたくないね」
「なんだと、コラ」
タイラーは拳骨を落とそうと思ったが、舌を出すポールの後頭部を離れたところから空気圧で殴った。
「おごっ」
ポールの首が前に勢いよく曲がる。
「おのれ、卑怯なり……」
言って円卓にくずおれる。もちろん演技である。
「……どうしたの、あの人たち?」
オリーブが隣のルイスに問う。
「それがポールさん、5班の男性メンバーが不参加の理由がわからないんですって」
「あらら、絵にかいたような5班あるあるね」
「自分でもそう言ってましたよ」
「コラそこ! 人の不幸を笑うんじゃない」
すかさずポールが聞き咎めると、オリーブがあっさり返した。
「わかってんじゃん」
「何をーっ⁈」
そこでスッと視線を上げて、トゥーラがポールを見た。
「静かにしなさい」
「はい」
ポールが背筋を伸ばした。
「……絶対、トゥーラに怒られるまで待ってたんだぜ、あいつ」
「こすいわぁ」
アロンとキーツがひそひそ言い合ったが、ポールは聞いちゃいなかった。目が生き生きしている。
トゥーラは何事もなかったように会議を進行した。
「次にメンバーの割り振りについて話し合いたいと思います。今のところ、それについて言及したのは北東側に女性を配置しない、ということで。班ごとでも話し合ってもらいますが、都合面で自薦他薦があれば、この場でお願いします」
何とまぁ、冷静でいらっしゃる、と全員が思った。
この辺りがNWSの女性メンバーが強い理由なのかもしれなかった。
トゥーラはこの騒ぎの間に、班名簿もオービット・アクシスで用意していた。
(いつも思うけど、リーダー間で仕事らしい仕事してるのって、トゥーラとマルクだけなんじゃないの?)
そう考えた自分がちょっと嫌になったオリーブだった。
会議は次の段階に入ろうとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。
水鳥楓椛
恋愛
男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
姉の婚約者と結婚しました。
黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。
式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。
今さら式を中止にするとは言えない。
そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか!
姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。
これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。
それどころか指一本触れてこない。
「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」
ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。
2022/4/8
番外編完結
王弟が愛した娘 —音に響く運命—
Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、
ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。
互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。
だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、
知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。
人の生まれは変えられない。
それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。
セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも――
キャラ設定・世界観などはこちら
↓
https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる