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しおりを挟む夢を見た。シモンがまだ赤ん坊だった頃の夢だ。段々成長していくシモン。這うようになって、歩き出して、喋れるようになって、ぐんぐん背が伸びて大人びていって。あぁ、こんなにもあっという間。でも、やっぱり可愛いなぁ。そんなシモンはとっても、とっても……美味しそうだ。美味しそうに実ったなら、食べないと。だから俺はシモンの上に乗っかって、大きな口を開けてあーんと一息に首筋にかぶりついてそのまま……
「って、わぁぁぁ!」
嘘でしょ? 今、俺、シモンを食べる夢を見てた……? じゃあもしかして、最近シモンを見てると妙に犬歯が疼くのも、何かを噛んでないと我慢できなくなったのも、全部食欲だったってこと⁉ ど、どどどうしよう。このままじゃ、俺、シモンを食べちゃうってこと⁉ やっぱり今すぐにでもシモンに出ていってもらわなきゃ……! いや、むしろ俺が出ていくべき!?
「……あなたはこんな深夜にそんな所で何してるんですか」
「んえッ!? シ、シモン!?」
寝ぼけたまま唸っていたせいで気づかなかったが、なんと俺は夢に見ただけじゃなくて実際にシモンの上に跨っていたらしい。そんなの食べる気まんまんじゃん。よーいドンの勢いじゃん。もうやだ、自分が一番信用できない。
「うわ、わ、ごめん。すぐ退くからッ……っ!」
もう何を言い訳にしたらいいのかも思いつかなくて、慌てて立ち上がろうとしたらバランスを崩してしまった。ひゅうと目の前のシモンが遠ざかって、時が進むのが遅くなったみたいに、ゆっくりゆっくり遠ざかって……うわ、絶対頭ぶつける……! 来るはずの衝撃に備えてぎゅっと目を瞑って耐えようとした、はずだった……ってあれ? 痛くない。
「はぁ、危ない。もう、気を付けてください」
「あ、ありがとう」
どうやらシモンが俺の手を咄嗟に掴んでくれたらしい。ありがたいけど、俺はたった今その恩人のことを食べようとしてた。自分で育てた大切な子どもを食べたいだなんて考えてる最低な奴だ……
そう思ったら自然と涙が出てきた。何が悲しくて、自分が可愛がって育ててきた子どもを食べようなんてことになるんだよ。どうなってるんだよ、俺の食欲。ほんとどうしちゃったの? 今までそんな事無かったじゃん。すんすん鼻を鳴らしていると、掴まれたままだった腕をそのまま引かれて抱きしめられた。俺が何で泣いてるかなんて分からないはずなのに。
……ちょっとキツイ、でもあったかい。シモンの体温を感じたら余計に涙が止まらなくなった。
「う゛え゛ぇぇぇんん。シ゛モ゛ン゛ンン」
「ほら、泣かないでください。なんで泣いているのか、さっきの質問も合わせて喋ってもらいますからね」
ここまできたらもう観念するしかなくて、シモンをみると犬歯が疼くようになってしまったこと、夢でシモンを食べようとしてたこと、起きたら夢の状況に似ていて自分が嫌になったこと、洗いざらい話した。その間シモンはずっと俺の背中を撫ででくれていた。
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