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職員室に呼び出されたのは、生まれて初めてだった。

放課後の教室、ざわついた中の放送で僕の名前が呼ばれたらしい。

らしい、というのは僕自身放送をあまり聞いておらず、

「今、天野君呼び出しされていたよ」

というクラスメイトの声かけのおかげで気づいたのだった。

正直嫌な予感がした。

僕の中で職員室に呼び出されるということは、何か悪いことをして怒られるというイメージしかなかったからだ。

何か悪いことをした記憶はない。

優等生、は言い過ぎだとしても、僕は不良とは程遠い真面目な生徒だ。

悪いと言えば授業中に少しうたた寝をするくらいで。

だから無意識のうちに何か悪さをしていたんじゃないかとか、濡れ衣を着せられていることがあるんじゃないかとか、いろんなことを考えた。

そうしているうちに職員室に着いた。

担任の河口先生はどこにいるのだろうか?

中に入ってうろうろ探しても怒られないだろうか?

一歩が踏み出せず、職員室で立ち往生していると偶然にも中から河口先生が出てきた。

「あら天野君、来たの。中へいらっしゃい」

促されるまま僕は初めて職員室の呼び出しに応じた。

河口先生の机は意外にも入口から近い位置にあった。

自分は椅子に座るが、僕はその横に立ったままだ。

周りから見たら僕は完全に呼び出された悪い生徒で、身に覚えがないだけに何を言われるのか不安を抱いたまま身構えた。
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