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僕は面倒だと思いつつ、辞書を取り出す為に床に置いてあった鞄を取り上げた。

金具につけた宝物のキーホルダーの表面が電灯に反射してキラリと光る。

「そういえばさー」

僕の真横で髪を拭きながら姉ちゃんが話しかけてくる。

「うみちゃんの反応、どうだった?」

「どうって?」

「ありがとうって書いたふせん、うみちゃんの机に貼ったんでしょ?」

何だ、そのことか。

僕は一瞬もう1つのふせんのことを聞かれるかと思った。

実は『ありがとう』のふせん以外に、僕はもう1つふせんを使ったのだ。

まずありがとうのふせんは姉ちゃんに言われたとおり、翌朝うみちゃんの机に貼り付けた。

机の上に貼るとみんなに見られてしまうし、それで差出人探しが始まったりしたらまずい。

だからバレないように机の中に貼り付けておいた。

こっちはこっちで、中だから本人に気づかれないというリスクがあったけど、こっそりうみちゃんの様子を見ている限り、ちゃんと気づいてくれていた。

でもだからと言ってうみちゃんから何か反応があったわけじゃない。

特に何も起こらないままだ。

だからうみちゃんが拾い主かどうか、結局わからないままだけど何も騒ぎ立てないところを見ると、きっとうみちゃんが拾い主なんだろう。

うみちゃんは元々騒ぎ立てる性格ではないけど。

そして僕はそんなうみちゃんとは別の人にも1つ、メッセージを送っていた。
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