いっぽ

N&N

文字の大きさ
上 下
36 / 38
第4話

しおりを挟む
飛行機雲…飛行機…女性は飛行機に乗って、無事外国に到着しただろうか。

ふと女性の事が頭に浮かんだ。

僕もこのハンカチがきっかけで、コハルとの距離を少し縮められた気がする。

奇跡も偶然も何も生まれていないけど、それはこれからあるのかな?

その前に、僕も何か行動を起こさなきゃ。

ふっとコハルに視線を向ける。

泣いたせいか、目と鼻が少し赤くなっていたが、表情は穏やかだ。

気づいていなかったけど、かわいかったんだな、こいつ。

僕はコハルの手を取り、そっと握った。

コハルは驚いて僕の方を見上げる。

僕は飛行機雲を見たまま、目を逸らさず言った。

「何で今日言ったの?今日じゃないと駄目なの?」

「そんな事ないけど、でもお守り渡せるのは、テスト休みの今週だけだもん。何かきっかけがないと、言い出せなかったの」

「………」

女性が、僕との出来事をきっかけに一歩踏み出したのと同じ。

コハルもお守りを渡す事をきっかけに、僕に一歩近づこうとした、といったところか。

そうだよな、何事も物のはずみで済む事ばかりじゃないよな。

行動に他人が関与する場合は、その人との関係がどうなるかわからない不安もあるもんな。

勢いも必要だよな。

今こうしている間も、コハルはきっと不安な気持ちを抱えている。

気持ちを伝えてくれた以上、もっと真剣にコハルの事を考えなくては。

これからは少しずつ、コハルに時間を割いていこう。

そうして、コハルの事をもっと知っていこう。

そうすればそのうちコハルが『ただの気になる存在』から『そばにいて欲しい存在』になって、コハルを好きという気持ちが芽生えるかもしれない。
しおりを挟む

処理中です...