true tears

N&N

文字の大きさ
上 下
2 / 9

しおりを挟む
入学してから今まで人に迷惑をかけるような行為はしていない。

ただ少し人付き合いが苦手で、一人で過ごすことが多かっただけだ。

それを暗いと言い始めたのがクラスを取り仕切っている押田くんで、そこから連想ゲームのように根暗、オタク、変人・・・と続いていった。

挙句の果てには、家ではいつも人形相手に話をしているとか、女の子を見る目が変態そのものとか、身に覚えのないことを噂されるようになり、孤立化した。

僕が触ったものは、ばい菌扱いされ、消しゴムを投げられる。

だけど反抗することなくおとなしくしていれば相手を必要以上に怒らせることはなかったし、害を与えられることもなかった。

消しゴムは制服に向かって投げられるだけで、痛くも痒くもなかった。

ばい菌と罵られても自分はばい菌ではなく紺野守だ、と心の中で言い続けることでやり過ごせた。

何も問題はなかったのだ。

黙ってやり過ごしていれば、きっとこれからも何の問題もなくやり過ごせたはずなのだ。

教室は依然騒がしい。

が、これを止める先生はいない。

榊くんが使用する机と椅子を取ってくる為に教室を出て行ったっきりだ。

早く戻って来て欲しい。

今この状況を止められるのは先生しかいない。

とりあえず今この状況から逃れたい。
しおりを挟む

処理中です...