*いにしえのコトノハ*9 苦くて、甘くて、時々しょっぱい

N&N

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店長はその時、オレの決意が揺らぐようなことは一切言わなかった。

ここを利用してくれてありがとねー、の一言だったおかげで迷う要素がなくなったのだ。

そういうところも店長がお気に入りの理由の1つだ。

他人の言動には口出しせず見守ってくれる。

多分、あの時何か言われていたら、またどうしようか1人悶えていただろう。

「見たところ元気そうだね。プーさんの看病が良かったのかな」

店長が初対面にも関わらずコブラに話しかける。

「はい。おかげさまで」

「って言っても不調の頃を知らないけどね。ははは」

店長が笑ったおかげでコブラの頬も緩んだ。

店長こそ人と仲良くなるのが早い。

「おっと、買い物の邪魔をしちゃ悪い。ゆっくり見ていってよ」

「あ、違う違う。店長に用事があるんです」

その場を去ろうとした店長の後を思わず追いかける。

「バイト希望者です。履歴書も持ってきました。面接してもらおうと思って」

言った瞬間、店長の顔がパァーっと明るくなった。

「嬉しいなぁ。応募してくれるなんて」

「あの、でもぼく初心者でバイトなんて経験ないから迷惑をかけるかもしれません」

「そんなの最初は誰だってそうさ。初心者大歓迎。未経験ってことは、教えたことが全てになるから、変な知識がついているよりずっといい」

「じゃあ店長、面接お願いします」

「プーさんの紹介なら採用に決まってるじゃない。でも一応面接しておこうか。奥に行こう」

「はい」

まだ緊張している感じは否めないが、店長と話すうちにそれもそのうち消えるだろう。

親になった気持ちでコブラを見送る。

すると突然店長が振り返った。

「プーさんも一緒においでよ」

「えぇっ、面接にオレも参加っておかしいでしょう」

「プーさんも一緒の方が気もほぐれるし、昨日の話も聞きたいしさー」

「えー」

と言いつつ、店長が手招きをするのでお言葉に甘えてオレも後に続く。

店長が手招きして奥の部屋へ誘導する時は、たいていおやつを用意してくれる。

と言っても期限切れの洋菓子だったりするけど。

1,2日切れたくらいでは全然気にしない。

オレにとっては嬉しいご褒美だ。

学生に洋菓子なんて贅沢だから、こんな時でないとこういうおやつにはありつけない。
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