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オオカミの贈り物
5 君の友達
しおりを挟む次の日、朝8時に家を出る風奏と一緒に僕も家を出た。制服を着てカバンを持っているから、学校に行くのかな。
家を出て、風奏は自転車に乗った。カバンを自転車のカゴに入れて、ハンドルを握る。
ーーおっ、いいね。僕も隣で走るよ、競走だ!
風奏はぐんっと足を動かして走り出した。いきなり立ち漕ぎだ。僕も負けじと後ろ足に力を込めて、前足を勢いよく前に出した。
人間の隣を並んで走るのは、想像以上に気持ちよかった。通りすがりの鳥や猫はびっくりして僕の方を見ていたけど、気にせず思いっきり走った。
時折信号に捕まりつつ、30分くらい走って学校に着いた。風奏は汗をすごくかいていて、駐輪場で汗を拭いてから下駄箱に向かった。
僕にとって、学校を外から見ることはあれど、中に入るのは初めてだった。若い子がたくさんいて、賑やかなのは外から見たのと同じ。
ちらりと隣の風奏の様子を見た。顔も心も、今のところ元気だ。
きっと、学校に来ること自体は好きだ。家でもない、じゃあ学校の友達とか?成績とか?
まあ、考えてたってしょうがないや。1日風奏の様子を見ることにしよう。
風奏が通っている学校は、『北里高等学校』で、2年2組らしい。下駄箱で靴を脱いだ後、階段で2階に上がって教室に入った。
「あー!やっと来たー!風奏おはようー!」
風奏の後ろについて教室に入ろうとした時、突然、誰かが大きな声を出しながら走ってきて、風奏に飛びついた。僕が抱きつかれたわけでもないのにあまりの勢いにびっくりした。風奏ももちろん驚いている。勢い強すぎだろ、僕のところまで風が来たぞ…
「お、おはよう誌乃、今日も元気だね…」
ほらみろ、風奏も引き気味じゃないか。
「だって今日はさ!1限目体育の日じゃん!バスケ!」
そういう詩乃は、すでに体操服を着ている。はやすぎ。
「時間割なんだし、毎週そうじゃん笑」
「そうだけどさー!やっぱ!体育!最高!」
テンション高いなーと思いつつ、風奏を見ると、ころころ笑っていた。
ーーへぇ、こんな顔で笑うんだね。
僕の方が幸せになるような笑顔。素敵じゃん。
そして、風奏が体操服に着替えている間、こんな調子でずっと詩乃が喋り続け、風奏も負けじとツッコミを入れたりしつつ朝のチャイムまで過ごした。
しかし、これだけ楽しそうに笑えているなら大丈夫だと安心した僕は、急に裏切られることになる。
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