未来スコープ  ─運命の分岐点─

米田悠由

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エピソード7:選択の狭間、ユカの陰謀 Ver.6

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ハルキとの突然の告白とキス。

あの瞬間から、美久の世界は鮮やかに色づいた。放課後、美久は自然とハルキが手伝うカフェに足が向くようになった。木材を加工する彼の真剣な横顔、森について語る時の熱い眼差し。そして、不意に視線が合った時に、二人の間に流れる甘い沈黙。
全てが美久の心を甘く締め付け、同時に、満たされた幸福感を与えた。

美久の進路に対する考えも、大きく変化していた。以前は新素材研究者の道に心が傾いていたが、未来スコープが最後に示した「選択肢C:確かな安定と幸せな未来」という、ハルキに似た子供の姿を伴う未来が、美久の心を強く捉えて離さない。研究者としての華やかな未来も魅力的だが、ハルキとの家族の未来は、何よりも温かく、現実的な幸せに見えた。

「ねぇ、美久、最近、なんか雰囲気が違うね。すごく幸せそうだけど、何かあった?」

ある日の美術部の休憩時間、親友のユカが美久の隣に座り、ニヤニヤしながら尋ねてきた。ユカの鋭い視線に、美久の顔はみるみる赤くなる。

「え、そ、そんなことないよ! いつも通りだよ!」

美久は慌てて否定したが、ユカは面白そうにクスクスと笑った。

「ふーん。いつも通りねぇ。でもさ、最近、理系の本ばっかり読んでるし、かと思えば、妙にぼーっとしてたり……ねぇ、もしかして、誰か好きな人でもできた?」

ユカの言葉に、美久の心臓がドクンと跳ねた。図星を突かれ、美久はごまかすように視線を泳がせた。ユカはそんな美久の様子を見て、さらに面白そうに顔を近づけてきた。

「絶対そうじゃん! 顔真っ赤だよ! 誰? 誰なの! 私にだけは教えてよ~!」

ユカの追及に、美久はつい口を滑らせそうになる。
ハルキのこと、未来スコープのこと、そしてあの衝撃的な未来のこと……。
しかし、未来スコープの秘密は、まだ誰にも話せない。特に、ユカを巻き込むのは、危険な気がした。

「ま、まだ、そんなんじゃないってば……! 落ち着いてよ、ユカ!」

美久は必死でごまかしたが、ユカは面白そうに笑いながら、美久の腕を軽く叩いた。しかし、その笑みの裏に、美久は一瞬、冷たいような、どこか計算めいた光を見た気がした。そして、ユカの口から、信じられない言葉が飛び出した。

「ふうん……でもさ、美久。あなたが本当に幸せになれるのは、そういう漠然とした関係じゃないと思うな。美久には、もっと確実で、もっと安定した、最高の幸せが似合ってると思うんだ。今、あなたが夢中になっていることが、将来本当にあなたを幸せにしてくれるかどうか、冷静に考えてみた方がいいんじゃない?」

その言葉に、美久は全身が凍り付くような感覚に襲われた。ユカは、一体何を言っている? 
親友であるはずのユカが、なぜ自分の気持ちを、まるで理解しないような、突き放すような言い方をするのだろう? 
まるで、美久の思い描く幸せを、頭ごなしに否定しているかのようだった。この時、美久はまだ知らなかった。ユカのその言葉が、未来の選択、そして未来スコープの真の秘密に、深く、そして決定的に関わってくることになることを。

ハルキとの関係が深まるにつれ、美久はより一層、「選択肢C:確かな安定と幸せな未来」という未来へと心が傾いていった。研究者の道も魅力的だが、今はハルキと共に平凡な、しかし温かい家庭を築く未来が、何よりも尊く感じられた。この子供の未来こそが、自分にとっての本当の幸せな道を示しているのではないか、と。

そんなある日、美久はハルキと連れ立って、カフェから駅へと向かっていた。他愛もない会話を交わし、時折、手が触れ合うたびに二人の頬は赤くなった。幸せな時間が流れていた。

その時、美久はふと、道の向かい側、電柱の陰に立つ人影に気づいた。人影は、二人の様子をじっと見つめているようだった。美久が不審に思い、目を凝らすと、その人影は慌てて陰に隠れてしまった。

「今の……誰だろう?」

美久は気になって立ち止まったが、ハルキは気づかなかったようだ。

「どうしたの? 美久さん」
「ううん、なんでもない……気のせいかな」

美久は首を傾げた。
しかし、その人影は、間違いなく親友のユカだった。彼女は、隠れるようにして二人を見つめていた。その表情は、先日の美術部で見せた冷たい光を帯び、まるで二人を監視しているかのようだった。

「いったいどういうこと……?」
美久は、再び心の中で叫んだ。
ユカが、なぜ自分たちを、まるで隠れるように見つめていたのだろう? 
そして、あの美術部での、美久の気持ちを軽んじるような不穏な言葉。
全てが繋がっている気がした。
ユカは、一体何を知っているのか? あるいは、何を企んでいるのか? 
幸せに満ちたはずの美久の心に、これまで感じたことのない、親友への不信感と、得体の知れない恐怖が忍び寄ってきた。
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