未来スコープ  ─運命の分岐点─

米田悠由

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エピソード12:カウントダウン、明かされる真実、そして犠牲 Ver.9

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美久が荒廃した研究室の未来を選択し、それが未来スコープに確定された瞬間、ユカの身体から、微かな電子音が聞こえ始めた。

「システムオーバーロード。排除プロトコル起動。残り60秒…」

機械的な女性の声が、ユカの身体から響き渡る。その声に、美久はハッと顔を上げた。ユカの顔が苦痛に歪む。

美久:「ユカ…? なに、これ…!?」

ユカは、美久に背を向け、自らの身体を抱えるように震えている。一体何が起きているのか。ユカは、自分の命を蝕む装置が作動したことを、この時に初めて悟った。

「50秒…」

カウントダウンが続く。
ユカは、その場で崩れ落ちそうになりながらも、血の滲むような覚悟で美久へと向き直った。その瞳は、冷徹なエージェントの面影はなく親友のユカに戻っていた。

ユカ:「美久…聞いて…! 残された時間で…全てを伝えるわ…!」

ユカの声は、途切れ途切れだったが、その言葉には、未来本部が隠してきた真実の重みが込められていた。

ユカ:「未来スコープが示す荒廃した研究室の未来は…このままいけば本当に起きる未来よ…。本部は…未来を確定させた未来スコープの力を直接覆すことはできない…」

ユカ:「だから…本部は…その荒廃した未来を回避する間接的な手段として、別の幸せな未来を選択肢として作り出して、あなたを誘導してきた…荒廃した未来を回避させるために…」

「40秒…」

ユカの身体が、さらに激しく震え始めた。しかし、彼女は言葉を続ける。

ユカ:「でも…その回避には…大きな『歪み』が発生し『犠牲』が伴うの…あなたが幸せになっても、その裏で別の誰かが不幸になる…! 根本的な解決には…ならない…!」

「30秒…」

ユカは、痛みに耐えながら、美久の瞳をまっすぐに見つめた。

ユカ:「私は…本部があなたに幸せな未来を選ばせて…その裏で犠牲を出すことを…知っていた…そして本部は…あなたが荒廃した研究室の未来を選択しようとしら…その確定を防ぐため、最後の手段として、私にあなたを消すように指示されていた…」

美久は、ユカの言葉に絶句した。
自分が幸せな未来を選んでいれば、その歪みの犠牲が生じていた。そして、もし荒廃した未来を選ぼうとすれば、自分自身が消されるはずだったのか。

ユカ:「だから…私は…私はあなたに…この荒廃した未来をあえて選んで欲しかった…! 自分が消されてでも…あなたが歪みによる犠牲を払うこともなく、未来本部による支配から解放されて、自らの力で未来を覆すことに賭けたかった…!」

「20秒…」

ユカの言葉は、悲痛な叫びとなった。その言葉が、美久の心臓をえぐった。

ユカ:「私が本部からの指示に背いて、あなたを消さず、あなたが荒廃した未来を確定させたから…私を消す命令が…!」

ユカの足元から、微かな光が漏れ始める。

「10秒…」

ユカは、最後の力を振り絞り、美久へと手を伸ばした。

ユカ:「生きて…! 美久…!あなたならきっと未来を変えられる…」

彼女の瞳から、一筋の涙が零れ落ちる。

ユカ:「あなたと…あなたとの友情は…本物だった…!」

「3…2…1…」 

ユカの言葉が途切れる。 

「0!」

耳をつんざくような激しい閃光が、部屋全体を包み込んだ。美久は、思わず目を閉じた。熱い風が吹き荒れ、視界が真っ白になる。

光が収まり、美久がゆっくりと目を開くと、そこにユカの姿はなかった。
 ただ、その場に、焦げ付いたような匂いと、微かに残る電子音が響いていた。 
ハルキが美久の肩を強く抱きしめる。
美久は、何も言えなかった。 
親友が、目の前から消え去ったのだ。
 美久の目から、とめどなく涙が溢れ出した。
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