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2.新居からの新生活

21.聞く方にも覚悟がいる

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 教室中が騒然そうぜんとなったので、今のうちにとお弁当をかき込んだ。

「ひ、否定しない、ってことは肯定こうていってことだね?」

「キョウちゃんはサクセスした……」

 覚悟して受け入れはしたけど、はたから見たらおそわれたってことになるか。

「女と男の機微きびって微妙びみょうでしょ? 旦那だんな様の名誉めいよに関わるので──」

「旦那!」

「グフッ」

 二人が吐血とけつしそうな勢いでいた。

「だ、大丈夫? 二人とも」

「は、話して……死んでも死にきれない」

「ふぅ~、ふぅ~」

 死んだらダメでしょ。てか、死なないでよ?

 昨夜のことなら婚姻こんいん後だから問題ないか……。

「二人、対面でご飯を食べたの。お手伝いさんは帰っていないから二人っきり」

「そこから? でも、ご飯は大事」

「ふんふん」

「ご飯を食べ終えて休んでいるとお風呂が入ったってチャイムが鳴って……」

「ふ、お風呂」

「まさか……」

「どちらが先に入るかゆずり合ってたら、だん──主人が……」

「ウグッ! しゅ、主人」

「まだ……お風呂に入るまではって、私の心臓」

「もう、止めようか? 想像通り一緒に入ったのよ?」

「一緒に、お風呂……」

「まだ、まだ心臓は動いて、いる……うぐっ」

 男子二人のお弁当が紅く染まる……。君たち、興味を優先する前に耐性をつけた方がいいよ。

 見回したら周りの女子も死屍しし累々るいるいていをなしている。

「男子のワイ談はエグいってネットで言ってたけど……

「一緒に風呂……未知の領域」

「……私は、もうダメだわ」

「風呂くらいで……ゴホッ、ゴホッ」

 お風呂を一緒に入るってだけこれ程とは……。でも全然、話してないんだけどね? 

 この先、オブラートに包んで話しても婦夫ふうふめごとまで言うのはダメだろうな。

 ネットに溢れているのは、想像の域を出ていないから仕方ないのかもね。所詮しょせん虚構きょこうだととらえているのかも。

 まあ、現実もまぎれているんだろうけど判断材料も少ないので検証もできないだろうし、何より当事者の男子から言うことで生々しさがアップされて感じるのかも。

 ボクはご飯も食べ終わったし、時間を確認するとそろそろお昼休みの時間も終わりだ。

「きょ今日はこれくらいにしとこう、か?」

「一日、生き延びた」

「同意」

 ガタっという教室のドアの方の音に振り返るとアンナさんのブラウンブロンドが見えた。ドアの向こうで倒れている。

 またのぞいていたのか? ちゃんとご飯食べたんだろうか。


 午後からの四時限は、保体倫理りんり。正式には保健体育・生殖せいしょく倫理りんりだ。

 女子は体育でサッカーをやってるらしい。

 男子は、おじさん先生、生垣きがき先生が生殖倫理の座学授業にあたる。五十代と聞くその見た目はもっと年上でくたびれて見える。

 全校の男子が搾精室横の待機室に集まり授業を受ける。

 運の悪いことに、今日の内容は婦夫生活の送り方で、ボクたちにはタイムリー過ぎた。

「先生! 蒼屋キョウくんが結婚しています」

 授業が始まるやいなや、ミナちゃんが曝露ばくろした。

「ほう……。婚約はありますが、高校に通っている人は卒業間近や卒業してから婚姻するのが通例ですから早いですね」

 では、と言って男子の婚姻による有為性について語っていく。

「──ですから、多くの女性と婚姻し、たくさん子供をもうけることで社会が安定し、人が種族として安定するのです」

 話は婚姻の話から原初に戻り、絶滅ぜつめつした男を復活させるため女から生み出されたこと。のこった男の遺伝いでん子を基礎ベース調整デザインしたため、旧男性﹅﹅﹅の弱点をカバーできているはず。

 だけれども、まだ途上で男性の母数を増やすため子を作り、調整を続けなければいけない、と告げた。

「女性に男の遺伝子の大分を受け持ってもらっています。我々は女性から生まれたので女性の部分もあるのです。女も男も互いに助け合っているのです──」

 だから、多少のことは、許してあげましょう、とめくくった。

「先生、蒼屋くんに新婚生活の様子を聞かせてほしいです」

 ミナちゃん。あんた、それほど聞きたいのか?

「ふむ……。この中で婚約している人は?」

 ボクも含めて先生たちが部屋を見回すと五~六名がずかしそうに手をげていた。

 皆、上級生で三年生が多い。やっぱり一年では早いんだ。

「蒼屋さん、話せる限りで話してかまいませんよ。本来、秘められるべき事柄です。皆さんも聞いたことは口外しないように」

 生垣きがき先生に手招てまねきされて、しぶしぶ上座かみざに移動した。話さなきゃダメか……許せる限りと言ってもねえ。
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