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2.新居からの新生活

29.赤井親子と

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「先輩は、ずっと手前の駅ですよね?」

「そうだが、それが何か?」

 一つ電車をぎ、自宅の最寄もより駅を出るのに先輩も付いてくる。

「暗いのに、ひとりで帰らせられるか?」だって。至極しごくごもっとも。

 電車の事件が無ければ、一人で帰れたかも知れないが、今回のことでとてもじゃないけど帰れそうもない。

 しかし、遠回りだし時間は取られるし、先輩には申し訳ない。今度、め合わせしなくちゃ。

 駅からかなり歩いてやっと自宅に帰着。やっぱり歩きじゃ通学はムリっぽいな。

 駅までかなり歩かされるんじゃ、体力のないボクには無理だ。

 こういう高級住宅街では、自転車か車、あるいは送りむかえがないと生活できない。

 自転車の都合つごうが付くまでは、マキナに送ってもらうしかないのか。


 玄関先の道路に赤井さんがたたずんでいて、ボクたちを見付けると走りって迎えてくれた。

「お帰りなさい。心配しましたよ?」

「ただいま。ご心配おかけしました」

 それで、なんであんたが一緒いっしょなのよ? と赤井さんが先輩に問いただす。

「まあ、色々あったんだよ」

「ま、まあ、上がってください。赤井さん、先輩のご飯くらい、ありますよね?」

「え、ええ。あると思いますが、この子大食いですからね~」

「親に似たからしょうがないだろ?」

「あんたは、ただの無駄ムダ飯食らいだよ」

「うるせぇ!」

 そんな親子のやり取りを見て、ボクは感じたことのない親子の温もりを感じた。

 今夜は母さんに電話してみようかな?


「さあ、入って入って」

「あっ! キョウ様、待って!」

 ケイト先輩を連れて家に入ろうとして赤井さんに止められる。

 なんだろうと思いつつ玄関に入るとキュウキュウとどこからかかん高いアラームが鳴る。と同時に携帯端末がふるえた。

 辺りを見回しても音源おんげんが分からない。すぐに音は止まったので誤報ごほうか? と思っていると赤井さんが先輩を外に引きり出している。

「御仕事中、すみません。侵入報は間違いです。……はい、はい、一時パスを発行していただけますか? ……はい。ケイト、端末だして!」

 玄関ポーチで赤井さんがどこかに電話している。かなり切迫した感じだ。ケイト先輩は呆然ぼうぜんとしている。

 門柱の陰から明滅めいめつしている赤い光が辺りを照らしていた。異変がこの家に生じたのをしらせている。

「すみません。赤井さん、ボク……」

「すみません、あとにしていただけますか?……。はい、あとはキョウ様に。失礼します」

 電話相手──たぶんマキナの指示をあおいでいるのだろう。先輩と端末の操作をして、電話を切った。

「あの──」

「キョウ様、端末でケイトを承認しょうにんしていただけますか?」

「あ、はい」

 鬼気ききせまる赤井さんの指示で、ボクの端末に受信した先輩からの承認要求──家に入る許可を与える。

「あとは、自室のコントロールパネルで警報を止めてください」

「はい!」

 赤井さんの語威ごいに押されて家に飛び込んだ。ええっと自室のコントロールパネル……って、アレかな?

 階段をけ上がって、部屋のドアわきにあるコントロールパネルを見る。

 赤く点灯したランプには〝侵入〟の表示。回りは特に関係ないスイッチばかり。

 と、上に警報解除のボタンがあったので押してみる。すると承認の入力を求める表示がされた。

 また携帯端末から承認コードを送信すると、赤いのが消えた。

「やっと止まった……」

 脱力だつりょくして玄関に戻りポーチに出ると、赤井親子がかしこ待っていた。(←省略・短縮したら誤字脱字っぽい)

 門柱の赤い光も消えたようだ。

「申し訳ありません!」

 赤井さんが最敬礼で腰を折り、ケイト先輩の首根っこをつかんで頭を下げさせている。

「いえ。ボクの方こそすいません。手順をよく分からなくて……」

 いや、あやまるのはこちらですよ。

「そうです、ね。キョウ様には自重していただかないと。軽はずみな行動はつつしんでいただきませんと、おささえする者が困ります」

「俺──私も軽い考えだっ、でした。申し訳ありません!」

イヤだなあ~。ボク──私が、悪いので謝らないでください。それから、言葉つかいは普通でお願いします」

 言ってる最中さいちゅう、お腹がくう~っと鳴った。

 なんとか二人を取りなして、皆で家に上がる。

 もう警報は鳴らないと思ったけど、玄関の敷居しきいおそる恐るまたいでしまった。自分では鳴る可能性がないのにね。
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