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2.新居からの新生活

41.ベッドの秘密

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「おおおっ!」とタマちゃんの大きな感嘆で皆がこちらに興味を示した。

 マキナ、なんて物を隠してるんだよ!

「タマちゃん、そこはダメ!」

 引き出しを押し込むとタマちゃんを羽交はがめしてベッドから引き離した。

「……今夜は寝かさない?」

 寝かさない? って何。

 タマちゃんの独白どくはくに何だろうと視線を追うとボクの携帯端末に表示された通信文を読んでいた。

〔キョウ! 首──身体を洗って待っていろ! 一晩中お仕置きだ!! 今夜は寝かさ──〕

 読んでいたら涙がにじんで画面が見えない。

 最悪だ~! どうして……こんな事に。

「なんかあったのか?」

「なんでしょう……か?」

 皆の興味が集まって来てしまった。取りあえずタマちゃんにもレッドカードだ。

「キョウちゃん、オール|(ナイト)でお仕置き、決定」

 そして、耳目じもくを向ける皆にタマちゃんが曝露ばくろしてしまう。やめて~。

「そ、そうです、か?」

「良かった、な?」

 見回すと同情なのか達観たっかんなのか、複雑な表情をして目線をせている。

 心無しか、赤井さんや護衛のふたりも顔を伏せて肩を小刻みにらしていた。

 よく見ると携帯端末を握っている。マキナから指令が行ったのかもしれない。

 皆、助けてくれて良いんですよ。

 五月ヶ原くんだけは、苦い表情だけど。

「テラスを見てよ。凄いよ?」

 話題を変えようとしてみたが反応はかんばしくない。机や本棚の三人は何やら落胆らくたんしてる。

 たぶんアレな本を探してたんだろうけど、私物はほとんど持って来てないからね?

 タマちゃんが、もう分かったと拘束こうそくくように懇願こんがんしてくるので放した。ところが、だ。

「クローゼットがない?」

 想定通りにタマちゃんが気づいてしまう。気づいちゃったか……。

 ベッドに座っていた水無ミナちゃんが、それだ! っと叫んでガバッと立ち上がった。

 それはそれとして、テラスでも見ないかと再度、誘導ゆうどうするけど失敗した。

「別の部屋に置いてるから、ここにはないよ」

「あり得ない」

「そうだよな? キョウちゃん、今すぐ普段着か部屋着に着替えてよ」

「グッ……それは……」

 チラッとクローゼットの鏡の壁を見たら五条先生がそこで仁王立ちしてこちらを見てる。まさにとびらになった鏡の前だ。

 鏡のナゾに気づいた、けど守ってくれている? まさか、ね?

 トテトテとタマちゃんが五条先生の方、鏡に向かって行く。なんて鋭いんだ。

 てか、鏡張りってどこのダンススクールだよ? って感じだもん。

 タマちゃんを開放したのは間違いだった。その歩みの後ろを付いていく。

 安易に引き戻すのは愚策ぐさくだ。「そこには有りませんよ(振り)」に等しい。

 皆を見回すけど、各々おのおの好き勝手していて気づいていないが、助けてくれそうにもない。

 そこのマキナ側のひと、なんとかして!


 鏡の壁に向かうタマちゃんを放ってもおけず、そのあとを付いていく。

 鏡の前に着くと鏡面を凝視ぎょうししたり、顔を近づけて見たりしている。

 内心は焦っているけど、挙動に出さないように平静を装ってはいる。

 ドアの側の赤井さんや護衛の歩鳥ほとりさん、斎木さいきさんに目配せしても反応が薄い。

 まあ、クローゼットが見つかったからと言って彼女たちにはしたる問題ではないのだろうが。

 と、赤井さんの表情が歪んだと思ったら、いきなりスカートをまくられた。

「ほいっと!」

「きゃん!」

「うわっ! イヤらしい下着穿いてる」

 いつの間にか後ろに付いてきていた水無ミナちゃんが、ボクのスカートの裾を捲ってきていた。

「見て見てタマちゃん」

「やめて、水無ミナちゃん」

 水無ミナちゃんがタマちゃんにも見せようとスカートを掴んで放さない。

 その手に抗うが、さらに身体が抱えられてスカートを押さえられない。

「むふっ……ん、ん~?」

「ほらほら、ヒモだよ、ヒモ」

「知ってる」

 タマちゃんが鏡から目を離してこちらを見てきた。ボクの方に来るか留まるか、首をかしげて逡巡しゅんじゅんしてる。

 興味を鏡から外せはしたが、こんなのは不本意だ。

 今日も布面積の少ない下着を穿いている。穿いてみると、お尻部分の生地が捲れるのを直さなくても良くて快適だったりする。

 そんな事はさておき。

「やめて、水無ミナちゃん。怒るよ?」

「もしかして……ご主人様に穿かされてる、とか?」

「ぐっ……黙秘します。じょ、女子が見てるから、やめて!」

「はい、黙秘は認めたって事だよね~」

 水無ミナちゃんは女子が見てるのを確認すると、やっと止めてくれた。

 無理に引っ張られてスカートのプリーツが崩れてしまった。シワも酷い。

 予測で言った女子の様子だったが、ボクも確認すると文芸部はベッドの陰からこちらを覗いていた。

 なんて所から見てるんだ。

 羽鳥来はっとりさんは、窓際でそっぽを向いていたので見ないようにしてたっぽい。

 五月ヶ原くんも目を逸らしてくれたらしい。赤井さんや護衛のふたりも同じく。
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