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3.喜多村本家に居候

77.八年後の約束(エンゲージ)

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 膝には順番に座らせると約束して、まずタンポポちゃんを抱える。

 背中を預けてくれるといいんだけど、どうしても対面で座る方が良いらしい。

 顔を突き合わせているのが安心するのかな?

「キョウ、今日から私の部屋で寝るのよ?」
「いやだよ。ボクにも部屋もらってるんだから、そっちで寝るよ」
「ダメ。キョウはもう妻なんだから私と一緒に寝るの」
「それは、おままごとの妻だよね。タンポポちゃんなら、あと八年先じゃないと結婚できないよ」

 タンポポちゃんは、十才だから十八まであと八年だね。

「八年って、あと何年待てばいいのよ。私の人生の大半じゃない」

 まあ、確かに。十才までの人生をもう一度やるくらい、まだあるからね。

 って、話しながら揉んだりポッチを摘まんだり引っ張ったりしているタンポポちゃん。

 ジンジン、地味に利くんで止めてほしい。

「八年なんかすぐだよ。その時、タンポポちゃんがまだボクを好きなら妻になってあげる」

「本当ね? 本当になるのよ」
「うん。約束する」

 今度は、アリサちゃんと座るのを交代。マナちゃんは、くすぐりを恐れて近寄ってこない。

「じゃあ、私も! 八年待つ」
「アリサちゃんもボクと結婚するの? でもアリサちゃんはあと十二年もあるよ?」
「頑張って待つ。きっと妻にする」
「分かった。その時、まだボクを好きなら妻になるよ」

 十二年先か、六才からすると途方もない時間だろうな。ボクは、二八……か。まだ大丈夫、男として。

 そもそも、八年先、十二年先、覚えちゃいないだろう。そんなころ、くたびれたボクを受け入れられるとは思えない。

 たぶん、もっと好きな子ができてるな。きっと近い年の人を好きになってる。

「私も……」

 アリサちゃんとマナちゃんが代わる。恐る恐る膝に乗ってくる。

「マナちゃんも?」
「うん」
「じゃあ、皆で鉄の誓いを立てるわよ」

 タンポポちゃんがまた変なこと、言い出した。

「何それ?」
「この三人でキョウを婿にする誓い」
「面白い、やる」
「うん」

 なんか、すごいことになってるね、婿取りの誓いとか。

 それは良いとして……マナちゃんの忌避感が和らいだが、タンポポちゃんと同じ、向かい合わせに座りたがる。

 そして胸のぽっちを摘まんだり引っ張ったり。マナちゃんもそうしてくる。

 マナちゃんにいじられて、ジクジク痛い。

「赤ちゃんいないから、おっぱい出ないよ?」
「うん」

 マキナもまだ赤ちゃん出来てないからね。産まれた子を抱いたら変わるらしいけど。


「そなたら、何をしておる?」

 サキちゃんが服を着たまま風呂場に乱入してくる。

「サキちゃん、ここは風呂場だよ? 服、脱いで入ってきなよ」
「そんなことは、どーでも良い──」

 と言いながらワンピースをサキちゃんは脱いでいく。

「──なぜ、迎賓館こっちで風呂に入っておる?」

 そんなとこに服を脱ぎすてると濡れて……まあ、いいか。

「皆が一緒に入りたいって言うから」
「キョウに洗ってもらった!」
「私も! ぬるぬる遊びした!」
「私も……」

 幼女ーズが一斉に答える。

「なんじゃと? キョウよ、そなたゆるゆるじゃな? して、ぬるぬるとは何じゃ?」
「ソープをつけて洗いっこ」
「なんじゃと! キョウ、わしもひとつ──」
「サキちゃんは自分で洗えるでしょうに」
「──くっ! もっと早く気づいておれば。乗り遅れたわ」

「私、キョウに乗った」
「私も乗った」
「乗った」

 その「乗った」は勘違いされるよ。

「ぐぬぬ……幼女に手を出すとは、そなたはびっちじゃな」
「失礼な。どっちかっつーと手を出された方だよ」
「分かった。マキナに遠慮しておったが、わしも遊んでやる。風呂から出ろ」
「そうだね。温まったし上がるか」

「「は~い」」
「は~い」
「そうではない──」

 浴槽の前で仁王立ちするサキちゃんを見る……。サキちゃんは、全部ぬいでしまっていた。

「プッ」

 思わず吹き出した。おままごとでは脱がなかったサキちゃん。

 皆を幼女呼ばわりするけど、自分もまだまだ子供じゃん。

「そなた、何を吹いておる……」

 サキちゃんを放って、ボクたちは浴槽から上がり、サキちゃんを残して脱衣場へ。

 体を拭いて肌着から服から、皆を着せていく。

「──そなた、聞いておるのか?」

 サキちゃんが脱衣場に戻り怒鳴ってくるけど無視する。

「お湯に浸からないと風邪ひきますよ?」
「うるさいわ」
「さあ、みんな部屋に戻るよ~」
「「「うん!」」」

 やけに素直だな……嫌な予感が……。

 いや、嫌な予感しかしない。
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