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3.喜多村本家に居候

129.出迎え準備する

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 リビングを通り抜け寝室に飛び込む。

「ミヤビ様、ボクの荷物知らない──じゃなかった。ご存じですか?」
「その入口近くのクローゼットに仕舞しまってある、はずじゃ。レイニが──」
「ありがと」

 ミヤビ様へお礼の言葉もそこそこ、入口の方に目を向ける。ミヤビ様たち、ごろごろしてないで早く服着て?

「はあ、なるほど」

 また、分かりづらくかべに溶け込むようにクローゼットがしつらえられてる。

 ドアを開けて中を見るときれいにハンガーでるされてる。

「何をされておるのです?」
「え~、友達が蒼湖おうみに来たので迎えに行こうかと……」
 レイニ様が体を起こして訊いてくる。

も一緒に──」
「おひかえください。ぴゅっと行って帰ってくるだけです」
「──義兄上あにうえだけズルいですぞ? 友とか言い訳して街で〝あばんちゅーる〟をたのしむ目算つもりでしょう?」
 ひどい言いがかりですよ。

「いや、ちがいます。迎えるのは男ですし、乗れる人が限られますので」
「人ひとりくらいならば付いて行っても大丈夫では?」
「そ、それは……」
「決まり、です。も着替えねば……」

 一番やっかいな人が付いてくることに……。着替えながらミヤビ様をうかがうと……にやけてる? ご自分は行かなくてもいいみたい。なら、助かる。少しだけど。

義兄上あにうえ、これ、これはどうですか?」
 レイニ様が空色のワンピースを体に当てて訊いてくる。

「よろしいじゃないですか?」

 なんか見覚えあるな~って思ったら以前買ったヤツかな?

「では、これにします」
「ボクはこれかな~?」

 お腹のところにひまわりが咲いてるワンピース。肌着を脱いで替えワンピースを着付ける。

 レイニ様をうかがったら全裸ぜんらになってワンピースを着ようとしてる。

「レイニ様、肌着を着けないと」
「そうですか。あれはめ付けるので、あまり好きではないのですが」
「洋装では着けないといけません」
「そうなのですね……」
「これとかどうですか?」
 普通のキャミソールとショーツを渡す。穿いてないと風にまくられて全て見えてしまいますよ?

「分かりました」
 受け取ったレイニ様が穿いて着る。

 吊るされた服をなんとなくながめると知らないものもある。レイニ様のものかな?

 そこからみちびきだされる推論すいろんを頭を振ってかき消す。

 ワンピースにそでを通したレイニ様の後ろリボンをくくってあげる。

「ありがとうございます」
「いえ。……あの……レイニ様は──いえ、なんでもないです」
 浮かんだ予想を聴こうとしてやめる。

「なんですか、義兄上あにうえ。それからレニとお呼びくだされ」
「はあ~分かりました、レニ様」
「〝様〟も要りません」
「それは……ご寛恕かんじょください」

「キョウ、どこ行くの?」
 寝起きのタンポポちゃんが聞く。

「ん~、友達が来たらしいから迎えに行くの」
「私も行く」
「すぐ帰ってくるから待ってて」
 タンポポちゃんを連れていって、マナ・アリサの二人を連れてかないワケに行かない。ここは我慢ガマンしてもらおう。

「……分かった」
「すぐ戻るから……」
 なんとか思いとどまってくれた。

「では、義兄上あにうえ参りましょうぞ」
「え? はい」
 レイニ様──レニ様がボクのうでを取り引っ張っていく。

「行ってくるね」
 そう告げるけど、タンポポちゃんが歯噛はがみしてる気がする……。


「お待たせしました」
 一階に降りて玄関を出るとサキちゃん他、警護と護衛がそろってる。

「警護たちが付いて行くと言うておるぞ」
「我々をお連れください」
「いえ、私たちです」
「いや、私たちを……」

「それじゃ、みんなお願い。さささんと打木うちきさんは同乗して他は分乗して」
「「「ありがとうございます」」」
 念のため、みんなに付いてきてもらおう。リムジン二台とワゴンに分かれる。

「では、頼んだぞ」
 サキちゃんに見守られ車に乗り込む。

 ボクのとなりにレニ様、正面に笹・打木コンビが座り出発する。


 蒼湖おうみ中央駅はみずうみの南側。近くのショッピングモールに行くのとは違い、かなり遠い。

「ビワ湖を迂回うかいしなきゃいけないから時間かかるよね?」
「いいえ、湖を突っ切るのでそれほどは掛からないはず」

「そうです。ビワ湖空港島を経由して南に渡りますね」
 インターホンで運転手と会話して打木さんが確認する。

「そうなんだ……。早いに越したことないけど。どれくらいだろ?」
「さあ、おそらく小一時間ほどでしょう」
「ふ~ん。モール行くのと変わらないね」
 心配なのは、通行料のお金かかるだろうな~ってことだけど。

 取りあえずタマちゃんたちに連絡しとくか。

〔キョウ:今、出発したよ。小一時間くらいかりそう〕
水無ミナ:うん、待ってる〕
〔タマ:キョウちゃん、早く早く犯される~〕

〔キョウ:タマちゃん、大げさ。水無ミナちゃんは泰然たいぜんとしてるよ?〕

義兄上あにうえは初めてです」
 いきなり、となりから声がかかる。

「へえ~、そうなのですね。私はこちらに来る時、空港から渡って来ました。南は初体験です」

〔タマ:水無ミナは不感症。熟女ピューマが舌なめずりして見てきてるのにへらへらしてる〕

も南は初めてじゃと思いますよ。一緒です」
「はあ~、そ、そうですね」

 なんか密着みっちゃく度が高いです。うでからめてくるし、ど~なってんの?
 タマミナと連絡しづらいよ。

水無ミナ:舌なめずりは言いすぎ。男が珍しいだけだよ〕
〔タマ:あれはすきうかがってる。いつ飛びつくかタイミングを図ってる〕

 なんのかんの言ってるけど、二人は大丈夫そうだね……。

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