200 / 203
4.本家からの再出発
200.バイトのお誘い
しおりを挟む「うぐっ……もう食べられない……」
「ほとんど食べてるじゃないか」
「まあそうだけど……。マキナも食べられて良かったね?」
「まあな」
味が物足りないとか言ってスダチやレモンを追加、リゾットやお粥に搾りかけてマキナは食べてた。ともかく食べられて良かったよ。
「あのえずきってアレだよな」
「おそらく、アレだな」
「なに? アレって」
こそこそ話す歩鳥さんと気更来さんに訊く。
「あ~、いや、まだ話されないので私からは何とも」
「アレって言えばアレです。伝説上の」
「お前たち、マキナ様が認めないものを軽々しく話すんじゃない」
気更来・歩鳥の話を笹さんが止めてしまう。
「何なのさ~、アレってマキナに関係してるの?」
「マキナ様が話す機会までお待ちください」
「羽衣や斎木なんかキョウ様相手なら✕✕できるって精漿注射してたんですよ」
「あのあとも✕✕したって注射つづけてるんですよ。笑っちゃいますよ……ね」
一気に話のトーンが落ちる。何だと思ったら隣から声なき圧力がかかってた。
「何かマキナの話みたいだけど……」
「気にするな。お前は買い物リストでも考えてろ」
「はい……」
何かマキナこわ。アレとか✕✕が何なのか聞けなくなったよ。
コーヒーで食休みしているとスーツを着た年嵩の女性がウエイトレスを連れテーブルにやって来る。
「マキナ様ですね。店長を務めます井原と申します」
「あ~これはどうも。わざわざ恐縮です」
マキナがテーブルから外れて立ち上がり店長さんを迎える。ボクも慌ててマキナに倣いブースから出てマキナに並ぶ。
「モール勤めになられるとか」
「はい。近日、正式な場でご挨拶できるかと思います」
「それで……」店長さんはボクに視線を向ける。
「ん? あ~。これは夫のキョウです」
「はじめまして、キョウと申します。マキナがお世話になります」
「キョウ様、はじめまして。キョウ様もこちらでお勤めになるとか……。是非ともレストランをよろしくお願いいたします」
「いや、まだ正式に決まってませんが」
「キョウちゃ──キョウ様、一緒にウエイトレスやりましょ」
「キョウちゃ──様が来てくれたら楽しいです」
「いつから来れますか?」
「そんなこと言われても」
「お前たち、止さないか」って群がるウエイトレスたちを店長さんが止める。
「まだ、決定していませんので、何とも……。二、三日中に契約してからです」
「あ~そうそう」
契約とかがまだだったよ。
「そう、ですか……」
「じゃ、じゃあ写真、一緒に撮りましょう」
「それいい! 撮りましょ撮りましょ」
「は、はあ~」
「おい、お前たち失礼だぞ」
一応、店長の井原さんは止めてくれるけど。
写っていいのかマキナを窺う。しぶしぶマキナが頷く。「それじゃあ」と了承する。
「やった~」
「「こっちこっち」」
「え、えっ? ちょっとぉ~」
ウエイトレスのお姉さんたちに引っ張られて奥へ進む。スタッフルームのドアをくぐると休憩室と更衣室がある。
その更衣室に連れ込まれる。いいのかな~?
「Mかな~Sかな~?」
「あの~一体なにを?」
空きロッカーからラップされた衣装を取り出し見比べている。
「ウエイターの制服。あ~Mかな?」
ウエイターの制服とやらの裑を体に当てて吟味してる。
「あの、もしかしてソレに着替えろ、と?」
「そうそう。Sは……ちょ~っと小さい、か?」
もう一人も別の制服を当ててくる。制服ってさ~エプロンドレスっていうか、メイド服なんですけど~?
そんな恰好じゃお給仕しかできない……ああ、お給仕で合ってるのか。
「ん~~むしろLを着てもらう?」
「面倒だから全部着てもらう?」
「「それいい!」」
いや、よくないよ。
「じゃあ、まず無難なMで」
ってMサイズだという制服を渡される。
「あの~出ていってもらえます?」
「一人で着替えられる?」
「着替えられますよ。それくらい」
「そう。じゃあ外にいるから手伝いが要るなら言って? 一人じゃ着られないんだけど……」
「何か聞捨てならない言葉が聴こえましたけど?」
「気にしない気にしない」
気にするよ。
「さて……」
パッケージから出して眺めてみる。広げて前裑、後裑を見て絶句。背中がぱっくり開いてるじゃん。それに前はエプロンで隠れるけど後ろはお尻が見えるくらい超~ミニじゃん。
こんなの誰も着ないよ? なに考えてんのさ。
騙された……こんなの着るなら時給一万でも安いわ!
苦悶してる間にドアからノックがする。
「どう? 着られそう?」
「着れません。ちょっとマキナを呼んできてもらえます?」
「え~~、ここはスタッフオンリーだから部外者は呼べません」
何だ、その屁理屈は。
「あの、マキナも社員になるんですけど?」
「残念。まだ正式に辞令も出てないから社員じゃありませ~ん」
「そう言われるとボクもバイトじゃないんですけど?」
「バイトは準社員だし、今は採用試験みたいなものだから」
「鯉はおとなしく俎板に載ればいいんですよ」
「…………」
ぐぬぬぬぬ~、騙されたばかりか嵌められていたとは。端から着せられる運命だったのね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
41
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる