妄想日記1<<ORIGIN>>

YAMATO

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Chapter27(青春編)

Chapter27-⑭【Hello, Again~昔からある場所~】

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瞼がひどく重い。
それでも明かりを求めて、抉じ開ける。
悪い夢を終わらせたい。
「タケル、目を覚ましたよ。」
ユーキが覗き込んでいる。
「本当か!」フレームにタケルが加わった。
大切な事を思い出す。
「ねぇ!今は何日の何時?」
半身を起こそうとして、顔を顰める。
強烈な痛みに襲われた。
「おいおい、無茶するな。
傷が深いから、一週間の安静だ。」
タケルが布団を掛け直す。
「約束の7時にはまだなってないけど、今日は無理だよ。
連絡して、来てもらいなよ。」
ユーキがスマホを渡してくれた。
 
「三浦は?」悪夢の内容をはっきりと覚えている。
「自分の心臓をひと刺しさ。
即死だった。」
タケルが短く説明した。
やはり夢ではない。
現実に起こった出来事だった。
「ねぇ、キョウヘイはどこ?」
病室の中に姿はない。
「それが警官や救急隊員がやって来て、混乱している隙にいなくなっちゃったん
だ。」
ユーキが心配そうに、部屋を往来する。
「早く探さないと、面倒な事になる。
三浦が死んで、キョウヘイが唯一の目撃者だからな。」
タケルの表情が曇った。
「俺達、これからキョウヘイが立ち寄りそうな場所を探して来る。」
タケルは既に皮ジャンを着ていた。
その行動力に感心する。
ユーキは狼狽しているが、タケルが付いていれば万事上手くいく気がした。
結局また頼ってしまう。
「うん、分かった。」
返事をした時、ドアが開いた。
母親が目を見開いて、立っている。
ベッドに駆け寄ると、しがみついて泣き出した。
「本当に今回はありがとうございました。」
母親が深々と頭を下げる。
「じゃ、俺達は行くから。」
タケルがドアを開けた。
「欲しい物があったらラインして。
買って来るよ。」
ユーキがタケルの後を追う。
何かを忘れている気がした。
しかし思い出さない。
 
「ねぇ、ちょっと待って!
写真撮ろうよ。」
二人に声を掛ける。
「何だよ、こんな時に。」
ユーキが不思議そうな顔をする。
「まあ、青春の1ページになるさ。
笑って話せる日が来たら、これを肴に飲もうぜ。」
タケルが横に立つ。
これからホテルの再建に向けて、重責の日々が待っている。
やんちゃはこれで終わりだろう。
ユーキはベッドに腰掛けた。
カメラモードにしたスマホを母親に渡す。
「はい、撮りますよ。
笑って下さい。チーズ!」
フラッシュが眩しい。
「お母さん、俺のでも撮って下さい。」
ユーキが自分のスマホを差し出す。
「はい、チーズ!」
掛け声と同時に、ユーキが脇を擽る。
「アハハ、痛いよ!」
笑った時に、フラッシュが光った。
 
「じゃあ、母さんは一度家に戻るわ。
着替えを持って、また明日来るから。
ちゃんと寝てるのよ。」
幾つになっても、母親は母親だ。
「うん。疲れたから寝るよ。
気をつけてね。」
声を掛けると、布団を顔まで引き寄せた。
夕闇が部屋の中に忍び寄る。
そっとベッドから降り立つ。
腿に痛みがあるが、歩けない事はない。
服を着替え、病室を出た。
待ち合い室にはツリーが飾られ、入院患者達も思い思いにクリスマスを楽しんでい
る。
そこを通り抜け、タクシー乗り場に行く。
空車はなく、老夫婦が待っていた。
時計を見ると、6時30分を指してる。
時間は充分にあった。
ロータリーを回って、地下鉄の乗り場に向かう。
足に刺す様な痛みが走る。
しかし苦痛ではない。
記憶の中のクリスマスツリーが待っていた。
 
 
(つづく)
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