異世界ぎきょうだい不仁義~異世界にダークエルフとして転生したら、再会した弟分がハイエルフの令嬢になっていた~

呉万層

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6新天地

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 竜骨大陸南部の山岳地帯には、大小の鉱山都市が点在している。近隣の平野部にも街があり、規模は大きく住民を構成する種族も多様だ。


 大抵の街には、住民が集まる憩いの場がある。大きな街であれば石畳と芝生が整備され、様々な料理や装飾品、実用品を売る屋台が立ち並ぶ。平日や休日は昼食を摂り、祭りがあれば夜を徹して騒ぐ場所だ。


 住民内多数派のドワーフを筆頭に、只人、少数の亜人たちで広場はごった返している。青空の下、広い空間で適度な日差しと涼やかな風を楽しみながら過ごす時間は、大抵の種族にとって格別だ。


 自然に笑顔が零れ、持ち寄った弁当や屋台の料理を前にして、世間話に花が咲く。とはいえ、誰もが楽しめているわけではない。何事にも例外が存在するからだ。


「腹減ったな」


「減ったっすねぇ」


 広場から少し離れた路地裏で項垂れる男と少女も、例外に属していた。


 血や泥でいっそう黒くなった男は、ダークエルフの政信だった。


 旅の疲れでくたびれハイエルフは、カタリンだった。肌は、政信と同様に血と泥で汚れてきっている。もはや、無条件では白いとは表現できなくなっていた。


「なあミズキ。お前俺の上に立つって言ってたよな。なら、お前が親で俺が子だ。親は子を食わせる義務があるはずだ。常識知らずのお前でもわかる道理だろう?」


 言いがかりじみた説教する政信に、カタリンは間髪入れずに反論する。


「ミズキじゃなくてカタリンっす。あれから勝負してないんすから、まだ決着はついてないっすよ。それと、親だからって子供の面倒を見るとは限らないって、知ってるっすよね。それはそれとして、アニキはボクのアニキっすから、弟分の面倒を見るべきじゃないっすか」


「都合のいいことばっかり言うな」


「その言葉そっくり返すっすよ」


 僅かに言い争ってから、二人は黙り込んだ。


「止めよう。余計に腹が減る」


 政信の提案を、カタリンは黙って受けた。


 二人とも疲れ果てていた。


 ハイエルフの治める竜骨大陸北部の西王国から、ドワーフの勢力圏である大陸南部へ逃げ込むまでの一月半、二人は歩き通しだった。


 しかも、道中はまともな国の存在していなかった。只人の傭兵団や亜人種の氏族、宗教団体など独立武装勢力が割拠する地帯で、治安は最悪だった。


 半分農民半分野盗の住民と戦う羽目になったり、魔獣や野犬の群れに襲われたり、道案内に荷物を盗まれそうになったり、崖崩れや豪雨で足止めを食って立ち往生したりと、無数のトラブルに遭遇していた。


 ドワーフの治める街に逃げ込んだころには、二人ともボロ雑巾のようになっていた。


 恐るべきことに、大きな街の住人にとってボロ雑巾の二人組はさして珍しくないようで、あまり注目されていなかった。


 ドワーフの衛兵や様々な種族の子供たちに、チラ見される程度だ。


 政信が周囲を見渡せば、敗残の傭兵や故郷を追われた農民の家族など、薄汚れた者たちが、木陰や路地に点在していた。


 皆、政信たちと同じく流れ者だろう。簡素な天幕を張る者さえおり、このまま流民が増えれば、スラム街が自然発生しそうな有様だった。


 同じ境遇の者たちを横目にして、最後に調理された食事を摂ったのはいつだったろうと、政信は思いをはせた。


 意識が飛びそうになり、体力の限界が近いと確信する。政信の横で体育座りをするカタリンも同様なはずだ。いや、異世界ではお嬢様育ちのカタリンなら、限界を超えているかもしれない。か細い呼吸のカタリンに、手を伸ばす。


 袖のまくれたカタリンの腕に手が触れるや、思わず手を引っ込めた。


「なんすか」


「お前、熱が凄いことになってるぞ」


 カタリンの額に手を当てる。あまりの熱さに政信は愕然とした。
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