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お薬手帳
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薬がきれた・・・今夜は眠れないので夜間だが病院に行くことにした。
「いってきます・・・」
返事する者はいない・・・家族はもう僕を家族とも人間とも見ていない。年金も払えないゴミ、できれば可燃に出したいと思っていることは明白だ。
僕も昔はこんなではなかった。
元気でヤンチャで友達も沢山いて女の子にも何回か告白された・・・そんなキラキラした子供時代なんて過去で現在の僕は大卒でなんとか入った会社を先輩との不仲が原因で鬱病になり、そのまま退職した。
僕は悪くない・・・なのに先輩を非難する者も僕を気遣う同期も皆無だった。
「自業自得」
そんな風に一部の同期からは笑いながら囁かれていた。
僕は元気でみんなの人気者だったはずなのになんで、そんな僕をみんなが否定するのか訳が分からなかった時に病院への道を歩いていたら中学の同級生を遠目で見たが知らん顔された。妻にベビーカー・・・理想の大人の構図だ。アイツは中学の頃は気弱で僕は何度もからかって遊んだ。遊んでやったのに無視なんて酷い。
ふらふらと道を歩いていたら病院に到着したが本日の診療は終わりだと医療事務が告げたので僕は怒って薬が欲しいと駄々をこねたら奥から聞き慣れない声がした。
「特別に診療しますよ。どうぞ1番診察室へ」
その声に導かれて1番診療室に入ると普通の診察室に似合わない奇妙な人物が座っている。
カラフルなピンクの髪に瞳も派手な赤色になんと頭には鬼か魔物のような角が生えている。
「どーも、私は精神科医でもカウンセラーでもない。貴方の罪状を知らせに来た使者です。これから簡易的に貴方の裁判をします。終わるまで病院からは出られないのでよろしく」
「僕の罪・・・僕は苦しんでいるんです!!会社で先輩に虐められて・・・バカなことは言わないで薬ください」
何かの冗談だろと思い詰め寄る僕に角の生えた男は「ふんふん」と頷いてメモをしている。
「一方的な加害者意識・・・貴方は教育係の先輩が貴方の為に朝も早く来て貴方へのマニュアルを作成していたこと、ご存知ですか?なのにろくに読まず指示を無視してコピー用紙を無駄にしたり頼んだ仕事を忘れたのに報告しなかったり・・・先輩は貴方がいない方が仕事がはかどるけど貴方を思ってあれこれ注意してましたよ。それを貴方はパワハラと騒ぎ立てた・・・先輩に同情します」
笑いながらも目はまったく笑っていない奇妙な男の言葉に僕は反論した。
「でも!何かあるとすぐに注意ばかりで僕も疲れたんです!!」
「貴方さ~注意する立場の気持ち分かる?ほんとはバカな無能なんて放置したいんですよ。先輩は貴方を放っておけず嫌われるの覚悟で注意してました。叱るって苦痛なんですよ。貴方がパワハラパワハラと触れ回るから先輩も相当に辛かった・・・自己中の最悪の例ですね」
「アンタは何をしたいんだよ!!俺は患者・・・」
「はい、怒らない。言っときますが、その自己中な性根を改めないと薬のんでも同じです。貴方が病んで心配してくれた友達はいますか?恋人は?家族は?遠巻きに見られて孤独・・・それが貴方の性格がもたらした結果です」
次々と絶望的な核心を突いてくるピンク髪の男がニッコリ笑い僕を見て言った。
「私は責めてはいませんよ。経過と確認をしてるだけです。人気者と勘違いして残酷なことをする人間ってわりと多いですから・・・貴方は中学時代に気弱な生徒をからかい、ふざけて机にゴミを置いた・・・ゴミを置かれた生徒は今は家庭があり1児の父で貴方は無職で病気・・・楽しいですね!」
「楽しくなんかない!!これ以上、バカなことを責めるなら帰ります!!」
「いいですよー!私もだいたいのデータは取れたので・・・お大事に~」
医療事務から薬を引ったくると僕は病院を出たが、思えば今は夜中の2時だ。病院がやっている時間ではない・・・家に帰り、今日病院で処方された薬を飲むと不思議な夢を見た・・・中学の頃の自分が弱い生徒のイスにわざと腰かけ、その生徒が来たのに立ち上がらない夢、こぼした給食をわざと置いた夢、クラスのゴミランキングでゴミを机に置いた男子生徒の名前を黒板に書いた夢・・・
僕は楽しそうに笑っているが皆が僕を見る視線は軽蔑と憎悪・・・僕は人気者だったはず・・・皆が楽しそうに笑うからやっていただけなのに
連日のようにそんな夢を見て僕は薬が怖くなり、ますます情緒不安定になり家で暴れるようになり家族に病院に入院させられた。
「はーい!銀河メンタルクリニックへようこそ!!大分、弱ってますね~いい傾向です」
押し込められた病棟に現れた医者はあの夜の不思議な男だ。
「なぁ・・・僕は助かるのか?」
「う~ん・・・反省より自己愛が先だから当分はダメですね。僕は貴方の最低で無様な様子にとことん付き合うので遠慮なく弱ってください!!でないと貴方に傷つけられた人達の悔しさが晴らせません」
こうして僕は現在は銀河メンタルクリニックにいるが誰もお見舞いに来ない・・・両親さえも
夜は自分の笑顔とそれを見詰める憎しみの視線に苦しめられ叫んでも、暴れても誰も来てくれない。
そんな日々がしばらく続いた、ある日のこと僕に面会人が訪れた。前の会社で確執があった先輩だ。
「入院したって聞いて・・・今さらだけどゴメンな。俺の言葉が足りないせいで君を傷つけてしまった」
頭を下げて詫びる先輩に僕はゲッソリした顔で問いかけた。
「僕がいて迷惑でしたか・・・?」
「違うよ。俺の後輩指導が下手だったんだ。君が心配でついつい干渉した。迷惑だったのは俺だよ」
そう謝る先輩に僕は何も言えず泣き出すと先輩は優しく泣く僕の頭を撫でて言った。
「君は俺が初めて任された後輩だったんだ。だから、何があっても君だけの責任じゃない。俺も同罪なんだよ。色々あったけど俺は君の事が心配だし自分を大事にしてほしい・・・また、話そう」
そう微笑んで先輩は帰って行ったので僕が放心していると、ピンク髪の主治医が顔を出した。
「どうです、優しい人ですね。貴方のやるべきことは分かりますか?」
その言葉に僕はベッドからとびおりて帰るために病院の出口に向かっていた先輩に駆け寄った。
「先輩・・・色々とご迷惑かけて、不愉快な思いをさせてすみません!!」
先輩の手をにぎって叫ぶ僕に先輩は優しく笑うと言った。
「俺への謝罪は十分だ。今日を大切に生きて・・・君はもう大丈夫だよ」
それだけ言って手を振って去っていく先輩を見送っていた僕のそばに、いつの間にか主治医がおり笑顔で言った。
「明日、退院です!」
それから僕は銀河メンタルクリニックを退院して再就職活動をしてなんとか勤め先が決まった。
通院と薬も必要なくなり実家を出て独り暮らしだが先輩とは度々、家飲みしたりで会社にいたときより仲良くしている。
今日は先輩の自宅で飲む約束なので僕は仕事を早く終わらして先輩のマンションのチャイムを押してドアをあける時に冗談で行ってみた。
「ただいま・・・」
end
「いってきます・・・」
返事する者はいない・・・家族はもう僕を家族とも人間とも見ていない。年金も払えないゴミ、できれば可燃に出したいと思っていることは明白だ。
僕も昔はこんなではなかった。
元気でヤンチャで友達も沢山いて女の子にも何回か告白された・・・そんなキラキラした子供時代なんて過去で現在の僕は大卒でなんとか入った会社を先輩との不仲が原因で鬱病になり、そのまま退職した。
僕は悪くない・・・なのに先輩を非難する者も僕を気遣う同期も皆無だった。
「自業自得」
そんな風に一部の同期からは笑いながら囁かれていた。
僕は元気でみんなの人気者だったはずなのになんで、そんな僕をみんなが否定するのか訳が分からなかった時に病院への道を歩いていたら中学の同級生を遠目で見たが知らん顔された。妻にベビーカー・・・理想の大人の構図だ。アイツは中学の頃は気弱で僕は何度もからかって遊んだ。遊んでやったのに無視なんて酷い。
ふらふらと道を歩いていたら病院に到着したが本日の診療は終わりだと医療事務が告げたので僕は怒って薬が欲しいと駄々をこねたら奥から聞き慣れない声がした。
「特別に診療しますよ。どうぞ1番診察室へ」
その声に導かれて1番診療室に入ると普通の診察室に似合わない奇妙な人物が座っている。
カラフルなピンクの髪に瞳も派手な赤色になんと頭には鬼か魔物のような角が生えている。
「どーも、私は精神科医でもカウンセラーでもない。貴方の罪状を知らせに来た使者です。これから簡易的に貴方の裁判をします。終わるまで病院からは出られないのでよろしく」
「僕の罪・・・僕は苦しんでいるんです!!会社で先輩に虐められて・・・バカなことは言わないで薬ください」
何かの冗談だろと思い詰め寄る僕に角の生えた男は「ふんふん」と頷いてメモをしている。
「一方的な加害者意識・・・貴方は教育係の先輩が貴方の為に朝も早く来て貴方へのマニュアルを作成していたこと、ご存知ですか?なのにろくに読まず指示を無視してコピー用紙を無駄にしたり頼んだ仕事を忘れたのに報告しなかったり・・・先輩は貴方がいない方が仕事がはかどるけど貴方を思ってあれこれ注意してましたよ。それを貴方はパワハラと騒ぎ立てた・・・先輩に同情します」
笑いながらも目はまったく笑っていない奇妙な男の言葉に僕は反論した。
「でも!何かあるとすぐに注意ばかりで僕も疲れたんです!!」
「貴方さ~注意する立場の気持ち分かる?ほんとはバカな無能なんて放置したいんですよ。先輩は貴方を放っておけず嫌われるの覚悟で注意してました。叱るって苦痛なんですよ。貴方がパワハラパワハラと触れ回るから先輩も相当に辛かった・・・自己中の最悪の例ですね」
「アンタは何をしたいんだよ!!俺は患者・・・」
「はい、怒らない。言っときますが、その自己中な性根を改めないと薬のんでも同じです。貴方が病んで心配してくれた友達はいますか?恋人は?家族は?遠巻きに見られて孤独・・・それが貴方の性格がもたらした結果です」
次々と絶望的な核心を突いてくるピンク髪の男がニッコリ笑い僕を見て言った。
「私は責めてはいませんよ。経過と確認をしてるだけです。人気者と勘違いして残酷なことをする人間ってわりと多いですから・・・貴方は中学時代に気弱な生徒をからかい、ふざけて机にゴミを置いた・・・ゴミを置かれた生徒は今は家庭があり1児の父で貴方は無職で病気・・・楽しいですね!」
「楽しくなんかない!!これ以上、バカなことを責めるなら帰ります!!」
「いいですよー!私もだいたいのデータは取れたので・・・お大事に~」
医療事務から薬を引ったくると僕は病院を出たが、思えば今は夜中の2時だ。病院がやっている時間ではない・・・家に帰り、今日病院で処方された薬を飲むと不思議な夢を見た・・・中学の頃の自分が弱い生徒のイスにわざと腰かけ、その生徒が来たのに立ち上がらない夢、こぼした給食をわざと置いた夢、クラスのゴミランキングでゴミを机に置いた男子生徒の名前を黒板に書いた夢・・・
僕は楽しそうに笑っているが皆が僕を見る視線は軽蔑と憎悪・・・僕は人気者だったはず・・・皆が楽しそうに笑うからやっていただけなのに
連日のようにそんな夢を見て僕は薬が怖くなり、ますます情緒不安定になり家で暴れるようになり家族に病院に入院させられた。
「はーい!銀河メンタルクリニックへようこそ!!大分、弱ってますね~いい傾向です」
押し込められた病棟に現れた医者はあの夜の不思議な男だ。
「なぁ・・・僕は助かるのか?」
「う~ん・・・反省より自己愛が先だから当分はダメですね。僕は貴方の最低で無様な様子にとことん付き合うので遠慮なく弱ってください!!でないと貴方に傷つけられた人達の悔しさが晴らせません」
こうして僕は現在は銀河メンタルクリニックにいるが誰もお見舞いに来ない・・・両親さえも
夜は自分の笑顔とそれを見詰める憎しみの視線に苦しめられ叫んでも、暴れても誰も来てくれない。
そんな日々がしばらく続いた、ある日のこと僕に面会人が訪れた。前の会社で確執があった先輩だ。
「入院したって聞いて・・・今さらだけどゴメンな。俺の言葉が足りないせいで君を傷つけてしまった」
頭を下げて詫びる先輩に僕はゲッソリした顔で問いかけた。
「僕がいて迷惑でしたか・・・?」
「違うよ。俺の後輩指導が下手だったんだ。君が心配でついつい干渉した。迷惑だったのは俺だよ」
そう謝る先輩に僕は何も言えず泣き出すと先輩は優しく泣く僕の頭を撫でて言った。
「君は俺が初めて任された後輩だったんだ。だから、何があっても君だけの責任じゃない。俺も同罪なんだよ。色々あったけど俺は君の事が心配だし自分を大事にしてほしい・・・また、話そう」
そう微笑んで先輩は帰って行ったので僕が放心していると、ピンク髪の主治医が顔を出した。
「どうです、優しい人ですね。貴方のやるべきことは分かりますか?」
その言葉に僕はベッドからとびおりて帰るために病院の出口に向かっていた先輩に駆け寄った。
「先輩・・・色々とご迷惑かけて、不愉快な思いをさせてすみません!!」
先輩の手をにぎって叫ぶ僕に先輩は優しく笑うと言った。
「俺への謝罪は十分だ。今日を大切に生きて・・・君はもう大丈夫だよ」
それだけ言って手を振って去っていく先輩を見送っていた僕のそばに、いつの間にか主治医がおり笑顔で言った。
「明日、退院です!」
それから僕は銀河メンタルクリニックを退院して再就職活動をしてなんとか勤め先が決まった。
通院と薬も必要なくなり実家を出て独り暮らしだが先輩とは度々、家飲みしたりで会社にいたときより仲良くしている。
今日は先輩の自宅で飲む約束なので僕は仕事を早く終わらして先輩のマンションのチャイムを押してドアをあける時に冗談で行ってみた。
「ただいま・・・」
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