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愛妾と愛人
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ユーリとリンがラン・ヤスミカの領地で幸せな新婚生活を送っていた頃、宮廷ではこんな噂が飛び交っていた。
「ご存知?シルバー家の騒ぎ?」
「ご存知もなにも宮廷中、その噂で持ちきりですわよ」
シルバー家当主が突如嫡男ミシェルを廃嫡して次男のエドガーを次期当主としたのだ。
ミシェルの美少年好きは宮廷では有名なので、貴族の子弟のなかにはシルバー家と懇意になるために愛人になろうとする者もいた。
しかし、ミシェルは自分に言い寄る美少年貴族に手を出すこともあるが、愛人にはしない。
世の中には恐ろしい親もいるもので弱小貴族が息子を愛人にしてくれと売り込んできたこともあった。
あまりに魂胆が浅ましいので流石のミシェルも拒否したが、弱小貴族もえげつない。
「では、この子は男娼として娼館に売らざるおえません。三男ですし家督を継ぐ望みもない。穀潰しですから」
これを言われると元来博愛主義なミシェルはみすみす可哀想な弱小貴族の三男を見捨てられない。
息子を売ろうとする貴族をなだめて、表向きは従者として雇うことにするのだ。
そもそも大貴族の嫡男であったミシェルならば宮廷で見目麗しい貴公子をたくさん見ている。
宮廷の美少年貴族たちは優雅で洗練されているが、大切に育てられた花のようで美しいけど面白味に欠ける。
つまり、モモのように美しさの裏に毒気や妖艶さがなく、華やかで愛らしく美しいが中身が空っぽだと言いたいのだ。
ミシェルが愛人とした美少年の多くがモモを含めて貴族など上流階級でなくて孤児など困窮していたり、親に売られた者である。
犯罪歴が沢山あるのはモモだけだが、売春まがいなことをしていた少年も少なくない。
だから、貴族の少年がまんまとシルバー家に引き取られても特別待遇はないのだ。
ミシェルの愛人の筆頭はシルバー家当主の覚えも目出度いモモだからだ。
他の愛人になった少年たちはモモの管理下におかれ、シルバー家の別邸で生活することになる。
これは、貧しくとも貴族階級の少年だとプライド的に耐えられない。
貴族でもない貧民窟育ちの孤児にあれこれ指示されるのだから。
自分がモモよりミシェルの寵愛を受ければ勝てると思う少年もいるが、それは事実上不可能だ。
なぜなら、シルバー家本家が正式にミシェルの愛妾として認めている存在はモモで彼の生活費などはミシェルだけでなくシルバー家当主が出している。
他の美少年愛人たちはミシェルのポケットマネーで暮らしている所詮は囲われ者。
自分は特権階級だというプライドがある貴族の子弟には屈辱的な立場だ。
そんな時、増えてきた美少年愛人の住まいを増築するため別邸を改築することになった。
まだまだ美少年愛人を増やす気満々なミシェルにモモは「これ以上、別邸に愛人増やすと流石に本妻がキレる」と苦言を呈したのだ。
「本妻はまだ子供がいない。ミシェル。別邸で暮らすのを控えて本邸の妻のとこに行けよ。蔑ろにすると後が怖い」
ミシェルの本妻だった女性は王室とも縁が深いシルバー家同様の超名門出身である。
政略結婚で嫁いできたが、シルバー家に馴染めず、どこか孤立している印象だった。
優しいミシェルは美少年好きでも女を邪険にする性格ではないが、正直名門出身であっても本妻の言動や振る舞いにあまり好感が持てない。
まず、気位が異常に高くてミシェル最愛の異母弟リンの存在を軽んじる。
庶子であり、亡き母親が平民であるリンを明らかに格下と見ているのだ。
これにはリンを実子同様に育ててきたシルバー家当主夫人も気持ち的に愉快ではない。
リンが策略でユーリがいるラン・ヤスミカ家に嫁いだときもミシェルの本妻は見送りにも来なかった。
ここまででミシェルの本妻への愛情のライフはゼロに等しい。
そうなると益々、モモに愛情が傾き、別邸の美少年らを可愛がる。
んで、本妻は益々キレるの地獄ループであった。
だが、別邸の美少年のなかでモモを殺したい者がいた。
彼は前述の弱小貴族の三男でプライド高く、同じミシェルの愛人である貧民の少年をバカにしていた。
そして、貧民窟の孤児のくせにミシェルが最も愛する愛妾であるモモの存在が目障りで殺したい。
たいして頭がよくない弱小貴族の三男は小細工でミシェルの本妻に取り入ったのである。
「モモを傭兵使って殺しましょう。そうすればミシェル様の愛情は奥方様だけのものです」
嫉妬深くて高慢だがやはりあんまり賢くない本妻はその提案をのんだ。
その結果、傭兵を別邸を差し向けて、モモを殺そうとしてモモ以外の愛人美少年を皆殺しにしたのだ。
モモはバカ貴族三男と本妻の策略など知っていたのでミシェルが他の愛人に夢中で嫉妬したというていで別邸を去っていた。
シルバー家当主に対してこれだけはお願いしていた。
「ステフ、マックス、ヒナリザ。この三名の命は保証してください」
この要求にシルバー家当主が頷いたのでモモは安心してリンの監視に向かったのだ。
本妻の命令で傭兵がシルバー家別邸を襲撃したとき、残されたのは、あの弱小貴族の三男のみであった。
他の愛人美少年は全員保護され、シルバー家の領地で暮らしている。
モモを殺しそうと陰謀を働いた愚か者だけ傭兵の刃で惨殺された。
これも、賢いモモが傭兵を買収して決行の日時を操作していた。
そんなわけで、モモの機転で命を救われた、ステフ、マックス、ヒナリザはシルバー家の所有する領地にいたが、3人でこんな相談をしていた。
「ミシェル様とモモ様はラン・なんとかって土地にいる!ここでただ飯食うより、お二人のそばに行こうぜ!」
「うん。でも僕らが行っても大丈夫かな?追い返されたらどうしよう?」
「ミシェル様はそんなお方じゃないよ。ずっとシルバー家のお世話になるのも悪いし。ラン・ヤスミカ家に行ってみよう」
こんな経緯でミシェルの美少年愛人が三名、ユーリの住むラン・ヤスミカ領に旅立ったのである。
リンはそんなことも想定してラン・ヤスミカ家の別邸に余分に居室を用意していた。
ちなみにステフは12歳。
マックスは13歳。
ヒナリザはモモと同い年の14歳である。
彼らは迷い迷いながらラン・ヤスミカ領にたどり着いた。
ラン・ヤスミカ家はリンの異母兄ミシェルの愛人が集結して益々賑やかになるが、これは少し先の話だ。
end
「ご存知?シルバー家の騒ぎ?」
「ご存知もなにも宮廷中、その噂で持ちきりですわよ」
シルバー家当主が突如嫡男ミシェルを廃嫡して次男のエドガーを次期当主としたのだ。
ミシェルの美少年好きは宮廷では有名なので、貴族の子弟のなかにはシルバー家と懇意になるために愛人になろうとする者もいた。
しかし、ミシェルは自分に言い寄る美少年貴族に手を出すこともあるが、愛人にはしない。
世の中には恐ろしい親もいるもので弱小貴族が息子を愛人にしてくれと売り込んできたこともあった。
あまりに魂胆が浅ましいので流石のミシェルも拒否したが、弱小貴族もえげつない。
「では、この子は男娼として娼館に売らざるおえません。三男ですし家督を継ぐ望みもない。穀潰しですから」
これを言われると元来博愛主義なミシェルはみすみす可哀想な弱小貴族の三男を見捨てられない。
息子を売ろうとする貴族をなだめて、表向きは従者として雇うことにするのだ。
そもそも大貴族の嫡男であったミシェルならば宮廷で見目麗しい貴公子をたくさん見ている。
宮廷の美少年貴族たちは優雅で洗練されているが、大切に育てられた花のようで美しいけど面白味に欠ける。
つまり、モモのように美しさの裏に毒気や妖艶さがなく、華やかで愛らしく美しいが中身が空っぽだと言いたいのだ。
ミシェルが愛人とした美少年の多くがモモを含めて貴族など上流階級でなくて孤児など困窮していたり、親に売られた者である。
犯罪歴が沢山あるのはモモだけだが、売春まがいなことをしていた少年も少なくない。
だから、貴族の少年がまんまとシルバー家に引き取られても特別待遇はないのだ。
ミシェルの愛人の筆頭はシルバー家当主の覚えも目出度いモモだからだ。
他の愛人になった少年たちはモモの管理下におかれ、シルバー家の別邸で生活することになる。
これは、貧しくとも貴族階級の少年だとプライド的に耐えられない。
貴族でもない貧民窟育ちの孤児にあれこれ指示されるのだから。
自分がモモよりミシェルの寵愛を受ければ勝てると思う少年もいるが、それは事実上不可能だ。
なぜなら、シルバー家本家が正式にミシェルの愛妾として認めている存在はモモで彼の生活費などはミシェルだけでなくシルバー家当主が出している。
他の美少年愛人たちはミシェルのポケットマネーで暮らしている所詮は囲われ者。
自分は特権階級だというプライドがある貴族の子弟には屈辱的な立場だ。
そんな時、増えてきた美少年愛人の住まいを増築するため別邸を改築することになった。
まだまだ美少年愛人を増やす気満々なミシェルにモモは「これ以上、別邸に愛人増やすと流石に本妻がキレる」と苦言を呈したのだ。
「本妻はまだ子供がいない。ミシェル。別邸で暮らすのを控えて本邸の妻のとこに行けよ。蔑ろにすると後が怖い」
ミシェルの本妻だった女性は王室とも縁が深いシルバー家同様の超名門出身である。
政略結婚で嫁いできたが、シルバー家に馴染めず、どこか孤立している印象だった。
優しいミシェルは美少年好きでも女を邪険にする性格ではないが、正直名門出身であっても本妻の言動や振る舞いにあまり好感が持てない。
まず、気位が異常に高くてミシェル最愛の異母弟リンの存在を軽んじる。
庶子であり、亡き母親が平民であるリンを明らかに格下と見ているのだ。
これにはリンを実子同様に育ててきたシルバー家当主夫人も気持ち的に愉快ではない。
リンが策略でユーリがいるラン・ヤスミカ家に嫁いだときもミシェルの本妻は見送りにも来なかった。
ここまででミシェルの本妻への愛情のライフはゼロに等しい。
そうなると益々、モモに愛情が傾き、別邸の美少年らを可愛がる。
んで、本妻は益々キレるの地獄ループであった。
だが、別邸の美少年のなかでモモを殺したい者がいた。
彼は前述の弱小貴族の三男でプライド高く、同じミシェルの愛人である貧民の少年をバカにしていた。
そして、貧民窟の孤児のくせにミシェルが最も愛する愛妾であるモモの存在が目障りで殺したい。
たいして頭がよくない弱小貴族の三男は小細工でミシェルの本妻に取り入ったのである。
「モモを傭兵使って殺しましょう。そうすればミシェル様の愛情は奥方様だけのものです」
嫉妬深くて高慢だがやはりあんまり賢くない本妻はその提案をのんだ。
その結果、傭兵を別邸を差し向けて、モモを殺そうとしてモモ以外の愛人美少年を皆殺しにしたのだ。
モモはバカ貴族三男と本妻の策略など知っていたのでミシェルが他の愛人に夢中で嫉妬したというていで別邸を去っていた。
シルバー家当主に対してこれだけはお願いしていた。
「ステフ、マックス、ヒナリザ。この三名の命は保証してください」
この要求にシルバー家当主が頷いたのでモモは安心してリンの監視に向かったのだ。
本妻の命令で傭兵がシルバー家別邸を襲撃したとき、残されたのは、あの弱小貴族の三男のみであった。
他の愛人美少年は全員保護され、シルバー家の領地で暮らしている。
モモを殺しそうと陰謀を働いた愚か者だけ傭兵の刃で惨殺された。
これも、賢いモモが傭兵を買収して決行の日時を操作していた。
そんなわけで、モモの機転で命を救われた、ステフ、マックス、ヒナリザはシルバー家の所有する領地にいたが、3人でこんな相談をしていた。
「ミシェル様とモモ様はラン・なんとかって土地にいる!ここでただ飯食うより、お二人のそばに行こうぜ!」
「うん。でも僕らが行っても大丈夫かな?追い返されたらどうしよう?」
「ミシェル様はそんなお方じゃないよ。ずっとシルバー家のお世話になるのも悪いし。ラン・ヤスミカ家に行ってみよう」
こんな経緯でミシェルの美少年愛人が三名、ユーリの住むラン・ヤスミカ領に旅立ったのである。
リンはそんなことも想定してラン・ヤスミカ家の別邸に余分に居室を用意していた。
ちなみにステフは12歳。
マックスは13歳。
ヒナリザはモモと同い年の14歳である。
彼らは迷い迷いながらラン・ヤスミカ領にたどり着いた。
ラン・ヤスミカ家はリンの異母兄ミシェルの愛人が集結して益々賑やかになるが、これは少し先の話だ。
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