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宮廷の堕天使
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ラン・ヤスミカ領でエドガーがシオンをストーキングして大変だったころ、都のシルバー家本邸ではモモの宮廷生活が始まっていた。
「モモ。宮廷には美しい少年を狙う変態貴族が多いから用心するんだよ」
「ミシェルに言われても説得力ねーな!」
モモは宮廷ではリリィ・ケリー・シルバーという偽名を使い、ミシェルの補佐やシルバー家当主クロードから与えられる任務を遂行する。
補佐なんてしなくてもミシェルは宮廷の貴族たちに人気があり、国王陛下からの信任も厚いので問題ない。
当主クロードがあえてモモを宮廷に紛れ込ませたのは王位継承問題を見据えてだ。
現国王陛下と王妃の間にはダイアナという王女がいる。
聡明で才気活発な16歳の美少女で国民人気も高く次の王座は確実とされている。
このダイアナ王女がゆくゆくは女王陛下に即位するのが順当なのだが、第2王位継承者をめぐり見えないところで陰謀が仕組まれている。
国王夫妻の子供はダイアナ王女のみで国が女系にも王位継承権を与えているので何も問題ないように思えるが、やはり男系の王位にこだわる連中もいるのだ。
そんな男系王位継承を唱える貴族が推しているのがミモザという王子である。
ミモザ王子は国王夫妻の甥っ子にあたり、国王の弟の息子だ。
赤ちゃんの頃に両親を亡くした関係で国王夫妻が引き取り、後見として育ててきた。
ダイアナ王女の従弟で14歳の少年である。
彼を王座に担ぎあげようという動きをクロードがいちはやく察知してモモに命じた。
「ミモザ王子に接触して動向を探れ。王子にその気はなくても利用する者が必ずいる」
ミモザ王子は病弱で社交的な性格とはいえず、王宮の西にある離宮で引きこもりをしている。
限られた従者や護衛、家庭教師しか離宮には入れない。
王子は非常に用心深いらしいのだ。
「ミモザ王子は養父母である国王夫妻や従姉のダイアナ王女とも滅多に会わない。そんな国を代表するような引きこもりに接触か……」
調べた限りではミモザ王子はシルバー家の人間を嫌っている。
まったく事実無根だが、両親が死んだ原因はシルバー家による暗殺と誤解しているらしい。
「王弟夫妻なんて消してもシルバー家になんの価値もない。そんな噂を真に受けてるのか?」
誰に吹き込まれたか知らないが聡明な少年とは言えないとモモは推測していた。
しかし、シルバー家の威光が通用しないとなると別の手段が必要になる。
「どうにかして離宮に入らないと情報は掴めないか……」
モモは少し思案するとシルバー家の者であることを利用して、更に逆手にとる作戦を計画した。
「ミシェル!少し芝居に協力しろ!」
「ミモザ王子のことか?あのお方は西の離宮から出てこない。少し離宮の庭園を散歩されるくらいだ」
「その散歩中、王子は宮廷貴族の仲間入りしたばかりの物知らずなガキに遭遇する!そんな流れを仕組むから根回ししろ!」
「モモ……ミモザ王子はシルバー家の者を毛嫌いしている。怒らせたら危険だ」
シルバー家の庶子という身分を与えられているモモがどんなに演技をしてもミモザ王子は気を許さないだろうとミシェルは心配だった。
下手すれば庶子ではないという事実が露見してモモは殺される可能性もある。
ミモザ王子は疑り深くて、非常にネガティブだと宮廷ではもっぱらの噂だ。
国王夫妻もダイアナ王女も陰気なミモザ王子を少々もて余してる節が見られる。
そんな、陰気でネガティブで引きこもりな王子とモモを接触させるのは危ないのではないか?
しかし、父クロードから「モモの任務のために便宜をはかれ」とミシェルは厳命されている。
ミシェルは心配で仕方ないが宮廷貴族からミモザ王子が散歩する時間帯やルートを何気なく聞き出した。
ミモザ王子は午後のお茶の時間の前に離宮の近くの庭園を散歩する。
お供は護衛が2名と従者が1名。
そこで少し日光浴をするとさっさと離宮に戻ってしまう。
「モモ……危なければ大声で叫べ!王子を殴ったり蹴ったりしてもいいから逃げろ!」
「んな!暴力を王子様にしねーよ!大丈夫!王子は俺を殺さないし危害も加えない!」
モモの自信に溢れた様子にミシェルは苦笑いしたが念のために離宮の近くで待機しようと決意した。
西の離宮を出たミモザ王子は限られた護衛と従者を連れて散歩していた。
宮廷では国王の親戚筋であるシルバー家が幅をきかせて非常にうっとうしい。
「あんな腹黒い連中を重用するなんて国王陛下もおめでたい」
まあ、国が滅んでも自分には関係ない。
平和ボケした貴族と一緒に王室なんて滅べばいい。
「その様子を僕は離宮で見届けて死ぬのだから」
王族として生きることが嫌なのに他に選択肢がない。
できれば、自由な平民の子供に生まれて平穏に暮らしたかった。
ダイアナ王女の即位に反発する派閥がおだてて来るのもウザイ……なんで僕を放っておいてくれないんだ!
そんな鬱屈した気持ちで離宮近くを散歩していたミモザ王子の前に挙動不審な少年が現れた。
華奢な黒髪の美しい少年で身なりからして貴族だ。
「その者!止まられよ!ここは王子の離宮の庭園ぞ!?」
護衛と従者が怒鳴ると美しい少年はワッと泣き出した。
スミレ色の大きな瞳からポロポロ涙をこぼしている。
顔が迫真で嘘泣きには見えない。
護衛が少年をつまみ出そうとするのでミモザ王子は制した。
「待て!泣いている子に乱暴はやめよ。君は何者だ?泣いてないで答えよ。僕はミモザという。この離宮の主だ」
「王子!こんなどこの馬の骨ともわからぬ童に声をかけてはなりませぬ!」
「構わない。宮廷に出入りしている貴族か?親の名は?」
ミモザ王子の問いかけにモモは泣きながらわずかに口角をあげると告げた。
「シルバー……。養父の名です。本当の親は知りませぬ」
「君は……シルバーの人間か!?」
一瞬で警戒体制になるミモザ王子と護衛と従者を相手にモモは再び泣きながら訴えた。
「孤児なんです!シルバー家に引き取られて養父の長男の玩具にされて!酷使されて!」
「ああ!シルバー家の嫡男ミシェルか!?あれは美しい少年が三度の食事より大好物と評判だ!人身売買されてきたのか?」
「はい!わざわざ貧民窟まで俺をさらいに来て!金払うから抱かせろって!そして、無理やり関係を結ばされて義弟にされました!」
マジな様子でモモが泣くので護衛や従者は「マジかよ?変態じゃん?ミシェル様」と囁きあっている。
ミシェルの名誉を著しく貶めるモモの半分嘘の告白に護衛や従者は愕然としてモモに同情する空気が流れ始めた。
だが、ミモザ王子は号泣しているモモに近寄りニヤリとするとソッと囁いた。
「バレバレな嘘はつくな。ミシェル・アンリ・シルバーはそこまで非道ではない。本来の目的を教えろ」
ミモザ王子の言葉を待っていたようにモモは泣き止んで笑顔で言ったのだ。
「芝居はここまで!ミモザ王子!俺はモモ!シルバー家の庶子にされてるが本来は孤児!宮廷での名はリリィ・ケリー・シルバー!」
「つまり間者ということか?なにを探りたい?」
フッと笑うミモザ王子にモモは率直に告げた。
「アンタに王位を狙う野心があるかだ!俺はアンタに王の器があると感じた。でも、シルバー家はダイアナ王女を推してる。正直、王子を担ぐ奴らよりミモザ王子……アンタ自身の思惑を知りたい。それだけだ!」
「モモとかいったか?そんな茶番にわざわざ利用されて気の毒だな。僕は王位も王家も興味がない。ダイアナ王女が継ぐなら反対しない。それが本音だ」
ミモザ王子がそれだけ言って立ち去ろうとするとモモは遠慮のない口調で訊いてきた。
「なら!俺をアンタの話し相手なり側付きにしろ!本当に野心がないのか否かを判断する。俺はアンタともっと話してみたい!どうだ?」
陰気な引きこもり王子だと噂されるミモザが予想外に聡明で頭が切れるという事実にモモは立場を考えず興味を抱いた。
このミモザという少年は王座に担ぎ上げられそうになるだけあり、王族という身分をなしにしても相当に賢いとモモは確信した。
不敵に笑うモモの姿にミモザ王子は息を吐くと従者に命じた。
「その者を僕の側付きとする。国王陛下とシルバー家に話をとおせ。モモ。側付きになると宮廷ではなく離宮に専属となるが?ミシェルはそれを許可しておるのか?」
「ミシェルが許可せずともシルバー家が許します。それが目的ですから!」
「なるほど……君は不要なら切り捨てられる立場か。そんな生き方をむなしく思わないのか?」
憐れむような……どこか共感するようなミモザ王子が投げ掛けた問いにモモは即答した。
「思わない!俺には俺の守りたい存在がいる。そいつが俺を不要と切るならそれでいい!」
「そうか。ならば僕はなにも言うまい。モモ……シルバー家より許可がおりたら離宮へ出仕せよ」
「は!承知しました!王子!」
かくして、モモはまんまとミモザ王子の側付きとなり離宮に潜り込んだ。
ミシェルは反対したが当主クロードが認めたのでモモの離宮への出仕が決定する。
「モモ!私も離宮に行く!お前だけでは危険だ!」
「バーカ!ミシェルまで離宮に行ったら宮廷の情報がつかめない!分担制だ!わかったな!?」
ミシェルとしては警戒というより27歳の自分より14歳で王子であるミモザにモモが浮気するのではと気をもんでいた。
「やっぱ心配だから3日に1回は私が離宮に訪問する!」
「勝手にしろよ!ミシェルもミモザ王子派だって勘違いされるぞ!?」
「構わない!王位後継やシルバー家がぶっ壊れるよりモモの浮気の方が心配だ!」
「お前!最悪はリン様がいるラン・ヤスミカ家に再び世話になる気満々だな!?」
こうして、モモの出仕とミシェルが定期的に西の離宮に訪問することが決定事項となる。
そのことを知ったミモザ王子は愉快で笑った。
「話し相手が欲しかった!くだらない連中よりミシェルとモモが来るならいくぶんマシだな!」
ミモザ王子はシルバー家当主クロードは嫌いだがミシェルやエドガーなどシルバー家の子息は決して嫌いではなく立場上、嫌悪してると匂わせていただけであった。
end
「モモ。宮廷には美しい少年を狙う変態貴族が多いから用心するんだよ」
「ミシェルに言われても説得力ねーな!」
モモは宮廷ではリリィ・ケリー・シルバーという偽名を使い、ミシェルの補佐やシルバー家当主クロードから与えられる任務を遂行する。
補佐なんてしなくてもミシェルは宮廷の貴族たちに人気があり、国王陛下からの信任も厚いので問題ない。
当主クロードがあえてモモを宮廷に紛れ込ませたのは王位継承問題を見据えてだ。
現国王陛下と王妃の間にはダイアナという王女がいる。
聡明で才気活発な16歳の美少女で国民人気も高く次の王座は確実とされている。
このダイアナ王女がゆくゆくは女王陛下に即位するのが順当なのだが、第2王位継承者をめぐり見えないところで陰謀が仕組まれている。
国王夫妻の子供はダイアナ王女のみで国が女系にも王位継承権を与えているので何も問題ないように思えるが、やはり男系の王位にこだわる連中もいるのだ。
そんな男系王位継承を唱える貴族が推しているのがミモザという王子である。
ミモザ王子は国王夫妻の甥っ子にあたり、国王の弟の息子だ。
赤ちゃんの頃に両親を亡くした関係で国王夫妻が引き取り、後見として育ててきた。
ダイアナ王女の従弟で14歳の少年である。
彼を王座に担ぎあげようという動きをクロードがいちはやく察知してモモに命じた。
「ミモザ王子に接触して動向を探れ。王子にその気はなくても利用する者が必ずいる」
ミモザ王子は病弱で社交的な性格とはいえず、王宮の西にある離宮で引きこもりをしている。
限られた従者や護衛、家庭教師しか離宮には入れない。
王子は非常に用心深いらしいのだ。
「ミモザ王子は養父母である国王夫妻や従姉のダイアナ王女とも滅多に会わない。そんな国を代表するような引きこもりに接触か……」
調べた限りではミモザ王子はシルバー家の人間を嫌っている。
まったく事実無根だが、両親が死んだ原因はシルバー家による暗殺と誤解しているらしい。
「王弟夫妻なんて消してもシルバー家になんの価値もない。そんな噂を真に受けてるのか?」
誰に吹き込まれたか知らないが聡明な少年とは言えないとモモは推測していた。
しかし、シルバー家の威光が通用しないとなると別の手段が必要になる。
「どうにかして離宮に入らないと情報は掴めないか……」
モモは少し思案するとシルバー家の者であることを利用して、更に逆手にとる作戦を計画した。
「ミシェル!少し芝居に協力しろ!」
「ミモザ王子のことか?あのお方は西の離宮から出てこない。少し離宮の庭園を散歩されるくらいだ」
「その散歩中、王子は宮廷貴族の仲間入りしたばかりの物知らずなガキに遭遇する!そんな流れを仕組むから根回ししろ!」
「モモ……ミモザ王子はシルバー家の者を毛嫌いしている。怒らせたら危険だ」
シルバー家の庶子という身分を与えられているモモがどんなに演技をしてもミモザ王子は気を許さないだろうとミシェルは心配だった。
下手すれば庶子ではないという事実が露見してモモは殺される可能性もある。
ミモザ王子は疑り深くて、非常にネガティブだと宮廷ではもっぱらの噂だ。
国王夫妻もダイアナ王女も陰気なミモザ王子を少々もて余してる節が見られる。
そんな、陰気でネガティブで引きこもりな王子とモモを接触させるのは危ないのではないか?
しかし、父クロードから「モモの任務のために便宜をはかれ」とミシェルは厳命されている。
ミシェルは心配で仕方ないが宮廷貴族からミモザ王子が散歩する時間帯やルートを何気なく聞き出した。
ミモザ王子は午後のお茶の時間の前に離宮の近くの庭園を散歩する。
お供は護衛が2名と従者が1名。
そこで少し日光浴をするとさっさと離宮に戻ってしまう。
「モモ……危なければ大声で叫べ!王子を殴ったり蹴ったりしてもいいから逃げろ!」
「んな!暴力を王子様にしねーよ!大丈夫!王子は俺を殺さないし危害も加えない!」
モモの自信に溢れた様子にミシェルは苦笑いしたが念のために離宮の近くで待機しようと決意した。
西の離宮を出たミモザ王子は限られた護衛と従者を連れて散歩していた。
宮廷では国王の親戚筋であるシルバー家が幅をきかせて非常にうっとうしい。
「あんな腹黒い連中を重用するなんて国王陛下もおめでたい」
まあ、国が滅んでも自分には関係ない。
平和ボケした貴族と一緒に王室なんて滅べばいい。
「その様子を僕は離宮で見届けて死ぬのだから」
王族として生きることが嫌なのに他に選択肢がない。
できれば、自由な平民の子供に生まれて平穏に暮らしたかった。
ダイアナ王女の即位に反発する派閥がおだてて来るのもウザイ……なんで僕を放っておいてくれないんだ!
そんな鬱屈した気持ちで離宮近くを散歩していたミモザ王子の前に挙動不審な少年が現れた。
華奢な黒髪の美しい少年で身なりからして貴族だ。
「その者!止まられよ!ここは王子の離宮の庭園ぞ!?」
護衛と従者が怒鳴ると美しい少年はワッと泣き出した。
スミレ色の大きな瞳からポロポロ涙をこぼしている。
顔が迫真で嘘泣きには見えない。
護衛が少年をつまみ出そうとするのでミモザ王子は制した。
「待て!泣いている子に乱暴はやめよ。君は何者だ?泣いてないで答えよ。僕はミモザという。この離宮の主だ」
「王子!こんなどこの馬の骨ともわからぬ童に声をかけてはなりませぬ!」
「構わない。宮廷に出入りしている貴族か?親の名は?」
ミモザ王子の問いかけにモモは泣きながらわずかに口角をあげると告げた。
「シルバー……。養父の名です。本当の親は知りませぬ」
「君は……シルバーの人間か!?」
一瞬で警戒体制になるミモザ王子と護衛と従者を相手にモモは再び泣きながら訴えた。
「孤児なんです!シルバー家に引き取られて養父の長男の玩具にされて!酷使されて!」
「ああ!シルバー家の嫡男ミシェルか!?あれは美しい少年が三度の食事より大好物と評判だ!人身売買されてきたのか?」
「はい!わざわざ貧民窟まで俺をさらいに来て!金払うから抱かせろって!そして、無理やり関係を結ばされて義弟にされました!」
マジな様子でモモが泣くので護衛や従者は「マジかよ?変態じゃん?ミシェル様」と囁きあっている。
ミシェルの名誉を著しく貶めるモモの半分嘘の告白に護衛や従者は愕然としてモモに同情する空気が流れ始めた。
だが、ミモザ王子は号泣しているモモに近寄りニヤリとするとソッと囁いた。
「バレバレな嘘はつくな。ミシェル・アンリ・シルバーはそこまで非道ではない。本来の目的を教えろ」
ミモザ王子の言葉を待っていたようにモモは泣き止んで笑顔で言ったのだ。
「芝居はここまで!ミモザ王子!俺はモモ!シルバー家の庶子にされてるが本来は孤児!宮廷での名はリリィ・ケリー・シルバー!」
「つまり間者ということか?なにを探りたい?」
フッと笑うミモザ王子にモモは率直に告げた。
「アンタに王位を狙う野心があるかだ!俺はアンタに王の器があると感じた。でも、シルバー家はダイアナ王女を推してる。正直、王子を担ぐ奴らよりミモザ王子……アンタ自身の思惑を知りたい。それだけだ!」
「モモとかいったか?そんな茶番にわざわざ利用されて気の毒だな。僕は王位も王家も興味がない。ダイアナ王女が継ぐなら反対しない。それが本音だ」
ミモザ王子がそれだけ言って立ち去ろうとするとモモは遠慮のない口調で訊いてきた。
「なら!俺をアンタの話し相手なり側付きにしろ!本当に野心がないのか否かを判断する。俺はアンタともっと話してみたい!どうだ?」
陰気な引きこもり王子だと噂されるミモザが予想外に聡明で頭が切れるという事実にモモは立場を考えず興味を抱いた。
このミモザという少年は王座に担ぎ上げられそうになるだけあり、王族という身分をなしにしても相当に賢いとモモは確信した。
不敵に笑うモモの姿にミモザ王子は息を吐くと従者に命じた。
「その者を僕の側付きとする。国王陛下とシルバー家に話をとおせ。モモ。側付きになると宮廷ではなく離宮に専属となるが?ミシェルはそれを許可しておるのか?」
「ミシェルが許可せずともシルバー家が許します。それが目的ですから!」
「なるほど……君は不要なら切り捨てられる立場か。そんな生き方をむなしく思わないのか?」
憐れむような……どこか共感するようなミモザ王子が投げ掛けた問いにモモは即答した。
「思わない!俺には俺の守りたい存在がいる。そいつが俺を不要と切るならそれでいい!」
「そうか。ならば僕はなにも言うまい。モモ……シルバー家より許可がおりたら離宮へ出仕せよ」
「は!承知しました!王子!」
かくして、モモはまんまとミモザ王子の側付きとなり離宮に潜り込んだ。
ミシェルは反対したが当主クロードが認めたのでモモの離宮への出仕が決定する。
「モモ!私も離宮に行く!お前だけでは危険だ!」
「バーカ!ミシェルまで離宮に行ったら宮廷の情報がつかめない!分担制だ!わかったな!?」
ミシェルとしては警戒というより27歳の自分より14歳で王子であるミモザにモモが浮気するのではと気をもんでいた。
「やっぱ心配だから3日に1回は私が離宮に訪問する!」
「勝手にしろよ!ミシェルもミモザ王子派だって勘違いされるぞ!?」
「構わない!王位後継やシルバー家がぶっ壊れるよりモモの浮気の方が心配だ!」
「お前!最悪はリン様がいるラン・ヤスミカ家に再び世話になる気満々だな!?」
こうして、モモの出仕とミシェルが定期的に西の離宮に訪問することが決定事項となる。
そのことを知ったミモザ王子は愉快で笑った。
「話し相手が欲しかった!くだらない連中よりミシェルとモモが来るならいくぶんマシだな!」
ミモザ王子はシルバー家当主クロードは嫌いだがミシェルやエドガーなどシルバー家の子息は決して嫌いではなく立場上、嫌悪してると匂わせていただけであった。
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